未払い年金「振替加算」 1人当たり未払い額は最大590万円

9月23日(土)16時0分 NEWSポストセブン

年金未払いは10万人にも

写真を拡大

 9月13日、約10万人の年金受給者に、本来支払うべき年金およそ600億円が、「事務的なミス」によって払われていなかったことがわかった。未払い金額は年金制度が始まって以来、史上最大規模だ。


 今回、未払いがわかったのは、聞き慣れない「振替加算」という“特別な年金”だった。「年金博士」として本誌・女性セブンでもお馴染みの社会保険労務士・北村庄吾氏が解説する。


「現役のサラリーマンならば、妻が専業主婦だったり、子供がいたりすると、会社から『扶養手当』を受け取ります。引退して急にそれがなくなると教育費など家計に困る人も出てくるので、扶養手当の代わりに、国から年金に上乗せして受け取れるのが『加給年金』や『振替加算』と呼ばれる特殊な年金なんです」


 妻が65才になるまで受け取れるのが「加給年金」で、65才以降に受け取るのが「振替加算」だ。今回、支払われていなかったのは、月額約1200円〜2万円弱の「振替加算」で、多い人では90才までの25年間ももらうことができなかったケースもある。1人当たりの未払い額は最大で590万円に上るという。


「厚労省の発表によれば、主なミスの原因は、公務員が加入する共済組合と年金機構の情報共有不足で、未払いとなっている“被害者”の9割は、元公務員の妻でした」(全国紙担当記者)


 そこで新聞各紙はこぞって、《処理ミス、公務員妻ら対象》(日経)、《10万人支給漏れ 元公務員の配偶者ら》(朝日)と報じた。


 そういわれると、「夫は公務員じゃないから大丈夫」と安心した主婦も多いはず。でも実際には、公務員の妻以外にも“未払い被害”が拡がっているのだ。1つ目の問題は、今回の「振替加算の未払い」以外に、支払いミスが多発していること。


「旧社会保険庁での年金記録のずさん管理が明らかになって、年金制度への信頼を取り戻すために新たに『日本年金機構』としてスタートしたのが2010年。しかし、今年7月までに未払いや事務的なミスを合計約2万5400件も起こしています。現在も月に100件のペースで発生していると報じられています」(北村氏)


 ミスの多くは届け出の放置や入力ミスなどの怠慢によるものだった。ミス1件あたりの影響額は「100万円から500万円未満」が27%と最も多かったといい、“被害”はかなり深刻だ。しかも、まだ発覚していない未払いも多いはずだ。



 年に1度、自宅に送られてくる「年金振込通知書」は目を皿のようにしてチェックしなければならないだろう。


 2つ目の問題は、今回、年金機構が「未払いがないかどうか」を総チェックしたのは「振替加算」だけで、前述の「加給年金」についてはまだチェックしていないということだ。


「加給年金も振替加算も、自動的に受け取れるものではありません。自分から届け出をすることが必要です」(北村氏)


 妻が年下の夫婦の場合、夫が65才になったタイミング(初めて年金を請求する時)で年金事務所に届け出ないと、加給年金は受け取れない。同様に、妻が年上の夫婦が振替加算を受け取るためには、夫が65才になった時に届け出が必要だ。


「今回の年金機構の調査では、制度をよく知らずに届け出をしなかった約1万2000人が振替加算を受け取れなかったことがわかりました。ところが、同じように届け出が必要な加給年金については、どれだけの人がうっかり届け出を忘れているのかはわかっていません」(北村氏)


 日本では圧倒的に年下妻夫婦の方が多いことを考えると、本誌試算では、全国でおよそ5万人が加給年金の届け出を忘れて、未払いのままになっていると推定される。


「年金制度は何度も制度改革され、年金機構の職員さえよく理解できないほど複雑怪奇になっています。そもそも年金を支払うことは義務なのに、もらう際には自分で申請しなければならないというのは不公平です」(北村氏)


※女性セブン2017年10月5日号

NEWSポストセブン

この記事が気に入ったらいいね!しよう

年金をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