矢野了平&日高大介の生態と「謎解き」驚異の進化 【令和テレビ談義】〜クイズ作家編〜<1>

9月18日(土)12時0分 マイナビニュース

●『プロフェッショナル』で話題「貴重な経験を…」
YouTube・サブスク動画配信サービスの台頭、視聴率指標の多様化、見逃し配信の定着、同時配信の開始、コロナ禍での制作体制——テレビを取り巻く環境が大きく変化する中、最前線にいる業界の“中の人”が語り合う連載【令和テレビ談義】。
第3弾は、数多くのクイズ番組を手がけ、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)でも話題となったクイズ作家の矢野了平氏と日高大介氏が登場。『今夜はナゾトレ』を手がけるモデレーターのフジテレビ・木月洋介氏を含めた3人で、「クイズ番組」についてとことん語り合うテレビ談義を、5回シリーズでお届けする。
第1回は、四六時中クイズに向き合う矢野氏&日高氏の生態、そして近年のヒットである「謎解き」の進化に迫っていく——。
○■チョコプラのコントになった2人
——矢野さんと日高さんは『プロフェッショナル』で、学生時代からクイズ番組の解答者として切磋琢磨してきた関係性が紹介されていましたが、木月さんとの出会いはどこだったのですか?
木月:矢野さんは2006年ですね。クイズじゃないんですけど入社3年目のときに社内コンペを通ったさまぁ〜ずさんMCの『タミゴエ』という番組があって。
矢野:「自分のことがちゃんと分かってるのか?」ということを問うようなトーク番組でしたよね。
木月:一度レギュラー化しかけたんだけど、なくなるという…。でも、そこからちょこちょこお会いする中で、『タモリのジャポニカロゴス』とか『全国一斉!日本人テスト』『クイズやさしいね』『今夜はナゾトレ』とお世話になってます。日高さんとは『日本人テスト』のときに初めてお会いして、その後なぜか『笑っていいとも!』に出てもらいました(笑)
日高:これが大きかったんですよ。あれは2011年3月11日で、家に帰って開放感に満ちあふれていたらああいうこと(東日本大震災)になったのもあって、印象的で忘れられないんです。
木月:「瞬間うんちく王がやってきた」という単発コーナーを作りまして、謎のプレッシャーを与えてしまいました(笑)
日高:お題を言われてそれに対して豆知識で返すというコーナーです。そのとき、ゲストで来てたV6の岡田准一さんと真木よう子さんに「バッジ」と言われて、「弁護士バッジは失くすとその回数が裏に刻まれる」って返しました。関根勤さんには「くるぶし」と言われて(笑)
矢野:そこから日高はクイズというより、「うんちくを言う人」という仕事が増えるんですよね(笑)
日高:まだ続いてますよ。いよいよ、うんちく歴11年になってしまいました(笑)
木月:このおふたりはクイズ作家というところにとどまらず、出役としての才もすばらしいんですよ。『久保みねヒャダ』にも出ていただきましたし。
日高:矢野は最近、急に露出が増えたなあという感じ?
矢野:タイミングだよね。周りがイジるようになってきたということじゃないですか?(笑)
木月:でも、あの『プロフェッショナル』は面白かったですね。いろいろと素敵でしたし。
日高:あれがきっかけで、またいろんな仕事が増えました。
矢野:『プロフェッショナル』という番組自体が完成されたフォーマットなので、そこで何もしなくてもカッコよくしていただけますから、ありがたい話で(笑)
木月:おふたりは『新しいカギ』でコント(※)にもさせていただきました(笑)。(放送作家の)樅野(太紀)さんがアイデアを出してくれて、僕は「意地でもやりたい!」と思って。
(※)「クイズ作家・ヤノとヒダカ」…チョコレートプラネットの松尾駿が矢野氏、長田庄平が日高氏をモチーフにしたクイズ作家に扮し、寿司屋でことあるごとに「問題です!」とクイズを出題し合い、周りを戸惑わせるコント。
日高:とても貴重な経験をさせていただきました(笑)
矢野:僕は裏番組(テレビ朝日『マツコ&有吉 かりそめ天国』)をやってるけど「裏被りじゃないよな!?」っていう不思議な体験をしました(笑)
日高:僕のマネってすごく難しいと思うんですけど、長田さんがボーダーにトートバッグで入ってきた瞬間、ちょっとゾクッとなりましたよ。いつもあの格好をしてるって誰が教えたんだ!って(笑)
木月:それは千葉(悠矢、『99人の壁』企画・演出)かもしれないですね。あのコントは千葉がディレクターをやっていたので。
矢野:本当に、この半年で貴重な経験をいっぱいさせてもらってます。もう流れに身を任せるだけです(笑)
●“テレビクイズ”の雰囲気が好きで意気投合
木月:この2人は関係性が面白いんですよ。『プロフェッショナル』で、学生時代からお知り合いで、切磋琢磨してきて今があるんだと知って。
矢野:最初に出会ったのは、高校3年生のときですね。大学に入ってからガッツリと付き合うようになって、それから関係性はずっと変わらないんです(笑)
日高:それぞれ違うクイズサークルに入ってたんですけど、“テレビクイズ”のあの雰囲気が好きということで意気投合したのが僕と矢野だったんですよ。
木月:そこから、どうやってテレビ業界に入ることになるんですか?
