人生の終わりに「後悔」と向き合う クミコが語る“高齢者の心揺さぶる”歌の力

9月17日(月)8時0分 オリコン

クミコ「最後だとわかっていたなら」を語る

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 きょう17日は敬老の日。「INORI〜祈り〜」などのヒット曲で知られる歌手・クミコ(63)は、自身も高齢の両親を介助しながら、10年以上にわたり老人ホームなど高齢者向け施設に出向いてのライブ活動を続けている。そして今、クミコが歌う楽曲「最後だとわかっていたなら」(3月7日発売)が、アニメーションでつづられたミュージックビデオ(MV)とともに各地の高齢者施設で大きな感動を呼んでいるという。歌の内容はというと、大切な人の死、そして人生の後悔をストレートな言葉(詞)で表現しており、いわゆる“ポジティブ”なメッセージソングとは程遠い。それでもこの歌が、高齢者たちの共感を得ているのはなぜか。クミコにライブの現場で感じた高齢者の胸の内や、音楽(歌)の力がもたらすものについて語ってもらった。

 歌詞は、アメリカ人女性のノーマ・コーネット・マレックが、1989年に10歳の息子を亡くした際につづった一篇の詩が原作(原題「Tomorrow Never Comes」)。2001年に起きたアメリカ同時多発テロ 9.11で亡くなった消防士の手帳に書かれていた詩として注目を浴び、テロの追悼集会でも朗読されたことで、“世界が涙する詩”として知られるようになった。

 クミコが歌う日本語の訳詞では「今日という日が最後だとわかっていたら」と、大切な誰かの死に接した人の思いが歌われ、「『ごめんね』『許してね』『ありがとう』そんな気持ちを 時を惜しまず伝えられたら きっと今日を後悔しなかっただろう」など、赤裸々な悔恨の言葉が並ぶ。MVも歌詞の内容と連動し、介護する側、される側双方の切ない心情がアニメーションでつづられる。

 老人ホームなど高齢者を前に歌い始めた頃についてクミコは「何をどう歌えばよいのか戸惑いがありました。語弊を承知で言うなら、『死にゆく人』を前にどうしていいか途方に暮れていた」と当時を振り返る。特に死や後悔と向き合わなければならないこの曲を歌うにあたっては、大きな抵抗があったという。

 そんな彼女にこの曲を「ぜひ歌ってほしい」と背中を押したのが、全国に高齢者向けマンションを展開するハーフ・センチュリー・モア社の名誉会長・三木得五郎氏だった。三木会長は「クミコさんはこのような死と向き合う歌を歌うことに抵抗があったらしいのですが、むしろ逆だと思いました」と主張し、クミコには「いい歌だから歌いなさい。誰にでも最後はある。今後、高齢者がますます増えていく社会に必要な曲だと思います。すごい曲を作りましたね」と声をかけたという。

 このメッセージを受けクミコは今、全国の施設で「最後だとわかっていたなら」を歌い続けている。特にライブ前に流すアニメーションMVの反響には驚くばかりだそうで、高齢者のみならず施設のスタッフまでもが涙することも多いそう。「おそらく、たくさんの『最後』を体験されてきた方々の、真実の涙なのでしょう。そして、時にはお客さまが、顔を覆うように泣かれることもあります」(クミコ)。三木会長も反響の大きさについて「人は最後には音楽であり、歌です」と、楽曲が持つ“伝える力”を現場での実感を込めて熱弁した。

 「切実な、もしかしたら目を背けたくなる」(クミコ)人の死や“負”の感情を直視することがなぜ感動を呼ぶのか。クミコは「想像できるのは、誰にとっても逃げることのできない『後悔』という感情を、これ(映像)を見ることで浄化できるのかもしれないということです」と察する。自身もこの曲を歌うことで「いつ来るかわからない、けれど必ずやって来る『最後』から、今現在を見る。だからこそ気持ちを優しく穏やかにできる」という。「人が生まれて死んでいく、その長い道のりを一生懸命辿るような気持ちで歌います」、この歌で高齢者と向き合う覚悟をそう表現した。

 「わが人生に悔いなし」そう噛み締めて全うできる一生は言うまでもなく貴いもの。しかし、実際は少なからぬ人が消えない後悔やら詫び言やらを年輪に刻みながら老いていく。そんな想いに目を背けず寄り添い、過去と対話する。そうした時間をくれる音楽も人生の終盤にとても大きな力となるのかもしれない。

■クミコ ライブ情報
『An Evening with クミコ 〜sings European Songs〜』
場所:Billboard Live TOKYO(ビルボードライブ東京)
日時:10月14日 午後4時半〜(開場:午後3時半)/午後7時半〜(開場:午後6時半)
http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11120&shop=1

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