栗山巧が放った2000本以上の安打から選び抜いた“最高の1本”はこれだ

9月24日(金)12時0分 文春オンライン

 世が世なら、今年の埼玉西武ライオンズはパレードをしています。所沢駅をスタートして、西武所沢S.C.を眺めつつ西所沢を目指し、さらに西進して多摩湖に到達するというロングパレードを。「2018年の優勝パレードの3倍くらいやる感じのルートですね……」というご指摘もあるかもしれませんが、優勝に勝るとも劣らない祝賀感があります。球団の成績も、親会社の経営状況もズタボロという今季ではありますが、それすら吹き飛ばすくらいの喜びが栗山巧さんの通算2000本安打達成にはありました。



通算2000本安打を達成した栗山巧


栗山巧の「2000本」にライオンズは狂喜乱舞


 おかげさまで西武球団も大盛り上がりで、「今年はCS進出グッズも優勝グッズも日本一グッズも作る必要ないな、ヨシ!」という全振り態勢で栗山2000本グッズを制作中。まずは「職人が手作業で栗山選手の顔を肌の質感まで精巧に再現した」という「可動式フィギュア」。そして、「銅像は原型師が写真を見ながら手作業で原型を作るというものが一般的ですが、この銅像は最新のデジタル技術を活用し、本人そのものの3Dデータから製作する為、再現度が桁違いです!」とフィギュアのほうの原型師に若干失礼なくらい再現度で盛り上がっている「銅像(税込990万円)」。ついにはグループの総力をあげて「家(税込2695万円)」までグッズとして用意してきました。


「家」については、ファンクラブプラチナステージ会員であればグッズ購入時に約189万ポイントが還元されるべきところをポイントの付与はナシとされている点が購入検討にあたっては若干残念なところではありますが、まさにグループあげての「狂喜乱舞」といった様相です。球団外でも、西武鉄道所沢駅ではお祝いのくす玉が割られ、懇意にしている西武所沢S.C.さんでは「2000本安打達成記念おめでとうセール」を開催するなど、喜びが所沢全域に広がっています。おそらくシーズン終了後には改めて西武・そごう各店で「2000安打達成本当におめでとう」セールを開催することになるでしょう。5位か6位でやる「ご声援感謝セール」より、そっちのほうが景気よさそうですからね。


「ここからここまで栗山」と縦に伸びる喜び


 野茂英雄さんがプレゼンターとして来場し、名球会入りの証であるブレザーに栗山さんが袖を通した授与式の光景。ライオンズからも名球会入りができる、名球会入りするほどの選手がライオンズを終の棲家として選ぶ、当たり前のようで決して当たり前ではなかった光景がやっと戻ってきたのだと、しみじみと感激しました。


 この節目のタイミングを、共に過ごしてきたメットライフドームでお祝いできること、振り返る過去の思い出をすべて自分たちのものとして反芻できること、この先もこの偉大な選手のプレーを見守ることができること、そのすべてに対してありがたい気持ちでいっぱいになります。


「優勝」は特定年度で横に広がる喜びですが、この「2000本」は栗山さんの入団から始まり、現在、未来へと縦に伸びる喜びです。途中には若干の暗黒期もあった気がしますが、「ここからここまで栗山時代」と年表に線を引けば、すべてが栗色の思い出になります。「僕は栗山巧の現役時代を見たんだ」と年表に引いた線をなぞれば、「いい時代だったな」と思えるくらいには幸せです。栗山巧名場面の全部がその線の上にある。その年数分の感慨は、パレード相当であるというのは冗談でも大袈裟でもなく、本心からの感覚です。残念ながらパレード開催は世情的にも難しいでしょうが、本当に満足できるシーズンとなりました。2021年も埼玉西武ライオンズと栗山巧さんに熱いご声援、ありがとうございました!


