映画『マルジェラが語る"マルタン・マルジェラ"』- 公の場に一切登場しない、撮影・対面インタビューにも応じない謎の天才デザイナー、マルタン・マルジェラにとって"自分らしさ"とは?

9月16日(木)15時0分 Rooftop


▲初めて東京に来た際に地下足袋から着想を得て生まれた、マルジェラのアイコンともいえる足袋シューズ。

 ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタントを経て自身のブランド「メゾン・マルタン・マルジェラ」を1987年に設立。約20年間トップデザイナーであり続け、2008年に突然ファッションの世界から姿を消した。対面インタビューはすべて断り、公の場で顔を明かすことのなかったマルタン・マルジェラ。彼が作る服もタグがついていなかったり、モデルがフェイスマスクや髪の毛で顔をすっぽり覆っていたショーがあったり、匿名性に独特なこだわりを持つ。この、現在も影響力ある謎多き人物に、ライナー・ホルツェマー監督がインタビューしたドキュメンタリー映画『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』。

「20世紀の破壊王」と呼ばれたマルタン・マルジェラ。古着を再利用したり、それどころかレジ袋まで服に仕立てたり。来日したときに東京で見た作業員の地下足袋からヒントを得た「タビブーツ」は象徴的。かと思えばゴージャスだったりクールだったりクラシカルだったり。20年間、変化を恐れず常識に馴染むことをせず、人々を解放していくモードを打ち出し、そして常に自分らしさを貫いてきた。
 自分らしさ? 自分の証しと言ってもいいタグを付けない服を作る彼にとって、自分らしさとは? 匿名性に独特なこだわりを持つ彼にとって、自分らしさとは?

 映画は同時代の関係者へのインタビューと、そしてもちろん、マルジェラ自身への貴重なインタビューからなる。マルジェラは生い立ちからファッションの世界へ入った経緯、そして自身の考えを静かに丁寧に語る。多くの服を生み出してきた手が滑らかに動く。インタビューで彼の顔は見えない。見えるのは滑らかに楽しげに動く手だけ。それで充分。それこそがマルジェラ。
 子どもの頃に見ていた祖母の洋裁、自分で作ったバービー人形の服。最初のショーは子どもたちが遊ぶ空き地で開催。近所の人も見に来ていた。その後、ショーは駐車場や倉庫でも行なわれた。街でスカウトした人にショーに出てもらったりもした。誰がモデルで誰が観客かわからないほど一緒になっているシーンなんか、もうワクワクしてくる。
 マルジェラはきっと街を愛し、そこに生きる人々を愛し、彼自身もそこに生き続けているんだと思う。街で生きる人々と同じ目線で服を作る。上から目線で作りたくないし、上から目線の人には着てほしくない。だからタグなんかいらない。マルジェラはそう考えていたんじゃないかって、私は勝手に思っている。彼の匿名性のこだわりは、特別な人なんかいない、みんなが特別なんだ、そんな気持ちからのような気がする。

 これまで作ってきたファッション、これまでのショーを見せつつ、ライナー・ホルツェマー監督は、マルジェラの誠実さと、ファッションの世界で生きる苦悩を探り出す。踏み込まない距離感が心を開き、その時間と空間が心地いい。ファッション業界から去った今のマルタン・マルジェラだが、不思議とポジティブな気持ちにさせてくれるドキュメンタリーだ。(text:遠藤妙子)
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▲マルジェラによるデザイン画と布見本
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▲マルジェラのアトリエ
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▲2009年春夏コレクション
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▲マルジェラ自身によるドローイング
sub04.jpg▲『Margiela / Galliera 1989-2009』展の準備中
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▲10番マルジェラ・メン。マルジェラはメンズラインを「コレクション」ではなく「ワードローブ」と呼んだ
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▲初めて自身で作った服。「既にマルジェラっぽい」とは本人の談

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▲四隅の白いステッチがマルジェラの目印

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▲デビューショーのランウェイ

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▲初期マルジェラのアクセサリー代表作の一つのコルクネックレス


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