『ハナレイ・ベイ』監督、村上春樹の名作を映画へと昇華させた覚悟を告白 “ハルキスト”も絶賛

2018年10月12日(金)21時47分 映画ランドNEWS

映画『ハナレイ・ベイ』“ハルキスト試写会”が12日、都内・神楽座にて行われ、松永大司(映画『ハナレイ・ベイ』監督)、ナカムラクニオ(「6次元」店主、『村上春樹語辞典』著者)が出席した。


(左から)ナカムラクニオ、松永大司監督

2005年に発表され単行本、文庫あわせ累計70万部を超えるベストセラーとなっている作家・村上春樹の『東京奇譚集』(新潮文庫刊)の一篇である「ハナレイ・ベイ」を映画化した今作。サーフィンに明け暮れる思春期の息子と、シングルマザーで彼を育ててきた母親サチの姿を描き出す。


ハワイのハナレイ・ベイで一人息子をサーフィン中の事故で亡くした主人公サチ役に吉田羊、サチの息子・タカシ役に佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、サチがハナレイ・ベイで出会う日本人サーファー・高橋役に村上虹郎が扮する。監督を『トイレのピエタ』で知られる松永大司が務める。


(左から)ナカムラクニオ、松永大司監督

ハルキストの聖地であるブックカフェ「六次元」の店主であり、『村上春樹語辞典』(誠文堂新光社)の著者として自身も生粋のハルキストであるナカムラクニオ。


数ある村上文学の中から「なぜ“ハナレイ・ベイ”を選ばれたのですか?」と聞くと、松永監督は「『トニー滝谷』の市川準さんが初め“ハナレイ・ベイ”を映画化しようとしていました。志半ばに、この世を去られて…企画として宙ぶらりんの状態だったんです。シナリオも出来ておらず、監督も不在だったため何年か経ち、僕の『トイレのピエタ』と作品テーマが近いのではないかということで…こうして今に至ります」と映画化の経緯を説明する。


松永大司監督

村上春樹の原作に対し、「映画にしかできないこと」を聞かれた松永監督は、「読めば読むほど、すごく良い話だと思いました。短編だからこそ、無駄が無さ過ぎて…原作と向き合えば向き合うほど、身動きができなくなるくらい。知れば知るほど“すごさ”を感じました」と語る。


続けて、「村上さんの作品の面白さは、皆さんの前で恐縮ですが“語り口調が独特”だなと思いました。それを外すのは怖かったです。実際に役者がそのまま喋ると不自然なので、本質的なところは残しつつ…言葉にできないものを映像・音に落とし込んで“体感する映画”を心がけました」と苦悩を明かす。


改めて「2ヶ月かけてシナリオを直していました。その時に“自分のものとして撮れる”と思ったんです。原作と向き合っていると思っても、その後ろには“見えないもの”を見ていました。自信を持ってやるしかないと思う中で、原作に対しての僕が感じた想い・リスペクトを持ったまま、勇気を持って一つの映画として“中途半端なものにしない”と覚悟をしました。原作をリスペクトするのであれば、映画を撮る必要はない。小説として完結しているから。映画化するために書いたものではない。僕が拾ったものを、別のものとして生み出すことのできる“チャレンジング”がない限り、原作というものにトライしてはいけないような気がしているんです」と熱い想いを告白した。


トークでは、観客とのQ&Aも設けられ、「人の気持ちを考えさせられる作品になった」「原作のセリフをどのように描くのか興味があった」「どうしても“原作の面影”を追ってしまった自分が恥ずかしい」などと、作品を観賞したばかりのハルキストから声が集まり、さらには「サチの“あるセリフ”が印象的で新鮮でした。監督の中で何か葛藤があったのでは?」といった、作品の内容に深く触れた質問もあった。


映画ランドNEWSでは、吉田羊×佐野玲於×村上虹郎ら俳優陣が魅せる迫真の演技、原作:村上春樹×監督:松永大司が奏でるハーモニーの魅力に迫る特集(https://eigaland.com/topics/?p=87943)も掲載している。



映画『ハナレイ・ベイ』10月19日(金)全国ロードショー


©2018『ハナレイ・ベイ』製作委員会


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