『アップグレード』清水崇が絶賛、ジェイソン・ブラムと念願タッグが叶わなかった理由とは?

2019年9月28日(土)20時35分 映画ランドNEWS

映画『アップグレード』のトークイベントが26日、都内・アキバシアターにて行われ、清水崇(映画監督)、大森望(翻訳家・書評家)が登壇した。



本作は、『ゲット・アウト』シリーズのプロデューサー ジェイソン・ブラムと、『ソウ』『インシディアス 序章』のリー・ワネルがタッグを組んだSFアクション。近未来、愛する妻と平穏な日々を送っていた男グレイは、突然現れた謎の組織により幸せを奪われる。妻は殺され、自身は全身麻痺となってしまう。実験的に巨大企業の科学者によってグレイに埋め込まれたAI(人工知能)チップ、“彼”の名前は「STEM」。AIの力で全身麻痺を克服し、人間を超越した身体能力を手に入れたグレイは脳内で会話する相棒「STEM」とともに、妻を殺害した謎の組織に復讐を誓う。


AIの力で人間を超越した身体能力を手に入れる男グレイ・トレイスを、『プロメテウス』『スパイダーマン:ホームカミング』のローガン・マーシャル=グリーンが演じる。



頭から上は常人と変わらないにも関わらず、AI「STEM」に身をゆだねることで機械的かつ斬新なアクションが繰り広げられる前人未到のハイ・ディメンション・SFアクション『アップグレード』。公開を記念して、映画監督の清水崇と翻訳家・書評家の大森望を招いたスペシャルトークイベントを実施。


試写会で2回も観たというほど本作に惚れ込んだ清水監督は「単純にシンプルに面白かった。古き良き80年代が舞台のストレンジャー・シングスとかブームになっていますけど、ブームになっている割にそうじゃなくね?っていう感じもあるんです。実際に80年代に青春を過ごしてきたので、『アップグレード』はその当時の匂いがするんです。ターミネーターやロボコップのような」とその理由を熱く話した。


大森は「AIをテーマにしたものってまたここ最近凄く流行ってて。ターミネーター以降ですけど、AIの反乱ものっていう作品はたくさんあるのでまたそのパターンだろうなと思ってたら、新しいアイディアがいっぱい入ってて、体の中にAIがいて自分の体の制御が乗っ取られるっていうアイディアがとても面白くて、それがアクションの見せ方と結びつくところが肝かなと思います。普通の人間にはできない気持ち悪い動きをかっこよく見せる映画」と分析。


さらに「今日的な問題で主人公が全身まひになってどうするかっていう時に、実際に研究して脳の意志の力で体をある程度動かしたりコミュニケーションを取れるようにするというのは現実に開発されている。そしてその少し先を行っている映画」と説明を加えた。


気に入った描写について大森は「主人公のグレイが冒頭でファイヤーバード=不死鳥という名の車を修理しているんだけれど、今度は事故から自分が不死鳥のごとく蘇る話になるっていうのが描かれている」と指摘し会場の観客を驚かせた。


またグレイにAIのSTEMを埋め込む巨大企業の科学者エロンについては、AI(人工知能)技術を駆使してテスラ車両の自動運転化を進め、脳とコンピュータを接続させる事業を手掛けるスタートアップ企業を設立した「イーロン・マスクがモデルだろう」と推測した。


ハリウッド作品としては制作費が約5億円というかなりミニマムな予算で制作されたことを聞いた清水監督は「凄いです、巧いんですよ」と予算の少なさを感じさせない演出を称賛。大森も「ジェームズ・キャメロンはお金がないからいかにしてアイディアと自分の得意なSFの部分と話の面白さで作ったのがターミネーター、それに似ている」と過去の名作と比べた。俳優に着けたカメラの映像などを駆使した斬新なアクションシーンも見どころだが、大森は「アクションに新しい次元の動きを付け加えた感じ」、清水監督も「凄いアクションなのに体が操られてるから顔が戸惑ってて、すごい演技だなと思った」と印象を語った。


リー・ワネル監督がターミネーターやロボコップを参考に本作の製作に取り組んだことについて「両作品の要素を持っているんだけれど、これはサイボーグ化されてもチップ自体が自律的な意志を持っているのが面白い」と大森。主人公の相棒となる人工知能の“STEM”については、清水監督がこの映画で1番ツッコミたい部分らしく「ほんとにクマムシみたいな造形だし、どうしてブチっと潰さなかったんだ!でもそこが好き」と笑いを誘った。


AIが人間の能力を上回ってしまうシンギュラリティ(技術的特異点)という概念について…2045年問題とも言われているが、これについて大森は「人間が追い付けないAIはすでにできている。2045年問題はAIとAIが会話しだして人間が到底追いつけないところに行ってしまい、滅ぼされてしまうんじゃないかと危惧される一面もある。いろんな映画で描かれてきたし、SFの元祖も人類が作ったものに滅ぼされてしまうこと。でもAIがそうする必要性は無いし、もちろん人間の立場ではそう考えてしまう」と見解。


今やジャンル映画界に欠かせない存在の「ブラムハウスプロダクションズ」を立ち上げた“恐怖の工場長”ジェイソン・ブラムに、清水監督は会ったことがあるらしく「5年くらい前に日本の原作のものでプレゼンしに彼の自宅に行ったんだけど、彼も乗り気でやろうということになった」そうだが、「彼がこれでやろうと提示した予算ではできない」と念願のタッグは叶わなかったそう。終始笑いの絶えないトークイベントとなった。



映画『アップグレード』は10月11日(金)より渋谷シネクイント、新宿シネマカリテにて公開


(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS


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