矢野:大学のクイズ研究会にいると、クイズ番組の問題を作るアルバイトがあるんですよ。『高校生クイズ』(日本テレビ)の問題とかやってて、その流れで「大学卒業したらおいで」って声をかけられて、そのまま作家になったのが僕です。そこで、「CAMEYO」という事務所に入りました。
木月:CAMEYOさんは、クイズ作家さんの事務所だったんですか?
矢野:構成作家事務所なんですけど、立ち上げのメンバーが『アメリカ横断ウルトラクイズ』とか『高校生クイズ』とか日テレの特番を作った人たちなので、毎年『高校生クイズ』の構成とクイズ制作を一手に引き受けていたんです。でも、クイズマニアで入ったのは、僕が初めてでしたね。
木月:「クイズ作家」というジャンルは、最近特に多く言われるようになった気がします。
日高:でも、我々より上の世代の先輩の後を受け継がせていただいてるという意識ですね。
矢野:一番最初は、今『脳ベルSHOW』(BSフジ)とか『Qさま!!』(テレビ朝日)をやってる道蔦岳史さんがいらっしゃって、もともとクイズプレーヤーとして活躍されていたんですが、『ギミア・ぶれいく』(TBS)の『史上最強のクイズ王決定戦』で作り手に回ったのが、クイズマニアが問題を作るようになったきっかけですね。それが平成元年。その後に、田中健一さんとか長戸勇人さんがプレイヤーから作問のプロになっていき、その次の世代が僕らです。
日高:矢野はCAMEYOに2001年に入るんですけど、そのとき「俺、この道をプロでやっていくことになったんだけど、日高はどうする?」と言われて、僕は「うーん、怖いからやめとく」って言ったんです(笑)。その頃は塾の先生と家庭教師のほか、CAMEYOの方から「『全員正解あたりまえクイズ』(TBS)の問題まとめて作ってくれない?」みたいな仕事も、アルバイトでちょこちょこやってたんですけど、2006年に「クイズを量産する人間として来てほしい」と言われて、正式に『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)から作家として入りました。だから、矢野とは同い年なんですけど、5年後輩なんです。
○■息抜きに「謎解き」「東大入試問題」
木月:僕、クイズ作家という仕事は、日本で一番幸せな職業だと思ってるんです。だって、大好きなことで飯が食えて、趣味もクイズなんですよ。『久保みねヒャダ』に出てもらったとき、楽屋裏で2人がずっとクイズを出し合って楽しんでるのを見て、衝撃を受けましたから(笑)
矢野:あの時はたしか『古畑任三郎』のカルトクイズを出し合ってましたね(笑)。日高と時間があると、「昔のクイズ番組でこんな珍解答があった」みたいなことをクイズにして出し合ったりとか、そんなマニア同士の遊びをやってます。
木月:あれを見て思いましたよ。趣味であり、日常の楽しみであり、そしてそれをやればやるほど仕事にもなるなんて、「何だこの幸せな職業は!」と。
矢野:僕も、パソコンに向かって仕事としてクイズを作っていて、「はぁ疲れた」と息抜きに謎解きをしていると、「俺は何をしてるんだ」って思います(笑)
日高:でも、クイズを作るってなると、やっぱりしんどい作業なんですよ。責任を持ってクイズを作らなきゃいけないとなったときに、趣味が1個減ったなって思いましたもん。
木月:日高さん、趣味多いですもんね。『M-1』の点数つけてたり、あと今、東大受験の勉強してますよね?
