夫の墓を世話してくれた石材店の営業マンとの関係に悩む。男友達を作るのは難しい

10月7日(木)12時0分 婦人公論.jp


イラスト:飛田冬子

境遇や年齢が似ている。かといって、共感や親愛の情を示すと、決まって別の感情を持ち出してくるのだ──。静岡県で介護職に従事する都築祥子さん(仮名・64歳)は、家族の墓を世話してくれた石材店の営業マンとメル友としていい関係を保っていたが、彼のメールの内容に変化が表れて…

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墓掃除を手伝ってくれるマメなサービス


夫が病死した翌年、お墓を作る話が持ち上がり、私は展示場へ見学に出かけた。その時はお墓を決めきれなかったが、石材店の営業のAさんが駅まで車で送ってくれるという。聞けばAさんの担当地区はわが家のエリア。石の見積もりをお願いし、子どもたちと相談した結果、この石材店に頼むことになった。

当時の私は仕事をしつつ、義理の両親の介護もあり、大忙し。Aさんは、わが家へ御用聞きさながらにやって来ては、墓作りの相談に応じてくれた。墓石選びや文字のデザインなど、わが家に合ったものを誠実に提案してくれる。とてもありがたかった。

建立後も、新盆やお彼岸の折に「お墓掃除に行きましょう」と連絡をくれ、掃除を手伝ってくれて大助かり。私が出向けない時に「持ち場のお墓はみな責任がありますんで」と、墓のメンテナンスをしてくれたこともあった。その分サービス料を請求するわけでもない。

義父が2年後、義母が5年後に亡くなった時も、当然のごとく私はAさんに連絡を取って、お墓を世話してもらうことに。義母の時には以前の石材店を辞め、墓のコーディネートをする会社を一人で経営していた。ならばかえってこちらの希望を言いやすい。

向こうにとってはビジネスだが、こちらのお願いは家族のプライベートなことである。私はメールについつい自分の話も盛り込んでしまう。Aさんの返信メールの文面はこちらの事情に踏み込まないながらも、気づかいを感じさせるものだった。

食事やカラオケに行くようになり…


学生時代から女友達には恵まれてきたため、数年前までは、この調子で男友達も作れる気分でいた。だが男友達を作るのは難しいものだ。知り合ってすぐは気軽なお喋りを楽しんでいるように見えても、3、4回会ううち、次の段階を望んでくる。それが男たるものなのか。

気配を感じた途端、私は「この人も友達のままでは不満なのか」とあきらめ、ご縁はそこまで。そんな経験が何度かある。

Aさんは、その中に入る人ではなかった。家族の墓の世話を3度頼み、かれこれ5年以上連絡を取り合っている。だがお墓の相談に乗ってくれる時、ビジネスライクな感じは最初からしなかった。

Aさんへのメールの一文に近況を入れることが日常化し、電話でも自分の話をする機会が増えていく。当時接客業に転職したばかりの私は、人間関係に悩んでいることなども話すようになっていた。くだけたお喋りが増えてくると、お互い職場の愚痴を言い合うことも多くなり、Aさんも仕事で悩んでいたことを知る。

時には食事やカラオケなどに誘ったり誘われたりと出かけるようになった。カラオケに行くと、Aさんのセレクトする歌はだいたい私も知っていて、同い年であることがわかり、ますます意気投合するのだ。

私にとって気のおけない「男友達」。そう思い、この絆を私は大切にしたかった。

LINEのフレーズがどんどん親密に


ところが、やっぱりである。義母の墓の建立が終わった頃から「僕たちは相性がいいね」などと、親密さをアピールするようなLINEが続き、私は距離をおこうかと思い始めた。そしてついに「つきあってほしい」という内容が送られてきたのである。今の気軽な関係ではなく、その先に発展した男女の関係を彼は望んでいるのだ。

今までの関係を崩したくない。それが本音だ。私は迷いに迷った。だがこの申し出を断ると、彼は私から離れてしまうだろう。今となってはそれはとてもつらいことだった。男の人は親密になると、どうして一線を越えたがるのだろう。そして、なぜ恋人か他人かの二者択一にこだわるのか。占いの本を眺めては考え込む日々が続いた。

夫を亡くしてからは自分一人で決断することが増え、そのたびにとりあえずは進んでみるという前向きな姿勢を貫いている。そのやり方でいけば、関係性を変えてでも彼とつながっていく道を選んでもいいかもしれない。縁を切るのは、うまくいかなくなってからでも遅くないだろう。私は彼に賭けてみることにした。

結局おつきあいに移行して3年、Aさんとの関係は続いている。自分で決めたことだから、後悔はしていない。だが、あのままいい男友達として続けられたらそれだけでよかったのになと、時々思う。

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