【インタビュー】有村架純 怒涛の20代前半を過ぎても、次々と訪れる“初体験”に胸躍る

2018年9月25日(火)17時25分 シネマカフェ

有村架純『コーヒーが冷めないうちに』/photo:You Ishii

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「怒涛の5年間でしたね」——。有村架純は、20代前半の5年をそんな言葉でふり返った。

「あまちゃん」で注目を集めたのが20歳のとき。そこから映画、ドラマに舞台と次々と印象的な役柄を演じ、ものすごいスピードで駆け抜けてきた。おそらく、この先を含めた彼女の女優人生においても、大きな意味を持つ5年間であったことは間違いない。

そんな彼女に、もしも、過去に戻れるならば? と尋ねると、この怒涛の5年よりもさらに少し前、仕事を始めて少し経った「高校生活最後の1年」という答えが返ってきた。

「高校3年のタイミングで(地元・兵庫から)上京して、みんなと一緒に卒業出来なかったので、みんなと一緒に残りの1年を過ごして、卒業したかったなという気持ちはありますね」


映画『コーヒーが冷めないうちに』は自分が望む過去に戻ることを可能にしてくれる、不思議な喫茶店を舞台にした物語。 有村さんは、ここでコーヒーをいれ続ける謎めいた女性・数(かず)を演じている。

原作は本屋大賞にもノミネートされ「4回泣ける!」と話題を呼んだ川口俊和のベストセラー小説。とある街にある少し古めかしい喫茶店「フニクリフニクラ」では、ある席に座ると望み通りの時間に戻ることができると言われており、様々な後悔を背負った人々が過去に戻ろうと店を訪れるが…。


“バランス”を重視「夢はあるけど、夢過ぎないように」
物語の大枠はファンタジーではあるが、その中で展開するのはあくまでも人間ドラマ。有村さんは原作と脚本を読んで「非現実的だけど夢のある物語。どこまでファンタジーなのか? 夢はあるけど、夢過ぎないようにできればと思いました」と現実とファンタジーのバランスを大事にしたと明かす。

有村さんが演じた数は、従兄で店主の流(深水元基)と共に店を切り盛りしており、彼女がコーヒーをいれることで、タイムスリップをさせることができるという、重要な役割を担っているが、彼女自身が抱えるある“過去”に関しても徐々に明かされていく。ここでも有村さんが重視したのは“バランス”。

「最初に言われたのは『数をミステリアスに見せたいから(コーヒーをいれたり、客とのやり取りを)淡々と義務的にやってほしい』ということ。でもやはり、どこかで数が持っている母性——常連客が『また来たい』と思える喫茶店であるということは、それなりの温かさ、優しく包み込んでくれる柔らかさがないといけないと思って、そのバランスをとるのが難しかったです」。


このバランスを重視する感覚は「慎重さ」と言い換えてもいいかもしれない。それは、有村さん自身のパーソナリティとも重なる部分と言える。数と自身の近しいと思える部分について「人との距離感を見ているところ」と語る。たしかに数は、店を訪れる常連客に対し、踏み込み過ぎず、かといって無関心で突き放すでもなく、絶妙な距離感で接していく。

「そこは似ていると思いますね。私も人との距離感はわりと考えてます。主演をやらせていただく機会が増えれば増えるほど、そういうことは考えるようになりました。話しかけられ過ぎるのがイヤな人もいるし、人によって距離感は違うので。今回の現場はみなさん、大人の方たちばかりで、それぞれの時間を過ごされる方が多いので、主演だからと頑張って話しかけようというのでもなく、みなさんにお任せしていました(笑)」


水中での撮影「実は泳げなくて…(苦笑)」
数がコーヒーを入れることによって過去に戻る瞬間は、その席に座った人間が水の中に沈んでいく中で時を遡るという、なんとも幻想的な映像で描かれる。数もまた、過去に戻るシーンがあり、当然、有村さんも水中での撮影を行なったのだが…。

