篠田三郎 ウルトラマンタロウを子供のように楽しんで演じた

10月4日(木)16時0分 NEWSポストセブン

ウルトラマンタロウでは東光太郎を演じた

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、映画でデビューした俳優・篠田三郎が、テレビドラマに出るようになり、ウルトラマンタロウに変身する主人公を演じた思い出について語った言葉をお届けする。


 * * *

 一九七一年の大映の倒産と前後して、篠田三郎はTBSのテレビドラマに出演するようになる。『シルバー仮面』では主人公チームの一人を演じた。


「青春映画の宣伝で関根恵子さんがテレビに出た時に僕の出演場面が流れて、それを『ウルトラマン』の橋本洋二プロデューサーの奥様が見ていた。その流れで橋本さんに見出されたんだそうです。それで『ガッツジュン』や『熱血猿飛佐助』、『シルバー仮面』に出ました。当時は出られればなんでも嬉しかった。ましてテレビは反響も大きかったですから」


 七二年には『シルバー仮面』を撮った実相寺昭雄監督の映画『哥』に出演している。


「自分はあくまで素材であって、実相寺さんが何を考えているのか、深い部分までは理解できませんでした。それでも、運命に従って旧家を守っていくというストイックな役でしたので、監督の指導に応えようと必死でやりました。


 岸田森さん、田村亮さん、東野英心さん、内田良平さん、共演者は皆さん楽しんで演じていました。ただ、自分はまだそういう風に映画作りを楽しむ余裕はなかったですね」


 七三年には『ウルトラマン』シリーズ第五作『ウルトラマンタロウ』で、タロウに変身する主人公・東光太郎を演じた。



「そもそも『ウルトラマン』がそんなに人気があることを知らなかったんですよ。特別に関心もなくて。ただ、先ほども言いましたようにテレビに出て仕事できることが嬉しかったので、もう夢中でやりました。


 一緒に出ている人の中で印象的だったのは、新劇出身の津村鷹志さんです。お父さんが映画評論家で有名だった津村秀夫さんで、その影響があったのでしょうか、台本を見ると役作りについていろいろと書きこんであるんですよ。どう怪獣に向き合っているか、とか。それに比べて、私といえばタロウを子供のように夢中になって楽しんで演じているばかりでしたね。その幼児性がタロウには合っていたのかもしれません」


『ウルトラマンタロウ』と並行して、「木下恵介・人間の歌シリーズ」の『愛よ、いそげ』(TBS)にも出演した。


「四台のカメラを同時に回してワンシーンを撮影するスタジオドラマでした。細かい演技指導があり、長回しのシーンも多いので、いつもプレッシャーを感じていました。


 忘れられないのは、手紙を読むシーンです。緊張してしまっているからか、手紙を持つ手の震えが止まらない。『何とか止めなければ』と思えば思うほど、震えてしまうんですね。しばらくトラウマになりました。そんな私に、父親役で出ていた高橋幸治さんが優しく声をかけて下さったんです。


『震えることはちっとも恥ずかしいことじゃない。震えるということは、それだけ君の心が動いているということなんだ。俺だって、時々震えてるよ』と仰って頂いたんです。


 その言葉を聞いてからは、不思議と震えることがなくなっていきました」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/渡辺利博


※週刊ポスト2018年10月12・19日号

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