この全部がライオンズのもの! ベストヒット栗山巧


 以降はご紹介を兼ねた自慢となりますが、栗山巧さんが積み重ねたヒットから、歴史に残る素晴らしいヒットを10本紹介させていただきます。2000本以上の素晴らしいヒットから一部だけを選ぶなんてことはそもそも無茶な話ですので、意見の相違は2000以上あるとは思いますが、今季はこの喜びで脳を麻痺させたまま駆け抜けようとしているライオンズ民の戯言と思って、ご笑納いただければ幸いです。


■番外:2016年オールスターゲームでの「初出場初打席初ホームラン」


 いきなり「2000本」のカウントに入らないヒットですが、思い出の大きさではランキング上位に入れたいものを泣く泣く番外としたということでご理解ください。栗山さんがプロ15年目で初めてオールスターゲームに出場し、その初打席で打った初ホームランは「プロ野球ファンの誰もが心から喜ぶ一発です」「オールスターが似合います」の実況も納得の一打でした。そして、オールスター級の活躍を見せたこの年のオフだからこそ、FA権を行使したうえでライオンズに残留してくれたことは、より一層の喜びともなりました。


■第10位:「ここぞ」に強い男の真骨頂、初出場初安打


 2004年9月24日の大阪近鉄戦、この年のシーズン最終戦となる試合で招集され、1軍初出場となった栗山さん。この貴重なチャンスを見事に活かし、その後の「2000本」の始まりの1本となるプロ初安打を記録します。奇しくもこの試合は、この年で球団が消滅することが決まっていた大阪近鉄バファローズの本拠地最終戦でした。近鉄球団の歴史が幕を閉じるとき、「栗山2000本」の歴史が始まった。これは栗山巧検定で絶対出題されるところなので、ぜひ覚えて帰ってくださいね。


■第9位:骨折しながら放った不屈の満塁弾


 2006年8月1日の千葉ロッテ戦、空振りした際に右手有鉤骨を骨折するも、その直後に折れた手でロッテ・小林雅英さんから放った満塁ホームラン。結局この年はこれで戦線離脱となるも、自身初となる満塁ホームランで「骨が折れてもタダでは終わらない」闘志を見せました。2012年にも死球による骨折での戦線離脱などがありましたが、本当に大きな怪我はそれくらい。鍛え上げた「身体の強さ」はもちろん、痛みを撥ねのける「強い意志」がその後のプロ野球人生を予感させるような一発でした。


■第8位:「オーティズがグラブを投げたアレ」として語り継がれる三塁打


 2008年5月4日の千葉ロッテ戦、特に何ということはない場面で放った栗山さんの一打は、ファーストのグラブを弾いて一・二塁間を抜けていきます。ライト前への単打……と誰もが思ったとき、ロッテのセカンド・オーティズがボールを止めようとグラブを投げつけました。ルール上、この行為には安全進塁権3個を与えるということで、ただのヒットが三塁打になってしまいました。この年、最多安打のタイトルを獲得した栗山さんの167安打のうちの1本は、歴史的珍ヒットだったというお話。


■第7位:あの大投手から打った球団通算8000号


 2011年5月6日の楽天戦、東日本大震災以降では初めて楽天の本拠地Kスタ宮城(当時)に乗り込んでの試合で、田中将大さんから放った一発は、球団通算8000号となる決勝ホームラン。秋山幸二さん(球団通算4500号)、清原和博さん(球団通算5000号)、石毛宏典さん(球団通算5500号)、鈴木健さん(球団通算6000号・6500号)、カブレラさん(球団通算7000号)といった偉大な面々とともに「節目」に名を連ねる必然の1本でした。


■第6位:気迫の雄叫びで吠えまくったサヨナラ打


 2013年8月18日の楽天戦、両軍が点を奪い合う乱打戦のなか、3点を追いかける9回裏の攻撃。2点を取り、なお二死二・三塁という一打サヨナラのチャンスで、この試合ここまでノーヒットの栗山さんが放った気迫のサヨナラタイムリー。優勝したかのような騒ぎのなか熱い雄叫びをあげつづける栗山さんの男っぷりが印象的な一打です。


■第5位:名実ともにミスターレオを拝命した球団新記録1807安打目


 2019年8月31日のソフトバンク戦、栗山さんは通算1807本目となるヒットを放ちます。これは石毛宏典さんが持っていた球団記録1806安打を更新する1本でした。ライオンズファンの間でも喧々諤々の議論となる「ミスターレオとは誰のことなのか?」というテーマに関して、石毛宏典派、松井稼頭央派、中島宏之派などの並み居る諸派を抑えて、名実ともに栗山巧派が第1党に躍り出た瞬間でした。


