安倍首相 北の拉致再調査甘言に乗ったのは功名心逸ったため

9月29日(月)7時0分 NEWSポストセブン

 安倍晋三・首相がライフワークに位置づけるのが北朝鮮による拉致問題解決であり、国民にもこの問題に精通したリーダーであるとのイメージが定着している。しかし、安倍首相が描いた「9月電撃訪朝」はうたかたの夢と消えた。


「夏の終わりから秋の初めにかけて」


 日朝局長級協議で北朝鮮が拉致被害者などの特別調査委員会を立ち上げることで合意し、安倍首相が経済制裁の一部解除を閣議決定した今年7月時点で第1次調査報告(中間報告)の時期がそう決まった。マスコミや永田町には「9月の中旬にはリストが来る」と、まことしやかに情報がリークされた。


 ところが、期待は見事に裏切られた。菅義偉・官房長官は、その「9月中旬」が期限を迎えた9月19日の記者会見で、こう発表した。


「今回、北朝鮮側から『現時点で、調査の初期的段階を超えた説明を行なうことはできない』という連絡があった。したがって、調査結果について、最初の通報時期は現時点では未定である」


 だが、真相は北が報告を引き延ばしてきたわけではない。本誌が官邸中枢から得た情報によると、この夏の終わりから秋の初めにかけて、外務省の伊原純一・アジア大洋州局長は少なくとも3回、北と秘密交渉を行なっている。


 最初の協議で北朝鮮側は「第1次調査報告」の概要を伝えてきた。


「北の回答は、『特別調査委員会のすべての調査結果が出るには1年程度かかる』『中間報告の正式な伝達は9月18日にしたい。その際、日本側の担当者が訪朝すれば手続きが早い』そして『現時点での拉致被害者の生存者はゼロ、よって中間報告での回答にも拉致被害者は含まれない』というものだった」(外務省関係者)


 8〜9月にかけての日朝の交渉は高度な外交的駆け引きでもなんでもなく、安倍首相の見通しが最初から甘すぎただけの話だ。


 拉致は北朝鮮による国家犯罪であり、金正日という最高権力者の命令で、国家機関がミッションとして日本人を拉致した。目的は工作員の教育係や、よど号乗っ取り犯の花嫁候補などにするためだった。そのため、拉致被害者は現地で当局の厳重な監視下に置かれ、行動を制約されている。そのことは帰国した5人の証言からも明らかだ。


 つまり、北朝鮮は「拉致被害者の安否」など、改めて“調査”するまでもなく、最初から把握している。


 安倍首相自身、自民党幹事長時代、「拉致をしたのは彼らで、行方を知っている。知らないふりをして一緒に調査するというのは、時間延ばし以外の何物でもない。拉致問題は金総書記がすべてを話せば一秒で解決する話だ」(日本経済新聞、2004年5月22日付)と、正しく認識していたではないか。


 それを承知でなお、安倍首相が北朝鮮のいうままに「特別調査委員会」設置という茶番に乗り、再調査に国民の期待を ったのは、「拉致被害者2〜3人を帰国させる用意がある」という北の甘言に乗せられ、功名心に逸(はや)ったからだ。自らの言にあてはめれば、「時間延ばし」に協力したということになる。


※週刊ポスト2014年10月10日号

NEWSポストセブン

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