『ザ・ベストテン』600回の平均視聴率は20%越え!司会者が語る「伝説のおばけ番組」

9月26日(日)16時0分 週刊女性PRIME

松下さんが見せてくれた『ザ・ベストテン』当時の写真

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 最高視聴率41.9%——。

 1978年1月から1989年9月まで、およそ600回の放送の平均視聴率はなんと20%越え! 日本の音楽番組……いや、テレビ番組史上に金字塔を打ち立てたであろう『ザ・ベストテン』。「思い出に残っている音楽番組は?」と問われて、この名番組を挙げる人も、きっと多いはず。

「当時は、アナウンス部もスポーツ局も僕がベストテンをやることに大反対でしたが、1時間の生番組はスポーツの実況と同じようなものですし、やってみることに決めたんです。何よりも黒柳徹子さんとご一緒できたのは財産になりました。彼女の頭の回転スピードについていくことが仕事でしたね」

■『ザ・ベストテン』の裏話



 そう振り返るのは、黒柳徹子さんとともに、1986年10月から約2年半にわたり司会を務めた元TBSアナウンサー・松下賢次さん。生放送ゆえにベストテンの中継はハプニングが多く、スリリングだったと明かす。

「とにかく忙しい番組。1時間の生放送の間に、スタジオだけでなく中継もある。一人(一組)4〜5分×10曲を、絶対に1時間に収めなければいけない。番組冒頭、僕が『こんばんは松下賢次です』とあいさつした途端に、フロアディレクターから巻きのサインがでるような番組。早すぎるだろって(笑)」(松下さん、以下同)

 伝説と言われる、“松田聖子が飛行機のタラップを降りて歌う回”では、こんな裏話があったそうだ。

「飛行機が飛ばなかったら? 飛行機が遅延したら? 早めに到着したら? あらゆる事態を想定し、100通りの演出プランを考えたと聞きます。松田聖子さんの着陸いかんによって、前後に登場するアーティストのタイムスケジュールも変わってしまう……たった5分のズレが命取りになってしまう。

 毎週、そんな生放送をしていたものですから、タイムキープをしなければいけない僕やフロアディレクターはもうヘトヘトになる。ところが、その様子を見て黒柳さんはケタケタ笑っている!(笑)

 黒柳さんは生放送に慣れているし、テレビの黎明期を知っている方。ですから、普通にやっても面白くない、アクシデントこそが面白いと楽しんじゃう人なんですね」

 やってみたら本当にスポーツの現場に似ていた——。スポーツで養った経験がベストテンの司会でいきたと笑う。

「スポーツは、実況の隣に解説者がいる。その解説者に何を語らせるかが、実況をするアナウンサーの腕の見せ所。黒柳さんにどう楽しくしゃべってもらうか……まさに黒柳さんが解説者、僕が実況アナという役割で、すんなりいけたんです」



 その上で、前任者である久米宏さんへのリスペクトも口にする。

■久米宏のアナウンス力に驚愕





「黒柳さんはもちろんですが、久米さんの10秒の中に入れる言葉の密度、情報の密度ってすさまじいものがある。

 先述したように信じられないくらいタイトなスケジュールですから、久米さんも早口になる。

 コマーシャルに行く前の残りの5秒で、何を伝えるのか、どんなオチを付けるのか、その判断力がすごい。まるでフェンシングの攻防みたいな感じですよね。どこまで僕ができていたかはわからないけど、結果的にものすごくアナウンサーとして鍛えられた2年半だった」

 ちなみに、黒柳さんとの間で決まりのようなものはあったのですか? と聞くと、「特にはなかったかな」と前置きした上で、「黒柳さんから言われたのは、『松下さんはものすごく態度が大きい。でも、それが逆にやりやすかった』って」と豪快に笑う。さすがは、“世界の松下”だ。

「たしかに、調子に乗りやすいところはあったと思う。一度、田原俊彦さんが玉乗りをしながら歌うという回があったんだけど、僕にもできそうだなって思ったから、『簡単なもんだねぇ』って言っちゃったんですよ。そしたら、『松下さんもやってみます?』って言われて、やってみたの。そしたら、見事に転んで大変なことになった(苦笑)」

 さらには、玉置浩二を怒らせてしまった(!!)こともあったと打ちあける。

「別のスタジオで演奏する安全地帯を紹介する回だったんだけど、いつもの調子で紹介したら、メインのスタジオではないため“ランキングボード”がない! 別スタジオであることを思い出したときには、時すでに遅し。ボードがあるていで紹介しているから、タイミングが合わず安全地帯との掛け合いが噛み合わない。

 生放送なのにやり直しすることになり、なんとも締まらない曲紹介になってしまった。歌ってくれたものの、玉置さんは演奏が終わると怒ってすぐに帰ってしまって。申し訳ないことをしたと反省しきりです」

