東大vs慶應 偉い教授たちが罵り合いの大ゲンカ勃発

9月21日(金)11時0分 NEWSポストセブン

ケンカを売ったのは慶應側(時事通信フォト)

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 日本の最高学府の頂点に立つ存在といえば「東京大学」で間違いない。一方、ビジネス界に目を向けると、最強の“学閥ブランド”に私学の雄「慶應義塾大学」を挙げる声も大きい。両大学がぶつかり合うのは東京六大学野球くらいの印象しかないが、最近になって東大と慶應が“正面衝突”する出来事が起きた。


 きっかけは〈東大の見識を疑う〉と題した1本の記事だった。読売新聞が運営するウェブサイトに9月10日付で元慶應義塾塾長・安西祐一郎氏のインタビューが掲載されたのだ。


 安西氏は認知科学を専門とする研究者で、2001年から8年間、幼稚舎から大学まで慶應全体を統括する塾長を務めた。また、日本学術振興会理事長や私立大学連盟会長も歴任した。「慶應の顔」ともいえる人物が、「東大の知」を否定しているのだから、穏やかではない。


 背景には、大学入試改革を巡る対立があった。政府は2020年度から、毎年50万人が受験する「大学入試センター試験」に代えて「大学入学共通テスト」を導入する。


 その際、英語については、英検やTOEIC、TOEFLといった民間業者による試験の結果を、合否判断や出願の条件に採用する方針を打ち出している。


 そんな最中の今年7月、東大の学内WG(座長・石井洋二郎副学長)は「見切り発車すれば受験生が迷惑を被る」として、「出願にあたって(民間の)認定試験の成績提出を求めない」という選択を第一とする答申を発表した。


 これは東大の最終結論というわけではない。だが、その選択は、国内にある82の国立大学だけでなく、東大との併願者が多い私立大学の方針にも影響することが確実視されている。



 2014〜2015年に中央教育審議会(中教審)の会長を務め、「民間試験導入」の制度設計責任者だった安西氏としては、面子を潰された格好になる。インタビューで安西氏は怒りをぶちまけた。


〈わが国の未来を創り出す責任を背負った東大の今後あるべき姿とかけ離れた、見識を疑う内容の答申と言わざるを得ない。一読して、答申を書いた人たちは英語ができないに違いないと思った〉


 安西氏から、“英語ができない”と切り捨てられた東大WGだが、名を連ねるメンバーにはイリノイ大学で言語学の博士号を取得した教授など“英語のプロフェッショナル”が複数加わっている。だが、安西氏の弁舌は止まることなく、東大生の英語力にまで及んだ。


〈英語力というのは、しっかりした構文規則と豊富な語彙を使いこなし、相手の立場や文脈を考慮して、論旨明快に英語で表現する力のことだ。東大生がすべてこの力を持っているとはとてもいえない。(中略)もし答申が通って英語入試が矮小化されるのなら、東大は時代の牽引者として国民が負託すべき大学に値しない。そうであれば多額の税金を注入する必要はない〉


◆慶應はもうちょい勉強しろ


 慶應の元塾長からここまでこき下ろされては、東大側も黙ってはいない。英米文学が専門の阿部公彦・東大教授は、ツイッター上で反撃に出た。



〈わ、東大を脅迫ですか。答申の疑念には答えず、東大の英語教育に難癖。(中略)もうちょい勉強して欲しいなあ、元慶應塾長さん〉


 これには東大アカデミズムの内外から1500を超える「いいね」が集中した。さらに阿部氏は続く投稿で、


〈もし、安西さんの言うように東大が「国家のための大学」なら(すごいなあ〜!)、誤った政策に対して「最後の防波堤」とならないとね〉と民間認定試験の“導入反対”を皮肉たっぷりに表明したのだ。阿部氏に真意を聞いた。


「現在、提案されているやり方だと、英語の試験を複数の民間業者に丸投げするようなかたちにもなりかねないが、それぞれビジネスや教養など目的も違い、設問の仕方も違う。それなのに無理にセンター試験のように共通の基準に換算しようとしている。それでは受験生のスコアを正確に比較することは簡単ではありません。走り幅跳びと棒高跳びを比べるようなものです」


 民間試験導入の問題点をそう指摘した阿部氏は、疑念はそれだけに止まらないとして、こうも続けた。


「センター試験は内容的にも運用面でも評価の高いものでした。ところがこれを解体することで、受験生は新しい試験への対策に迫られるかたちとなり、塾業界は今、その不安を煽ることで活況を呈している。教育の理念より、ビジネスの論理が先行する話のように思えてなりません」


 東大側からの指摘にどう答えるのか。安西氏に取材を申し込んだが、「今回の件では取材をお受けしません」との回答だった。

 

※週刊ポスト2018年10月5日号

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