日高:何で知ってるんですか(笑)。受験するかどうかは別ですよ。矢野は仕事で疲れたときに謎解きやってると言ってましたけど、僕は微分積分の問題を解いてたりすると心が安らぐんです。
——大豆田とわ子じゃないですか(笑)
日高:たしかに(笑)。でも、東大の入試問題はとにかく良問なんですよ。木月さんはご出身だからお分かりになると思うんですけど、東大の問題って美しいじゃないですか。些末なところだけを取るんじゃなくて、ポイントとポイントを論理でつなげるようなクイズ、いや問題を出してくるので、眺めてるだけでも面白いんですよ。日本史とか世界史とか地理とか、暗記科目なのにちゃんと論理というか、本質が分かっているかどうかを試す問題文の要求になっていて、「図から読み取れることを●●という言葉を使って5行以内で記せ」とか、結構クイズに役立ったりするんですよね。
木月:こうやって趣味が仕事に再生産されるサイクルが、一番純粋に行われるのがクイズ作家という方々なんですよ。東大の問題は、知識だけじゃなくて思考力を問われるんですよね。謎解きとも似ています。その着想から始めたのが『今夜はナゾトレ』の「東大ナゾトレ」ですから。
日高:だから、息抜きとして矢野が謎解きをやっているのと、僕が東大の問題を解いているというのは、そんなにベクトルが違わないんじゃないかなと思ったりします。
●実は苦戦しがちな「ひらめきクイズ」
木月:最近、謎解きが流行っているからか、テレビ番組にも「ひらめきクイズ」が多くなってきましたけど、基本的には視聴率で苦戦しがちなジャンルですよね。
矢野:そうなんですよ。クイズ番組が好きな層は、どこか情報を吸収できたり、ためになったり勉強になるというのを求めているんですけど、「ひらめきクイズ」は得るものがないんですよね。
木月:やっぱり知識を得られるものが、視聴者の皆さんは好きなんだなあと思いますね。
矢野:『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ)とか『IQサプリ』(フジテレビ)は、子供がブームをけん引した部分があったので特例ですが、今の時代は「ひらめき」だけだと、なかなか難しいですね。
木月:『今夜はナゾトレ』は、ひらめきで解いた後に知識にたどり着くという形に変わってきましたもんね。
矢野:『雑学王』(テレビ朝日)もそうですよね。あれは、知識がなくても推理して解くという意味ではひらめき力だし、それで正解を聞くとちゃんとためになる。松丸(亮吾)くんもよく言ってますけど、そもそも「謎解き」ってシチュエーションやストーリーがあってナンボみたいなところがありますから、そこがないものを切り取ってくると、どこか限界があるなという気がしますね。だから『ナゾトレ』の「東大ナゾトレ」は、1時間のクイズ番組の中で、最後に優勝を決める大事なところで逆転できるというストーリーがあるから、成立してるんだと思います。
木月:矢野さん、本を出されたんですよね。
矢野:『美しいナゾトキ』っていう、謎解きの問題を芸術として楽しめないかっていう本です。難問を解くことを競うんじゃなくて、「こんな問題よく作ったなあ」とか「よくこの奇跡を見つけたなあ」みたいな美しすぎる作品だけを集めて、問題の完成度を楽しむという切り口ですね。
日高:“観賞用謎解き”、これは新しい(笑)。でも、この謎解きの進化はすごいですよね。
木月:圧倒的にSNSの進化が大きいみたいです。問題作りの際も、1つのLINEグループに問題案を出して皆で意見を出し合って、それがどんどんブラッシュアップされて作っていけるんですよ。昔はそういうのができなかったですからね。
矢野:謎解きクリエイターたちと仕事をすると、「こんなことできたらすごいよね」という夢みたいな発想力のすごさと、それを実現するための人材の多さに驚かされます。「彼と彼と彼が入れば大丈夫」みたいな、そこの流れがすごくきれいなんですよね。
木月:つながっていくことで今までなかった発想が生まれるし、意見のフィードバックも速いし、リファレンス(参照)も多くて「過去にこれがあった」という情報も全部出るから、やっぱり昔と違いますよね。
○■謎解きクリエイター・松丸亮吾の革命
木月:そんな中で、松丸くんは、“登場感”がありましたよね。
矢野:1つ革命を起こしましたよね。