 たしかにスリリングすぎる! 生放送ならではのドキドキ感があったからこそ、『ザ・ベストテン』は高視聴率を連発することができた。だが、それだけではないと松下さんは続ける。

「『ザ・ベストテン』は音楽番組でありながら、情報番組でもありました。時代性やニ

ュース性を織り交ぜながら、どうしてその曲が流行っているのか——そういったことを加味しながら、スタッフも番組を作っていた」



『ザ・ベストテン』は、レコード売り上げ、有線放送リクエスト、ラジオ放送のリクエ

ストチャート、番組に寄せられたはがきのリクエストの合計ポイントによって、毎週独自のトップ10(=ベスト10)を選定していた。

■生みの親と呼ばれるプロデューサーの意思



 視聴者が求めるリアルなランキングを届ける情報性……言わば、“視聴者ファースト”を徹底したことが、人気の要因だと語る。

 ランキングだからこそ、選ばれたアーティストを追うため、地方のライブ会場まで押しかける。“追いかけます、お出かけならばどこまでも”を売りにした中継は、『ザ・ベストテン』の名物の一つになったほどだ。

「ベストテンは少数精鋭で作っていた。どんな中継先でも、基本的にディレクターは一人。そのディレクターが現地のスタッフ、つまり全国各地のTBS系26局ネットのスタッフとタッグを組んで、アーティストを追いかけていた。TBS系列のネットワークを駆使して、毎週生放送でお伝えしていたわけですから、構造的には情報番組や報道番組と同じなんです」

 ときには、冬期休暇中の黒柳さんを追うためにニューヨークへと飛んだ。「TBS の音楽番組で衛星中継を最初に行ったのはベストテン」と松下さんが語るように、『ザ・ベストテン』は視聴者のための流汗淋漓(りゅうかんりんり)をいとわない番組だった。



 そういった姿勢は、『ザ・ベストテン』の生みの親と呼ばれるプロデューサー、故・山田修爾さんの存在が大きかったという。

「記念すべき第一回目放送の際、当時絶大な人気を誇っていた山口百恵さんが、集計の結果、トップ10外になりました。『山口百恵を登場させない新番組の歌番組があるか』と局内でも大きな議論を呼んだと聞きます。

 しかし、山田さんはインチキはしないと譲らなかった。また、山田さんはベストテンを始める際にゴルフを辞めたと仰っていた。芸能プロダクションに誘われてゴルフをすると私情が入ってしまったり、特別な関係になってしまう……あるいはそういう噂を立てられるからとゴルフを断った。

 黒柳さんは、そういった番組の姿勢や方針を気に入って司会を引き受けてくださった」

 それゆえ、「口パクの類も一切なかった!」と松下さんは断言する。



「アイドルの皆さんも真剣でした。実は、番組を担当する前まではチャラチャラした若者なんじゃないかと邪推していた(笑)。ところが、接するうちに、真剣さが伝わってきて、スポーツ選手のようなひたむきさを感じるようになりました」

 忖度なしの姿勢が視聴者に刺さった。テレビに勢いがあったとは言え、最高視聴率41.9%には理由があるのだ。

 '80年代後半になると、テレビ出演に消極的なアーティストが増え、それとともにランクインしても出演を辞退するケースが増えた。「ベストテンなのに5曲くらいしか歌われない収録が目立つようになり、番組も勢いを失っていきました」。松下さん自身も、岐路に立った。



「降板したいと、僭越ながら申し伝えました。スポーツアナウンサーとして順調に歩んでいれば、'88年のソウルオリンピックは、僕がオリンピックアナウンサーとして派遣される予定でした。

 しかし、ベストテンの司会をしていたためできなかった。『'92年のバルセロナは松下、お前の番だぞ』とスポーツ局の上司に言われていたこともあり、どうしてもバルセロナは自らの手で伝えたかったんですね。

 スポーツから始まったアナウンサー人生ですから、元の道に戻ろうと。でも、もしあのときスポーツをやらないで、情報番組やバラエティ番組のアナウンサーとして自立できていたら、今頃ものすごく稼ぐフリーアナウンサーになったのかもしれない!」

 すかさず「冗談だよ!」と笑い飛ばす。

「久米さんの後を継いで、あの『ザ・ベストテン』、しかも黒柳さんと一緒に司会をさせていただいた。こんな贅沢な経験をしたアナウンサーはそうそういない。芸の幅を広げていただいた番組。財産です」

PROFILE●松下賢次(まつした・けんじ)●1953年東京都出身。慶應義塾大学卒業後、TBSに入社。35年間アナウンス部に所属し、野球、ゴルフ、サッカー、陸上などスポーツ実況を中心に担当。『ザ・ベストテン』など音楽番組の司会も行う。定年後はフリーとなり、イベントの司会や講演を行う。

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