“マニアック芸人”タブレット純が語る、志村けんからもらった一言

9月24日(日)17時0分 文春オンライン

 ムード歌謡漫談で活躍し、志村けんや関根勤に絶賛された“知る人ぞ知る”マニアック芸人・タブレット純さん。10月1日に渋谷・LOFT9 Shibuyaで開催される古本市 「LOFT9 BOOK FES. 2017」 では、地下アイドル・姫乃たまさんと「闇を抱える読書」をテーマにトークイベントを開催する。風貌から芸風まで、謎に包まれたご本人にデビュー前からの歩みを聞いてみた。



タブレット純さん 浅草六区で



僕にとっての相撲は、結局、麒麟児なんです


——今回は古本市のイベントに出演されるわけですが、タブレットさんはもともと古本になじみがあるんですか?


タブレット そうですね、高校卒業してから10年間、八王子の古本屋に勤めていたということはあるんですけど、もともとは小学5、6年の頃から古本屋に行くのは好きだったんです。特に探していたのは相撲雑誌のバックナンバーなんですけど。


——相撲雑誌というと『相撲』ですか? 『大相撲』ですか?


タブレット 『相撲』のほうです。こっちのほうがエンタメ性があって好きだったので。


——わざわざバックナンバーを探した理由が気になります。


タブレット 僕、麒麟児(和春)が好きだったんです。追いかけていた頃はもう関脇から陥落して、番付では前頭の上位と下の方を行ったり来たりしていたんですけど、なんかそういう感じが好きだったんです。麒麟児といえば突っ張り相撲で有名で、富士櫻との突っ張り合いは昭和天皇も身を乗り出してご覧になったほどの語り草ですよね。そんな押し出しの強い力士の、晩年の枯れた雰囲気とかたまらなかったんですよ。『相撲』のバックナンバーを買っては、麒麟児の記事を探してスクラップして楽しんでました。気に入って額に入れた記事もありましたね。


——今も相撲は好きで観ているんですか?


タブレット あの頃ほどではないですね。僕にとって相撲は、結局、麒麟児だったんですよ。



麒麟児 ©時事通信社



文化祭でマヒナスターズを流したら、みんな混乱してました


——現在の芸にもなっているムード歌謡に触れるきっかけは何なのですか?


タブレット これも小学生の頃の話ですが、とにかくAMラジオの歌謡曲番組が好きだったんです。玉置宏さんの番組とか、タイマー録音しておいて、学校から帰って聴くのが楽しみな子どもでした。NHKでやっていた「にっぽんのメロディー」もよく聴いていました。日によって放送時間が変わるような不思議な番組だったんですけど、アナウンサーの中西龍さんのスローモーな進行が耳に心地よかったですね。


——タブレットさんは「ものまね」も得意とされていますが、持ちネタには若山弦蔵さんや大沢悠里さんといった、スローな語り口のラジオパーソナリティがいますよね。


タブレット 大沢さんや若山さんのくぐもった音声、耳ざわりのいい声質、よどみのない話術。好きだからマネしているところもありますが、話芸をするものとしては憧れるというか、かっこいいなあ、という思いもあります。


——しかし、学校の友達とはなかなか共有できない趣味ですよね、麒麟児にしても、玉置宏にしても。


タブレット 文化祭でマヒナスターズを流したら、みんな混乱してました。


僕は「最後のマヒナスターズ」なんです


——「和田弘とマヒナスターズ」といえば、昭和ムード歌謡を語る上では外せないグループですが、タブレットさんの芸界デビューのきっかけはまさにマヒナスターズなのですよね?



和田弘。タブレットさんが「最後のマヒナスターズ」として活動した ©共同通信社


タブレット はい。27歳の時に勤めていた古本屋がつぶれることになって、仕事を探しているときに、たまたま演歌雑誌をめくっていたら「和田弘のカラオケ教室」という文言があったんです。僕がずっと好きだったマヒナスターズの和田弘に会える! と思ってすぐに通い始めたんですが、その時のマヒナスターズはけっこう揉めていて、結局和田さんと他のボーカリストが反目して解散になったんです。そんな中、和田さんは「新生マヒナスターズ」という看板で再起を図ろうとしていて、そこにやってきた僕がボーカリストとしてあれよあれよと採用されてしまった。僕は「最後のマヒナスターズ」なんです。


——最後のマヒナスターズメンバーとしてはどんな活動をしたんですか?


