【映画コラム】ジョージ・ルーカス「音は感動を伝える。映画体験の半分は音だ」『ようこそ映画音響の世界に』

9月18日(金)6時13分 エンタメOVO

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 名作映画のフッテージ(素材映像)をふんだんに使いながら、ハリウッド映画の音響と、それに携わる人々にスポットを当てたドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界に』が公開中だ。監督は、自身も女性音響スタッフとして活躍するミッジ・コスティン。



 劇中、「ザ・サークル・オブ・タレント=才能の輪」と名付けられたチャートが現れる。これは、映画音響の仕事が細かく分かれていることを示すものだ。

「ボイス=声」俳優の演技を現場で録音する。
「ダイアログ・エディティング=編集」不要な音を環境音に置き換える。
「ADR=アフレコ」俳優がせりふをスタジオで再録したものを口の動きに合わせて編集する。
「サウンド・エフェクト=効果音」
「SFX=特殊効果音」実際は存在しない新たな音を作る。
「フォーリー」場面に合わせて動作音を録音する。
「アンビエンス=環境音」背後にある音の層を集め、リアリティーを出す。
「ミュージック=音楽」
「ミキシング」全ての音をまとめる。

 本作は、これらの効果をフッテージを使いながら具体的に見せ、改めて、映画音響の仕事は、プロの職人たちの集合体によるものだと知らしめる。

 本作に登場するスタッフの名前は、映画業界では有名だが、監督や俳優とは違い、一般的にはほとんど知られていない。どちらかと言えば地味な仕事だが、本作を見ると、彼らがいなければ映画製作が成り立たないことがよく分かって感動させられる。

 また、モノラルからステレオになったのは音楽業界が先で、例えば、ビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」や「レボリューション9」、あるいはジョン・ケージの実験音楽や、ミュージックコンクレートが映画音響に多大な影響を与えたこと。バーブラ・ストライサンドの『スター誕生』(76)がステレオ上映の道を開いたこと。ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』(77)やフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』(79)が、映画音響の観点から見ても、いかにエポックなものであったのか、など、興味深い事実も知らされた。

 ただ、せっかくスティーブン・スピルバーグが証言者の一人として登場するのに、音が重要な役割を果たした『未知との遭遇』(77)について全く触れていないのがちょっと残念だった。

 ところで、本作を見ながら、以前取材した「爆音映画祭」のことを思い出した。これは、音楽ライブ用のサウンドシステムを使って映画を上映するもの。これだと音の圧力が違うし、普通の上映では聴こえない音が聴こえたりもする。

 映画祭の主宰者は、見どころ(聴きどころ)として、戦争映画『プライベート・ライアン』(98)の、冒頭の激しい戦闘シーンで一瞬音が止まるところや、プロボクサー、ムハマド・アリの伝記映画『ALI アリ』(01)の、スパーリングから急にカットが変わってサンドバッグをたたくところの音などを挙げた。

 その言葉を証明するかのように、本作を見ると、映画音響の仕事は、爆発や銃撃などの派手な音を表現するだけのものではない、ということがよく分かる。

 劇中で、ルーカスが映画音響について語った「音は感動を伝える。映画体験の半分は音だ」という一言が心に響いた。(田中雄二)

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