音楽の教科書に50年載り続ける「魔王」の魅力——尾木ママ語る

9月20日(木)17時0分 文春オンライン


イラスト 中村紋子


 芸術の秋ね。先日、NHKEテレの「ららら♪クラシック」にゲスト出演、シューベルトの傑作歌曲、「魔王」誕生の背景に迫ってきたわ(十月五日放送予定)♥


 この歌曲の最大の魅力は、わかりやすくドラマチックなストーリーと音楽が見事にリンクしている点。息子を脇に抱え馬を駆る父に、息子は「魔王がいる」と訴える。息子に甘く囁きかどわかす魔王の声は、父には聞こえない。息子の不安は絶頂へ、そして遂に恐怖と絶望の中息絶える——という壮絶な展開。音楽も、父と魔王のパートは長調から短調にも変調。一方の息子は終始短調と各々の心情を対比。曲調はテンポよく高まりクライマックスへと昇華する。


 幼い頃から音楽の才能を発揮していたシューベルト。父は彼が生計の安定しない音楽の道に進むことに猛反対、自分と同じ堅実な教職に就かせた。でも若きシューベルトの頭と心には音楽が熱く溢れ渦巻いていたの。算数の授業中も黒板に書く数式はいつの間にか音符になっていたという。


「魔王」が作曲されたのは、代用教員をし始めた十八歳。好きな作曲を禁じられた鬱屈と、父に理解されない憤りをゲーテの詩「魔王」の作曲にぶつけたのね。その半年後、彼は家出。自分の夢である作曲の道に進む決意を固めるの。この年、彼は実に約百五十にも上る歌曲を作った。


 思春期に入ると、男の子は父親とのすれ違いやぶつかりを経験し、心理的「父親殺し」を経て一人前に自立。「魔王」に登場する息子はまさに、父親に理解されない苦悩を叫ぶシューベルト自身だったのね。


 日本の中一の音楽教科書に五十年にわたり載り続ける「魔王」。思春期の入り口に立つ若者が自らと心情を重ねやすいのも人気の秘訣かもね。そして、音楽の楽しさを味わう入門曲としてもピッタリ。ボクも改めて、クラシックを楽しみたくなったわ♥



(尾木 直樹/週刊文春 2018年9月13日号)

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