「あえて言えば、シティポップだけどK-POP」韓国発・27歳日本人歌手が世界で注目の理由

9月23日(水)18時0分 文春オンライン

 韓国発の“シティポップ歌手”として、世界で注目を浴びている日本人女性、YUKIKAこと寺本來可(てらもと・ゆきか)さん(27)をご存じだろうか。


 ファースト・アルバム『SOUL LADY』は、リリース直後、米国、英国、カナダ、オーストラリア、フィリピン、ペルー、コロンビア、アルゼンチンなど計8ヶ国のiTunesのK-POPアルバムチャートで1位となる異例の記録を作った。



YUKIKAこと寺本來可さん


 中2のときに日本の雑誌モデルとなり、女優や声優としての活躍を経て、23歳で韓国ドラマのオーディションを受けに渡韓したYUKIKAさん。


 日本のゲームシリーズ『アイドルマスター』から発展した韓国のプロジェクト『アイドルマスター.KR』に唯一の日本人として合格。ドラマ出演と並行し、作品から派生したアイドルグループ活動を経て、現在は韓国で“シティポップ・クィーン”としての地位を確立した。


 異色の経緯をたどる彼女に、韓国へ渡ったきっかけと、韓国での活躍、日韓の芸能界の違いなどについて聞いた。

(全2回の1回目/ 後編 に続く)


◆◆◆


日本でシティポップを歌ったとしても、ここまでの反応は…


——この夏にファースト・アルバム『SOUL LADY』の音源がリリースされた際、米国、英国など計8ヶ国のiTunesのK-POPアルバムチャートで1位を獲得される快挙を成し遂げました。海外で大きな反応があることについて、どう感じていますか?


YUKIKA 本当にびっくりしました! 以前から私のMVやSNSには、海外の方のコメントが多いんですね。ここ数年、シティポップやK-POPが欧米でも人気がある流れで、注目してもらえたのかなと感じます。


 もし私が日本で日本語のシティポップを歌ったり、普通のK-POPを歌うソロシンガーだったら、ここまでの反応はなかったかもしれません。


——国内外のファンの反応で、特にうれしいのはどんな内容ですか?


YUKIKA 韓国の方も海外の方も、“シティポップ・クィーン”と書いてくださることが多くて。友だちからも、「“シティポップ”で検索すると、絶対YUKIKAの曲が出てくる」と言われるんです。そういうコメントをもらったとき、“シティポップを歌うシンガー”という立場を確立できたのかなと実感します。


『アイマス』関連のオーディションが渡韓のきっかけ


——日本で色々と活躍をされていたYUKIKAさんが韓国へ行くきっかけは、『アイドルマスター.KR』(ゲーム作品『アイドルマスター』シリーズの韓国版実写ドラマ)のオーディションだったそうですね。どんな流れで受けることになったのですか?


YUKIKA 元々ゲームやアニメが好きで、特に『アイドルマスター』は大好きだったんです。そのゲームを原案にしたドラマを韓国で作るという記事を見つけてすぐ応募して、オーディションを受けに行きました。


 韓国にも興味あったし、大好きな『アイマス』の作品ということで、海外へ行くことへ特に抵抗は無かったです。2016年の春ごろのことですね。


——韓国へ行くために、それ以前から計画していたわけではなかったと。


YUKIKA はい、姉が偶然ネットで情報を見つけて、応募もしてくれました。


——とても流ちょうな韓国語を話されますが、オーディションを受ける時点で、どの程度話せましたか?


YUKIKA「私は日本人です」くらいなら話せましたが、オーディションに行った時は何を言っているか分からなくて、他の日本人の参加者と助け合ってなんとか現場で起こっていることを理解していました。オーディションを受けることになってから、急いで単語を1000個覚えたりして。合格してからは、生活しながら覚えた感じですね。


——韓国へ行った時の年齢は?