■第4位:炎獅子を締める一発! 連覇へつながる劇的代打サヨナラ弾


 2017年8月17日の楽天戦、9回裏に代打出場で放ったサヨナラスリーランは、「2000本」のなかでも特に劇的な1本でした。「ライオンズフェスティバルズ2017」と銘打ち、真っ赤な炎獅子ユニフォームを着用しての試合で、怒涛の13連勝を含む神がかり的な強さを見せたライオンズ。フェスティバルズ最終戦となったこの試合で、代打で登場した栗山さんがサヨナラ弾で勝利を決めるというドラマは、3年連続Bクラスとなっていたチームの弱気を粉砕し、翌年からの連覇につながる勝利でした。


■第3位:真獅子の骨と牙の競演! 10年ぶりの優勝を決定づける満塁弾


 2018年9月17日のソフトバンク戦、優勝を争う相手との直接対決3連戦というシチュエーションにおいて、2連勝して迎えた3戦目。勝って決着をつけたい大事な試合で、初回に栗山さんが放った大きな大きな満塁弾。同じ試合で同期入団の盟友・中村剛也さんのスリーランも飛び出し、ヒーローインタビューではチームの「骨と牙」が並び立ちました。このシーズン、「勝ったな」と確信したのはこの一戦でした!


■第2位:ライオンズ史上初の生え抜き2000本安打


 2021年9月4日の楽天戦、ライオンズでともに過ごした選手たちが数多く集う相手との対戦で、元同僚の牧田和久さんから節目の2000本目を放った栗山さん。栗山さんの安打数をカウントアップしながら「楽天戦で決まりそうだぞ」「楽天戦かー」「楽天戦かー」と複雑な思いで見守っていたファンも散見されましたが、球団史上初となる「生え抜き」選手による2000本安打到達の圧倒的な喜びで、モヤモヤもどこかに吹き飛びました。


■第1位:球団史上1位! 背番号「1」が放つ最後の1本


 20XX年X月X日の●●戦、この年で引退することを発表していた栗山巧さんがスタメンに名を連ねた本拠地メットライフドームでのシーズン最終戦。コロナ禍の当時であれば考えられない3万人超の大観衆が球場に集い、さらにチケットを持たないファン約5万人が球場周辺に詰め掛け、ミスターレオの引退を惜しみました。すでにリーグ制覇を決めていたライオンズは、この試合も投打で圧倒的チカラを見せつけ、大量リードで終盤戦へ。しかし、栗山さんのバットからだけは快音が聞かれないまま、8回裏おそらく最後となるだろうライオンズの攻撃を迎えます。「もっと栗山さんを見ていたい」「何とか延長にならんものか」「●●、あと20点取れ!」の悲痛な声も響くなか、ライオンズナインは「巧さんにまわせ」を合言葉に奮起しました。粘りの安打、粘りの四球、痛みを喜びが上回る死球で打者8人がつなぎ、栗山さんに最後の打席を届けます。男泣きで打席に立つ栗山さんがバットを振り抜くと、打球はレフトスタンドへ一直線。自らが持つ球団記録を更新する最後のヒットをホームランで締めくくると、スタンドへ向けて拳を突き上げながらダイヤモンドを1周。興奮したテレビ埼玉がこの一発をニュース速報で伝えると、ツイッターでは「知ってた速報」「栗山さん」「ミスターレオ」が次々にトレンド入り。ほんの短い時間だけ喜びを噛み締めた栗山さんは、引退の挨拶で「まだCSと日本シリーズがあります」「必ず日本一になります」「応援よろしくお願いします!」と締めくくり、さらなる戦いへと身を投じていきました。シーズン後、通算出場数・通算安打数などいくつもの球団記録を残した栗山さんの背番号「1」は永久欠番に制定され、文字通りライオンズの歴史に永久に刻まれたのでした……。


「第1位」の話は未来の話ですが、きっとこうなるだろうと信じています!


「予約済みの第1位」とお考えください!


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(フモフモ編集長)

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