木月:覚えてますか? 湾岸スタジオで会議した日。もともと松丸くんたちに『ナゾトレ』でクイズの監修をやってもらおうと思ったんですけど、名刺の裏に書いてある謎解きが面白すぎて「このまま問題にできるじゃん!」「出てもらおう!」って、それで急きょワンコーナー作ることになって。
矢野:まさかこんなブームになるとは…。
木月:『マジカル頭脳パワー!!』とも明確に違いましたもんね。
矢野:1問の中で、ちゃんと伏線や物語があるから、解いたときに「良くできてるなあ」って驚きがくるんですよね。
木月:かつてあったような、引っ掛けられて意地悪だなあっていう感じじゃなくて「スカッとする」っていうところがコーナーを立ち上げようと思った大きな理由なんですよ。特にすごいと思ったのは、「(A)ずむのは(B)」で、AとBに対義語を入れる問題です。正解はA「ひがし」、B「にし」で、左から右に矢印の弧が引いてあって、その線が最初テレビとして必要なのかな?と思ったんですけど、これがあるから答えが限定されるんですよね。解いた後に「なるほど、だからか!」と思って、その伏線が回収されたところに爽快感があったんです。
日高:『IQサプリ』を否定するわけじゃないですけど、あれは「モヤッとボール」という形で「納得いかないぞ!」みたいな意思表示があったわけですもんね。15年くらい経って、そういう右脳系と言われるクイズが進化したというか、ステージが違うところに行ったというのが正しいのかな。『ソモサン・セッパ』(フジテレビ)から比べても、だいぶ進化してますもんね。
矢野:かつてはどこか強引な言葉遊びがあって、それも含めてギャグとして楽しんでいた部分もあったんですけど、そこの精度を上げて1問としての完成度をここまで高めたというのは、東大のAnotherVisionの功績だし、それを世に広めようと頑張った松丸くんの功績ですよね。子供のファンもいっぱいできたし、「謎解き」が1ジャンルになってきた。
木月:松丸くんとは当初から「謎解きという言葉を文化にしよう」と目標設定して5年間やってきました。彼らは自分たちのやってることはクイズではなく「謎解きである」というブランディングをちゃんとしているんです。
次回予告…〜クイズ作家編〜<2> 『アタック25』の終了と視聴者参加クイズの今
●矢野了平1977年生まれ、埼玉県出身。高校時代からクイズ番組で活躍、東洋大学在学中からクイズ作家の仕事を手がけ、01年にプロの放送作家としてデビュー。現在の主な担当番組は『くりぃむクイズ ミラクル9』『マツコ有吉かりそめ天国』『有吉クイズ』(テレビ朝日)、『水曜日のダウンタウン』『オオカミ少年』『オールスター感謝祭』『クイズ☆正解は一年後』『佐藤健&千鳥ノブよ!この謎を解いてみろ』(TBS)、『潜在能力テスト』『今夜はナゾトレ』『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(フジテレビ)、『天才てれびくんhello』(NHK)など。
●日高大介1977年宮崎県生まれ、静岡県育ち。高校時代からクイズ番組で活躍し、慶應義塾大学在学中からクイズ作家の仕事を手がける。06年に『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)でプロの放送作家として活動を開始する一方、『お願い!ランキング』『キス濱テレビ』『真夜中のプリンス』(テレビ朝日)、『笑っていいとも!』(フジテレビ)、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)、『勇者ああああ』(テレビ東京)などに出演。現在の主な担当番組は『全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ)、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日)、『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジテレビ)など。
●木月洋介1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲〜RONDO〜』などを手がける。クイズ番組は、現在放送中の『今夜はナゾトレ』のほか、『タモリのジャポニカロゴス』『全国一斉!日本人テスト』『優しい人なら解ける クイズやさしいね』などを担当。

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