YUKIKA 23歳ぐらいです。日本ならこの年齢で芸能活動を始めることはあまりないんですが、韓国で(女優を始めるには)まだ若いよと言われて。


——そこはたしかに、日本の感覚とは大きく違うように思います。


YUKIKA チームには私よりも年上のメンバーもいました。服装も落ち着いたものが好きでしたが、現場では一番年下に見られることが多かったので、アイドル活動を始めることも決まったし、周りに「若いよ」って言われるし、ミニスカートも穿いてみようかな、とか(笑)。


ダンスや歌はまったくやったことがなかった


——ドラマ出演と並行して、出演者によるK-POPグループ“Real Girls Project”としてのアイドル活動も始まりましたが、アーティスト活動はまったくの初めてですよね?


YUKIKA はい、日本でダンスや歌はまったくやったことがなく、練習生などをしていたわけでも無いので、最初の頃は大変でした。


——韓国カルチャーに興味を持ったのは、いつごろですか?


YUKIKA 本格的には、コスメが最初ですね。高校の修学旅行が韓国で、学校から3万円だけお小遣いで持たせてくれて。それでもレートが良かったので大量に買えたんです。ただ、買ってきたのはいいものの、説明が読めなくて、韓国語を読もうと興味を持ち始めました。


——では特に、憧れのK-POPアーティストがいたわけではなかったと。


YUKIKA そうですね。中高生の頃、少女時代やKARAは周りも好きなので聴いていましたが、流行っているK-POPを聴くという感覚でした。


——いま韓国に住んで何年経ちますか?


YUKIKA 2016年の10月に住み始めたので、この秋で5年目です。『アイドルマスター.KR』のときは、メンバーの何人かとマネージャーと一緒に寮生活をしていました。韓国国内でのグループ活動が終わったころに、一人暮らしを始めました。


——『アイドルマスター.KR』は期間限定プロジェクトだったとのことで、その後はどんな活動を想像していましたか?


YUKIKA 最初の計画では、ドラマの撮影が終わったら日本へ帰るだろうなと思っていました。当時韓国で活動している日本人はあまり多くなかったので、正直、良い経験になるだろうという思いだけで来ていたので。


 でも、ドラマが終わってからもプロジェクトのアイドル活動が続き、その後も色々と機会をいただいたことで、もっと韓国で挑戦したいなという思いが出てきましたね。


今やっていることは「あえて言えば、シティポップだけどK-POP」


——昨年の2月、ソロシンガーとしてデビューをすることになったきっかけは?


YUKIKA ドラマ『アイドルマスター.KR』に出演しながら、『MIX NINE』というアーティストのサバイバル番組にも出ていたのですが、それが終わった頃にソロのお話を頂きました。


 韓国って皆、歌やダンスがすごく上手いじゃないですか。アーティストとしての経験も少ないし、年齢もあるから(笑)、またイチからグループデビューということは難しそうだし、じゃあ何をして行こう……と思っていた時期だったので、ありがたかったです。


——YUKIKAさんは現在、“シティポップのシンガー”として有名ですが、ご自身の好きな音楽は?


YUKIKA 元々日本の音楽や洋楽も、80年代の音楽が好きです。姉も母も父もみんな80年代が好きで、私も小さい頃から、マイケル・ジャクソンやプリンスとかの音楽が好きでしたね。日本の音楽は、父の車に乗った時に、ユーミンとかをよく聴いていて。でも、当時は「シティポップ」というジャンルがあることは知りませんでした。


——ソロとしてのデビュー曲「NEON」をはじめ、最新アルバムの『SOUL LADY』もシティポップ系のテイストですが、こうした音楽の方向性で行こうとなった経緯は?


