引退・渡辺直人の気遣い…“困ったときの直人さん”と“困らなくても直人さん”

9月25日(金)12時0分 文春オンライン

「困ったときの直人さん」と「困らなくても直人さん」


 みなさん、はじめまして!


 昨年、イーグルスのオフィシャルリポーターとして、オープン戦・レギュラーシーズンの全ての主催試合78試合で中継リポーターを務めたフリーアナウンサーの倉林知子です。私は元々、山形県のさくらんぼテレビで働いていました。


 昨シーズンは開幕戦をZOZOマリンスタジアムで取材したあと仙台入り。パブリックビューイングの日に、「AI判定 あなたはダレ鷲さん?」で遊ぼうと待機列で待っている間、スタジアムのボランティアを長年しているというおじいちゃんと立ち話をしました。そのおじいちゃんは、宮城球場をフルキャストスタジアム宮城に建て替えた工事現場で働いていたお方で、当時急ピッチで球場を作り替えたお話をして下さいました。


 新球団の誕生から現在までを見てきた地元の方にお会いして、改めて「リポーターとして、このチームの魅力、選手の魅力、そして野球の魅力を視聴者の皆さんにしっかりお伝えするんだ!!」と身の引きしまる思いがしたのを昨日のことのように思い出します。



筆者・倉林知子


 さて、前置きが長くなりましたが、先日引退会見をした渡辺直人選手についてのお話です。


 昨年9月26日、レギュラーシーズン最後のイーグルス中継。


 番組終わりの挨拶で「唯一の心残りは、渡辺直人選手の復帰を伝えられなかったこと」と話した私。実は、イーグルスに来る前に、スポーツキャスターとして2016年からライオンズの取材をしていました。直人選手と初めてお会いしたのはその時でした。


 メディアにとって直人選手は、どんな時もどんな質問にも答えてくれる、とても頼りになる存在。


 ライオンズ時代も選手たちから「困ったときの直人さん」と言う声が聞こえていましたが、リポーターの私にとっては「困らなくても直人さん」(笑)という存在でした。


「楽天慣れた?」「今日ちょっと元気ないんじゃない? どうした?」と日頃から一レポーターの私のことさえも気にかけてくれていた直人選手。ライオンズからイーグルスへと環境が変わり全く余裕がなかった私のことを見抜かれ驚いたと同時に、その気遣いが本当に嬉しかったのを覚えています。


 直人選手の気遣いは、プロ生活14年間で数多くの選手の飛躍のきっかけや人生の分岐点を作ってきました。


チームに受け継がれる「直人イズム」


 例えば、現在ヤクルトスワローズに在籍している田代将太郎選手。戦力外通告を受け、引退を考えていたとき、直人選手からもらった電話がきっかけで、もう一度プロ野球選手として頑張ろうと奮起。トライアウトを経て、現在も現役を続けています。自身も戦力外通告を受けていたのに、チームメイトに親身になってアドバイスした直人選手の気遣いには、本当に頭が下がります。


 直人選手が引退発表をした3日前の9月10日、今年から直人選手の自主トレに参加している「直人チルドレン」の1人、岩見雅紀選手がプロ初ホームランを放ちました。


 ベンチに戻ってきた岩見選手を目を細めてハグする直人選手の姿がとても印象的でした。岩見選手は「直人選手に野球と向き合う姿勢、向き合い方、(試合への)臨み方を教わった。人との関わり方も含めて教えてもらった」と振り返っています。この日に限らず、昔から、直人選手はイニング終わりにチームメイトが守備を終えてベンチに返ってくるとき、ベンチの一番前で仲間を出迎えます。常にグラウンド全体を明るくするようなムードを作っていた直人選手。昨シーズンの練習中、サード付近で直人選手とウィーラー選手の掛け合いに取材陣が「もらい笑い」をすることもしばしばでした。


 2019年から直人選手とともに自主トレを行っている山下斐紹選手は、「直人チルドレン」の一人。「直人イズム」を継承し、試合中はベンチの一番前で仲間を出迎え、練習の時も元気に声を出しています。


 引退会見の日、仙台のテレビ局・東日本放送のスポーツ番組「もえスポ」の天気予報で、予報の背景に流れる映像に直人選手の名場面が流れました。BGMは登場曲「栄光の架橋」。


 涙のトレード会見、背番号2の活躍したシーン、ベイスターズのユニフォームを着て楽天生命パークに立つ姿、復帰の会見、去年モイネロ選手から打った同点ホームラン。予報を伝えていた某アナにはごめんねと思いながら天気予報はあまり頭に入らず、思わず泣いてしまいました。


 直人選手の引退セレモニー。まだ開催の可否や日程はでていませんがその折には、スタイリッシュなブラックが気に入って買った2018年のTOHOKU PRIDEユニフォームの26番を着て楽パに駆けつける予定です。ファンの皆さんと共に、直人選手にこれまでの感謝とありがとうを伝えたいです。


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(倉林 知子)

文春オンライン

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