脳死、そして決断の時迫る臓器提供。心臓のバトンリレーを描く『あさがくるまえに』

9月17日(日)14時0分 週刊女性PRIME

(c) Les Films Pelléas, Les Films du Bélier, Films Distribution / ReallyLikeFilms

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 夜から夜明けへ。その移ろいゆく夜と朝の狭間がとても美しく、青く、蒼い。その深い青の中で恋人と過ごす静寂の夜から映画が始まる。少年は、彼女が寝ているベッドを抜け出し、夜の町を自転車で疾走する。夜の闇に少年の力強い生命の光が眩しい。やがて少年の疾走に寄り添うようにスケートボードの少年、車の少年と仲間が夜に集う。3人の行き先は海。目的はサーフィン。命の源である海に抱かれるように波に包まれていく3人の少年たち。しかし海からの帰り道、新しい朝とともに交通事故に遭い、ひとりだけ「脳死」との判定を下される。

 その少年の名はシモン。病院からの知らせを受け駆けつける母マリアンヌ(エマニュエル・セニエ)と、いまは別に暮らす元夫ヴァンサン(クール・シェン)。外傷はほとんどなく外見は変わらないが死んでいる。心臓は機械で動かされているだけ。目を覚ます確率は皆無と説明されても納得できない。いちばんつらく気持ちの整理がつかないまま、「臓器提供」の説明がなされる。心臓の期限は長くない。両親は次の朝が来る前に決断せねばならない。

 所変わってパリに暮らす音楽家のクレール(アンヌ・ドルヴァル)は、自分の心臓の寿命が終わろうとしていること知っている。生きるためには心臓移植しかない。けれど若くない自分に延命の意味があるのか答えを見つけられないでいる。そんなある日、不意に「ドナーが見つかった」と知らせが来る──。

 シモンの心臓は両親の同意を得て移植コーディネーターのトマ(タハール・ラヒム)を経由し、パリで待機するクレールへ運ばれる。メインキャラクターのいない、リレーのようなスタイルで心臓のバトンが渡されてゆく。身体のすみずみに血が行き渡るように現象を詳細に紡いでゆく。

 ラスト、画面いっぱいに映る顔がすごい。人はこんな表情ができるのか。観客の心がぐぐっと繕われる瞬間がある。

文/大林千茱萸

〈作品情報〉

『あさがくるまえに』●監督:カテル・キレヴェレ/出演:タハール・ラヒム、エマニュエル・セニエほか/上映時間:1時間44分/フランス=ベルギー/配給:リアリーライクフィルムズ コピアポア・フィルム/PG12 ※2017年9月16日(土)よりヒューマントラスト渋谷ほかで全国順次公開中

週刊女性PRIME

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