『まだ結婚できない男』の阿部寛が大絶賛されたのはなぜか

10月12日(土)16時0分 NEWSポストセブン

偏屈極まりない男を演じる阿部寛

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 時代は変化する。ヒットの法則はあれど、求められる役割が変わってくるのはビジネスマンも役者も同じ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


 * * *

 2006年から13年が経ち『結婚できない男』の続編『まだ結婚できない男』(フジテレビ系 火曜日午後9時)が始まりました。さっそく話題を振りまいています。Twitterのトレンドランキングでは世界1位になる盛り上がり。初回視聴率は関西15.7%、関東11.5%と見事なロケットスタート。


『まだ結婚できない男』の主人公は……偏屈で独善的で皮肉屋の建築家・桑野信介。阿部寛が演じる変人・桑野を、「待ってました」と暖かく出迎えた視聴者。「昔とちっとも変わらない」と歓喜。「おかえりなさい」「お変わりなくて何より」と大絶賛です。


 このドラマ、たしかに主人公の奇妙な魅力がエネルギーの源と言えるでしょう。自宅では大音量でクラシックを聴きご満悦。眉間にしわを寄せて小理屈やウンチクを垂れ流し、一人流しそうめんを食べている時はニコニコ顔。そう、あの桑野信介は健在です。


 しかし、13年を経て世の中は変化しました。


 まず、IT化した環境。桑野はスマートスピーカーに指示を出し、しもべとして使いこなす。孤高ぶりは輝きを維持しています。もう一つ大きく変化したのが、「結婚できない男」の存在。すでに当たり前になった世の中でもはや自虐ネタでも何でもなく、日常化したお一人様。


 そのように、桑野をとりまく環境に変化はある。しかし、視聴者が見たいのは「他者を意に介さない独善家が、時に心を揺さぶられ、ささやかに変身していく」愛らしい姿です。そのポイントさえしっかりと押さえれば、いかなる時代の変化もさして問題ではない、ということを第一話は見事に証明しました。


 このドラマを見ていて何よりも感銘を受けるのは、「役者」という存在の奥行きでしょう。


 阿部さんの出発点はご存じメンズノンノのモデル。身長が高く彫りが深い、まさしく正統派二枚目のイケメン。下手すれば同じような二の線の役柄しかもらえず、年をとればそれもつらくなり、先細りになりかねない。実際、阿部さんにもそんな不遇の時期があったそうです。


 しかし、結果として見事に「三の線」へと転換を果たした阿部さん。きっかけは『TRICK』、不動の地位を築いたのが『結婚できない男』と言えるかもしれません。


 


 桑野役をこなしたことによって大きく開けた役者人生。その後の映画『テルマエ・ロマエ』(2012年)では、あのおとぼけ古代ローマ帝国の浴場設計技師で、まさに三の線の円熟ぶりを見せつけました。それに、日本人で「ローマ人」役にどんぴしゃハマる人って阿部さんしか考えられない、そう思わせてしまうほど、身長と彫りの深さという二枚目モデル姿を武器として活用した大技でした。


 さて、「二枚目から見事に脱皮した役者」ということでいえば、最近のドラマであの人のことも忘れてはいけません。NHK朝ドラ『なつぞら』で大黒柱のように全体を支えた草刈正雄さん。登場するだけで人間の深みというものを伝える力には、もう脱帽です。


 草刈さんもまた、資生堂専属モデルから出発し、「二枚目」として人気を極め、その後脇役しか来ない不遇の時代を経験しました。ご本人も「二枚目」というイメージを崩したいともがき苦しみ続けてきた、とインタビューで語っています。さらに息子を亡くすという不幸も経験し、人生の酸いも甘いも知った後、いぶし銀のような風貌と円熟味の役者にまで到達したのでしょう。


 モデル出身と言えば、竹野内豊さんも期待したい役者の一人です。ドラマ『この声をきみに』(NHK 2017年)では「二の線」ではなく、まったくイケていないダサイ格好の頑固な中年男性を演じた竹野内さん。次第に柔らかな心を獲得していく変化のプロセスが印象的で、深い声の響きも素晴らしく、感動させてくれました。


 そこで……どうしたって注目しなければならない今期のドラマ最大の「二枚目」がいます。


 キムタクです。10月20日放送開始のドラマ『グランメゾン東京』(TBS系日曜午後9時)では型破りなシェフを演じるという木村さん。依然「二の線」を走る俺様アイドルのままなのか、それとも路線から降り役者として大きな可能性を手にいれるのか。本人の意思とは関係なく、どうやっても「二の線」から下ろしてもらえないのか。かたずを飲んで見守る、といったところでしょうか。

NEWSポストセブン

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