『サウンド・オブ・メタル』監督からのメッセージ「”単に観たもの”としてではなく、その中で”生きたもの”として記憶に残るように」

2021年10月1日(金)12時8分 映画ランドNEWS

本日より劇場公開された映画『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』より、海外から届いたダリウス・マーダー監督のメッセージと各界著名人から絶賛のコメントが到着した。


『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』 (C)2020 Sound Metal, LLC. All Rights Reserved.

本年度アカデミー賞主要6部門ノミネート、音響賞・編集賞を受賞した本作。ドラマーとして生きる主人公ルーベンに突然訪れる難聴という状態を、あたかも彼のおかれた 状況に観客も引き込まれ、擬似体験している錯覚を与えるような作品だ。


今回劇場公開されるバージョンは全劇場でバリアフリー字幕となっている。ダリウス・マーダー監督および製作者は、本作の持つメッセージ性を考慮し、誰でも隔たりなく映画館で本作を楽しめるようにしたいという意図から、世界各地の映画祭や全世界の劇場公開については”バリアフリー字幕版”での公開と決めた。宇野維正、宮崎大祐、長門洋平らのコメントも到着している。



ダリウス・マーダー監督からのメッセージ




私は何年もかけて本作の、音楽、ストーリー、登場人物の背景など、映画のベースとなることについて深く調査してきました。その中には、60代で抗生物質を服用した後に耳が聞こえなくなった私の祖母の経験も含まれています。彼女(ドロシー・マーダー)は、NY在住のユダヤ人でレズビアンでもあり、写真家そして映画ファンでもあります。アルコール依存症の孤児として生きた彼女は、聴覚障害者とろう者という2つの文化の間でどちらにもつながる手段がないまま、さらに追い詰められたという経験を持ちます。彼女は、映画にバリアフリー字幕をつけるよう嘆願する活動に時間を費やしました。私はこの映画を彼女の思い出に捧げます。


私にとって重要だったのは、この映画が”本物”であり、”直感的なアプローチ”であること、そしてこの物語が、ろう者、難聴者、そして聴覚障害者を親にもつ自身は聞こえる子どもなど、多くの人々が有する文化や生き方の「入り口」となることでした。主演リズ・アーメッドは、本物の聴覚障害を体験するために、様々な強さのホワイトノイズ(換気扇やテレビの砂嵐の音のように、すべての周波数において強さが一定になるノイズのこと)を発するカスタムメイドの装置を耳に装着し、自分の声さえも聞こえないという、進行性の聴覚障害に最も近い状態を体験することができました。


映画とは、ある程度は”まやかし”だと思われています。しかし、この作品について言えば、私自身、限りない方法でこの映画の中を生きましたし、この映画に関わったすべての人もこの映画の中で生きてもらいました。『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』は、この映画を観ることが、観客にとって”単に観たもの”としてではなく、その中で”生きたもの”として記憶に残るような直感的な体験をできるように努めた作品です。


宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)




映画館でしか聞こえてこない「音」がある。 映画館でしかなることができない「独り」の境地がある。 近年、この作品ほどそれを強烈に体験させてくれた作品はない。


宮崎大祐(映画監督)




言葉で埋め尽くされた世界で何も聞こえず何も見えなくなってしまったわたしたちはこの映画を全身で知覚するところからやり直さねばならない。そこにはいままで耳を傾けることも目をこらすこともなかったまったく新しい世界がたしかに存在しているはずだ。


長門洋平(映画音楽研究)




スクリーンの前で私たちが聞く音は、劇空間のなかの どこで、誰(何)によって聞かれているものなのか。この稀有な作品をとおして、普段私たちが普通に聞いている映画の音が、「普通」に聞かれるとはどういうことなのかという問いを鋭く突きつけられた気がしました。あと20回は見たい。


映画『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』はヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開中


(C)2020 Sound Metal, LLC. All Rights Reserved.


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