タブレット 新宿のホテルでディナーショーした時なんか、まだ新生メンバーが寄せ集められたばっかりでうまくいかないんですよ。で、和田さんは僕に「立ってるだけでいい」なんて言うんですけど、根っからのファンだったから演奏が始まると普通に歌えてしまって(笑)。



「バカ売れしないでほしい」とよく言われます


——憧れの歌手だった和田弘という人は、実際どんな人でしたか?


タブレット 一緒に過ごしたのは和田さんが亡くなるまでの2年間です。優しいおじさんという感じでしたが、「脱退したメンバーへの復讐」という気持ちもあってか、いろいろ活動を性急に進めたがっている感じもしました。昭和歌謡界のスター的な人物ですから、本来はあんな晩年を迎える人ではなかったと思うんですよね……。ただ、僕が昔のメンバーのことを聞きたがると、嫌がるどころか、とても嬉しそうに話を聞かせてくれました。何時間も語ってくれたこともありましたね。


——和田弘が亡くなってからはソロ活動をし、いまの事務所にスカウトされて現在に至るわけですが、“知る人ぞ知る”芸人的なポジションにあることは、ご自身としてはどんな思いを持っているものでしょうか。やっぱり、大きくブレイクしたいものではないですか?


タブレット いっとき、テレビにもけっこうお呼びがかかってブレイクの兆しがあったんですが、幸か不幸か落ち着いちゃったんですよね(笑)。それで知る人ぞ知る感じで活動を続けているんですけど、僕にとっては丁度いいバランスかなと思っています。ファンの人からも「バカ売れしないでほしい」とよく言われます。





——売れないでほしい、という願いが周囲に多いっていうのはある意味貴重ですね。


タブレット 「私はタブレット純のファンです」って公言しないファンが多いんです。だからこのSNSのご時世、全く名前が拡散しない。ひとりでYouTubeを見て笑ってくれている、そんな隠れファンが僕のファンのようです。なので自然と僕も隠れがちな存在になるんでしょうね。でも、この感じが自分としては性に合っていて丁度いいです。


「オレがもう一度見たいのはタブレットかな」


——現在はラジオ日本で「タブレット純 音楽の黄金時代」という冠番組まで持って、歌謡曲マニアのAMラジオ少年の夢は叶ったのではないですか?


タブレット そうですね、和田弘さんとの出会いもそうですが、好きなものをひたすら追いかけて行ったら夢が叶った、という思いは強いです。ブレイクの兆しを垣間見せてくれた「歌ネタ王決定戦」に出場した時にもそんなことを思いましたね。生放送の番組だったんですが、審査員に志村けんさんがいらして、「オレがもう一度見たいのはタブレットかな」っておっしゃってくださったんですよ。もう舞台袖で感激でした。ドリフ世代の自分にとっては、志村さんは神様みたいな方ですからね。


——志村さんの一言は、今でも大きいですか?


タブレット 自分の好きなことを続けていてよかったな、と思わせていただいた一言ですね。ずっと社会に適合できない人間だと思いながらマニアックなレコードを探し続けていた時期もあったんですが、好きなことをずーっと追いかけて行ったら、いつかきっといいことがあるんですよ。





写真=白澤正/文藝春秋



たぶれっとじゅん/1974年、神奈川県生まれ。高校卒業後、古本屋、介護職を経験し、和田弘とマヒナスターズに参加。和田弘没後、ソロで活動し、昭和歌謡漫談という異端的な芸風でカルト的人気を誇る。

新曲「夜のペルシャ猫」日本コロムビアより11月29日発売!




INFORMATION

「LOFT9 BOOK FES. 2017」 

10月1日(日)渋谷・LOFT9 Shibuyaにて

タブレット純×姫乃たま「闇を抱える読書」は13時スタート

詳細、チケットについては

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/71625




(「文春オンライン」編集部)

文春オンライン

この記事が気に入ったらいいね!しよう

タブレットをもっと詳しく

PUSH通知

緊急速報ニュース

緊急度や重要度の高いニュースが発生した際にすぐにプッシュ通知を送ります。
通知設定一覧からいつでも解除ができますのでお気軽にご登録ください。

通知設定一覧

BIGLOBE
トップへ