「2メートルくらいの深さの水槽がスタジオに用意されたんですけど、私、実は泳げなくて…(苦笑)。でも、潜るくらいならいけるかと思って(泳げないことを)言わなかったんですけど、やっぱりビビっちゃって…。久しぶりに水に浸かるし、(飛び込む瞬間の)水泡も撮らないといけないので、飛び込まないといけないんですよ。怖くなって10分くらい入れなくて、さすがに周りがザワザワしはじめて…『これは早く入らなあかん!』と飛び込んで、無事に3カット撮りました(笑)」。


ちなみにこの水中シーンも含め、この幻想的ながらも人の心を打つ人間ドラマを演出しているのが塚原あゆ子監督。長編映画の監督を務めるのは本作が初めてだが、TVドラマの世界では「夜行観覧車」「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」「重版出来!」「アンナチュラル」など話題の作品で演出を務め、多くの俳優がいま、一緒に仕事をすることを熱望していると言われている。

「コーヒーを入れて過去に戻る瞬間は、台本だけではなかなか想像しにくいんですけど、塚原さんは『コーヒーをいれて、上がった湯気が水滴になって落ちて…』と説明してくださったり、物事のつなぎ目、人間の感情のつなぎ目をしっかりと演出してくださるので、現場で安心できました」。

もうひとつ、塚原作品の特徴であり、ほかの監督と大きく異なると言われているのが、俳優がセリフを同時に話してしまったり、エキストラの話し声や足音が被ってしまうなど、ほかの作品であればリテイクになるような現場での偶然の事象を、気にせずにOKテイクとして受け入れてしまう部分。

「普通はセリフが被ったり、ほかの人のセリフを食ったりしてしまったら、OKは出ないんですけど、塚原さんはよりリアルなやりとりを求めてるんですよね。だから『普通は(会話は)重なるでしょ?』と。普通はどうだろうか? というのを求めてらっしゃるのかな。もちろん、セリフ通りに言ってほしい監督さん、アドリブを好まれない監督さんもいらっしゃるけど、塚原さんはアドリブも加えるし、キャラクターを立たせるためにどうしたらいいかを考えてくださるんです。セリフひとつとっても『こういう言い方はどうか?』とキャラクターが持っている幅を広げてくださるんです。イメージの枠から外れる演出をされる監督だなと思いました」。


20代半ば、役柄&作品に対する気持ちも変化
冒頭の年齢の話に戻ると、20代の折り返しを過ぎて、求められる役柄や立場の変化を有村さん自身も強く感じているという。数年前まで学園もので学生役を演じていたが、今年に入って10月より放送の主演ドラマ『中学聖日記』では教師役、そして11月公開の映画『かぞくいろ-RAILAYS わたしたちの出発-』では、血の繋がらない息子を抱えるシングルマザーを演じるなど、役の幅が大きく広がっている。

「もう25歳ですし、そうだよなぁって思うんですけど、やっぱり“初めて”があるというのは嬉しいことなので、新鮮な気持ちで初めての役柄を楽しんでます」

朝ドラ『ひよっこ』でおよそ1年にわたってじっくりとひとつの作品に主演として携わった経験も大きいのだろう女優としての“視野”にも変化が生まれている。


「より作品に対する思いが強くなってるというのはあると思います。以前は自分のことでとにかく精いっぱいで、目の前のことをやらないとという意識ばかりで、作品全体のことはあまり考える余裕もなかったんですけど、ここ2年くらいかな? 作品のことも少しずつ考えらえるようになって、携わるスタッフが報われるような作品にしたいという気持ちがわいてきたり、変化は感じています」。

20歳の大ブレイクから、途切れることなく常に作品に、役柄に身を投じてきた。「20代後半は、もう少し落ち着いて仕事ができればいいですが…(笑)」と漏らしつつも、芝居に対する熱い思いは何も変わらない。

「やっぱり、お芝居が好きなんですよね、うまいか下手かは自分ではわからないことですけど、好きで始めて、誰もができるわけではない経験をたくさんさせていただいて…だからこそ、これからも楽しんでお芝居ができたらと思います」

この先、まだまだ、見たことのない表情を見せてくれそうだ。

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