【インタビュー】『坂道のアポロン』三木孝浩監督「知念侑李くんと中川大志くんのセッションが素晴らしく、『この感動をきちんと映画にしなければ』という使命感があふれてきました」

9月18日(火)12時0分 エンタメOVO

三木孝浩監督

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 小玉ユキの人気コミックを実写映画化した『坂道のアポロン』のBlu−ray&DVDが9月19日に発売される。孤独な高校生・西見薫と同級生の不良少年・川渕千太郎のジャズを通じた交流をつづった青春音楽映画だ。薫役に知念侑李、千太郎役に中川大志という人気若手俳優2人を起用した本作の監督を務めたのは、『ホットロード』(14)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)など、青春映画を数多く手掛けた三木孝浩氏。2人のキャスティングや、見どころである演奏シーンの裏話などを聞いた。



−オファーを受けたときの感想は?

 実は先にアニメ版を見ていたんです。そこで「アニメでこんな音楽表現をしている作品があるんだ!」と興味を持ち、原作も読みました。だから、お話を頂いたときは「あの作品か!」と思ったものの、アニメのライブシーンがあまりにも素晴らし過ぎたので、「これを実写で越えるのは相当、難易度が高いな」と、やや及び腰になりました。

−とはいえ、出来上がった映画は、薫と千太郎の演奏シーンが見事でした。

 薫と千太郎のキャラクターも、腰が引けた理由の一つです。薫の方はまだ捜せばいそうな気がしたんですけど、千太郎みたいな人はどこにいるんだろうと。若い俳優で、豪快で、ドラムもできる、みたいなキャラクターはなかなかいない。企画自体はいいなと思ったのですが、まずキャスティングが難航しました。

−最終的に、薫=知念さん、千太郎=中川さんという配役にたどり着いた決め手は?

 相性の良さとか、バランスの良さです。身長差を大事にしました。あとは一応、2人ともピアノとドラムに触ったことがあるということだったので。本当に触った程度でしたけど(笑)。だから、最初に練習を見たときは、ここから撮影までの間に、どれぐらいスキルアップできるのかと心配になりました。場合によっては、演奏シーンの手元はプロにやってもらった方がいいのかな…と。

−その時点では、演奏シーンの手元は代役も考えていたということですか。

 はい。ただ、音楽映画でそういううそはできればやりたくないので…。

−見ている側が冷めますよね。

 やっぱり分かっちゃうじゃないですか。「ここはプロがやっているのね」と。だから、絶対に逃げないところまでやりたいとは思っていました。その点では、知念くんと中川くんが、僕らスタッフの想像以上に頑張ってくれました。クランクイン前のリハーサルを見た時点で、2人のセッションがあまりにも素晴らしくて…。「この感動をきちんと映画にしなければ」という使命感があふれてきたぐらいです。

−お二人は撮影前に10カ月近く楽器を練習したとか。

 本当は10カ月でも全然足りなかったはずです。しかも、10カ月と言っても、最初は基礎練習ばかりで、ちゃんとレコーディングされた本番用の曲ができたのは、撮影の3カ月前。あんな短期間であそこまでできたのは奇跡的と言っていいでしょう。何人ものミュージシャンの方が、2人の演奏シーンを見て「1年弱であんなレベルに行けるのは信じられない」と驚いていたぐらいです。

−しかも、劇中ではただ演奏するだけでなく、即興でセッションしているように見せなければいけませんよね?

 現場ではプロがアドリブで演奏した音源をコピーして演奏するけど、それをアドリブのように見せなければいけない。だから、ピアノやドラムの指導の方に、アドリブのように見せるにはどうしたらいいのかと、いろいろ相談しながらやってもらいました。それは演出できる領域ではないので、僕はただ祈るのみでしたけど(笑)。

−2人の演技力のたまものですね。

 本当に素晴らしかったです。2人で練習していく中から「ここで目線を合わせれば、タイミングを合わせているように見えるから、リアルに見えるよね」みたいなことを、自分たちできちんとつかんでいくんです。若さってすごいな…と。

−2人は以前も共演したことがあるそうですが、そういう関係性が生きたのでしょうか。

 そうですね。それがなければ、ここまでできるようにはならなかったと思います。そういう関係性があるとは知らずにキャスティングしていましたが、その意味では、やっぱりご縁があったんだなと。

−三木監督は本作の他に『ソラニン』(10)や『くちびるに歌を』(15)など、音楽映画を幾つも手掛けていますが、音楽映画に特別な思いはありますか。

 単純に音楽映画が好きなんです。普段、他の映画を撮っていると、「ちゃんと感動してもらえるかな」とか、「心に残ってもらえるだろうか」と不安になる瞬間がいっぱいあります。だけど、音楽映画は音楽の強度があるおかげで、自分の作品でありながら、自分が心動かされることがあるんです。だから、すごくやりやすいし、安心して見ていられる。いい音楽であればあるほど、何回見ても心動かされる。音楽映画はそういう力を持っています。だから、お話を頂くと「ぜひやらせてください」と言ってしまいます(笑)。

−この映画が今まで手掛けてきた音楽映画と異なる点は?

 圧倒的に難易度が高かったです。今までやってきた作品は、ロックバンドとか合唱とか吹奏楽という、ある程度決まった形をプレーするもの。だけど、ジャズの魅力はやっぱりセッション。だから、その場で出たアドリブ感を、アドリブでない形で撮らなければいけない。レコーディングしたプロのミュージシャンですら、「アドリブなので、同じことはできません」と言う音源を完璧にマスターして演奏しなければいけない。圧倒的に難しいことを俳優に要求しなければいけないんだなと、後になって気付きました。でも、2人が頑張ってくれたおかげで、うそをつかずに撮影できたのは、本当にうれしかったです。

−そのあたりもDVDの見どころでしょうか。

 そうですね。特典映像にはセッション場面をマルチアングルで収録しています。知念くんと中川くんはもちろん、ディーン・フジオカさんや中村梅雀さんの演奏もすごくすてきです。時間の都合で心を鬼にしてカットした分、特典映像に収録しています。本編に出せなかった映像がたくさん収録してあって見どころたっぷりなので、ぜひご覧ください。

(取材・文・写真/井上健一)

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