満蒙の引揚者が入植した開拓地に眞子内親王をお連れした理由

9月28日(金)7時0分 NEWSポストセブン

今年6月、福島での全国植樹祭にて 共同通信社

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 被災者を見舞う時も、戦没者を慰霊する旅でも、今上陛下の傍らには常に美智子皇后がいる。折々に発せられた、そのお言葉の意味を皇室ジャーナリストの山下晋司氏が読み解く。


 * * *

 8月15日、今年も両陛下は全国戦没者追悼式にご臨席され、平和を祈念されました。お言葉で、天皇陛下は戦争の過ちを繰り返さないよう過去の歴史に学ぶ大切さをおっしゃっています。皇后陛下も同じお気持ちであることが次のお言葉に表れています。


《経験の継承ということについては、戦争のことに限らず、だれもが自分の経験を身近な人に伝え、また、家族や社会にとって大切と思われる記憶についても、これを次世代に譲り渡していくことが大事だと考えています》(平成17年お誕生日)


 来年5月、皇室の中心は戦後生まれになります。昭和8年生まれの天皇陛下が物心つく頃から小学6年生になるまで、日本はずっと戦争をしており、陛下は身をもって戦争を体験された。1歳下の皇后陛下も、空襲で父方の叔父を亡くす経験をされている。


 両陛下にとって戦争は自ら体験した現実ですが、戦後生まれの世代はそれを体験することも、目にすることもできません。


 時代とともに当時の話が薄れていくことは仕方がないとしても、皇后陛下は、戦争を知る世代の経験や記憶を、次世代に継承したいと願われていると思います。



 だからこそ、機会があるごとに何度も、過去の歴史を学ぶ大切さをおっしゃっている。満蒙開拓の引揚者が入植した千振開拓地(栃木県那須町)に当時中学2年だった孫の眞子内親王殿下をお連れした理由もそこにあります。戦後、引揚者が日本の復興のために未開の地でどれだけ苦労されてきたか。それも結局は戦争が生んだ悲劇である。実際にその場所へ赴き、人と会い、話を聞く大切さをお伝えしたかったのでしょう。


 たとえ戦争を知らなくても、経験された人と気持ちがひとつになれれば、その歴史は次の世代につながる、ということだと思います。


【PROFILE】山下晋司●1956年大阪府生まれ。関西大学卒業。23年間の宮内庁勤務の後、皇室ジャーナリストとして『皇室手帖』の編集長などを務める。BSジャパン『皇室の窓スペシャル』の監修を担当。著書に『いま知っておきたい天皇と皇室』(河出書房新社)、監修書に『美智子さま100の言葉』『美智子さま 永遠に語り継ぎたい慈愛の言葉』(宝島社)など。


●取材・構成/祓川学


※SAPIO2018年9・10月号

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