YUKIKA 事務所の社長が、80〜90年代の音楽をすごくお好きなんですね。それと2〜3年前からシティポップが世界で注目されている流れもあって、「YUKIKAに似合うと思う」という提案があったのですが、私もちょうど、そういう音楽が好きだったので、話が一致したんです。



——シティポップとはいえ韓国ならではの楽曲群ですよね。日本では今、こういう楽曲のリリースはないと思います。


YUKIKA そうなんです。韓国でも、「これはK-POPなのかJ-POPなのか」という質問をよく受けますが、「韓国の方が当時の(日本の)シティポップを作ろうと思って出来た音楽」だと思いますね。あえて言えば、シティポップだけれどK-POP。


——YUKIKAさん自身は、こうした楽曲をどのように受け止めていますか?


YUKIKA 私の音楽って、“ニューレトロ”だと思うんです。単純に古い音楽のままだと今の人たちには馴染みにくいと思うので、レトロなテイストがベースにあるけど、サウンド的な面は楽器をたくさん入れたりする、K-POPの良さを取り入れたシティポップになっているなと感じます。


——ファースト・アルバム『SOUL LADY』で、お気に入りの曲を挙げるとすると?


YUKIKA 3曲あげていいですか?「Yesterday」という曲は、作曲家さんが90年代の宇多田ヒカルさんや安室奈美恵さんをイメージして作ったとおっしゃっていて。私も90年代生まれなので、上手く歌えそうなジャンルとして挑戦しました。


「陰り-SHADE-」という曲は、シティポップよりも韓国の昔の流行歌に近くて好きですね。


 あと「抱きしめて-pit-a-pet-」は、私が“ナム”という犬を飼っていて、ナム目線で私を見た時の歌詞なんですね。最初に聴いたとき、その歌詞に泣きました。


韓国と日本、事務所や仕事環境の違いは


——韓国での芸能活動について、日本のご家族はどんな反応をされていますか?


YUKIKA 特に母や姉はK-POPや韓国ドラマがすごく好きなので、喜んで応援してくれています。私は末っ子なので本当は寂しいと思うんですが、ソウルと(実家の)東京って近いよねって話しています。何度かソウルへ来てくれたこともありました。


——事務所や仕事環境は、韓国と日本で違いはありますか?


YUKIKA 日本では俳優や声優の事務所で、今の韓国の事務所は音楽系の会社なので比較しにくいですが、自分の経験だけでいうと、日本のほうが厳しかったです。家族的で親身になってくれるんですが、当時私は子供だったので、少し怖かったり。


 韓国に来てからのほうが、事務所の方とのコミュニケーションが増えましたね。特に今の事務所は“一緒に作っていく”という感覚があります。


——最近はK-POP界で活躍する日本人も増えましたが、韓国芸能界で仲の良い日本人はいますか?


YUKIKA 直接連絡をしているのは、NATURE(ネイチャー)というグループのハルちゃんだけです。聞いた話では、K-POPの「日本人会」みたいなのがあるらしいんですが、私の周りにはまったくいないんですよ。私がグループで活動していないからかもしれませんが。


——今後新型コロナの流行が落ち着いたら、どんなことをしたいですか?


YUKIKA 今まで日本と韓国でしかイベントをしたことがなかったので、もっと海外にも出てみたいです。ブラジルとフィリピンで反応が良いって聞いたので早く行きたいですし、アメリカ、ベトナム、タイ等もぜひ行ってみたいですね。


——将来の夢や計画があれば、教えてください。


YUKIKA 韓国で歌手になって4年目、ソロデビューして1年少々ですが、名前は知らなくても曲は知っているというくらい代表曲ができたらと思っています。韓国を基盤にアーティストとして頑張っていきたいです。


 K-POPの長所って、海外ツアーによく出ることだと思うんです。そうしたワールド活動の一環として、日本でもライブやお仕事をできればと思っています!


(後編「 韓国発・日本人シティポップ歌手が世界で注目 “黒幕”ゲーム会社社長が語った戦略 」に続く)


韓国発・日本人シティポップ歌手が世界で注目 “黒幕”ゲーム会社社長が語った戦略 へ続く


(筧 真帆)

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