5つの臓器を全摘した建築家・安藤忠雄「生涯、青春していたい」

10月13日(金)11時0分 文春オンライン

「私は変人と言われますが、安藤さんは超人だ。奇跡の人である。素晴らしい!」


 来賓挨拶に立った小泉純一郎氏が、お馴染みの名調子で声を張り上げた。9月26日、東京・国立新美術館で執り行われた「安藤忠雄展—挑戦—」開会式でのこと。


 建築家を志して半世紀。軌跡をたどる個展で、安藤忠雄さんは確かに「超人」ぶりを発揮している。会場内に代表作「光の教会」の原寸大モデルを建ててしまったのだ。


「建築は模型や写真を見るだけでは足りない。実際に体験してもらわなければ、建築家がそこに込めた気持ちは伝わりません。200坪のテラスを展示に使っていいというので、じゃあ1分の1スケールでつくってしまおうと考えた。材料はもちろん本物と同じコンクリートを用いています。展示品ではあるけれど、東京都に確認したらこれは美術館の『増築』扱いになるという。慌てて許可申請をして、何とか間に合わせましたよ」


 展示は、目玉の「光の教会」の他にも盛りだくさん。これまで手がけてきた住宅の数々や海外での建築例が、模型などで紹介され、建築ファンじゃなくても楽しめる。


「誰が観ても発見と驚きがある展示になるよう心がけました。私は建築をつくることしかできませんが、建築を通して希望と夢と勇気を持って生きることの大切さを伝えたい。ですから特に、子どもたちにたくさん来てもらいたいんですよ。50年間、建築と格闘ばかりして生きてきた人間がいるらしい、ならば自分はこう生きたい。そんなことを考える材料にしてくれたら何より。それから70歳でも80歳でも、目標を持って毎日生きている人にもぜひ足を運んでほしい。自分や社会に何ができるか考え続けていれば、何歳になっても青春です。私も生涯、青春していたい。そういう人が集う場になればうれしい」


「光の教会」原寸大モデル

 挨拶で小泉氏が「奇跡の人」と称したのは、病を克服して仕事に邁進する安藤さんの姿に感服したからだ。


「私は2009年に胆嚢・胆管・十二指腸にがんが見つかり、すぐに全摘しました。厄介な手術を乗り越えひと安心していたら、5年後には膵臓と脾臓にがんが再発。これも全摘しました。5つも臓器がなくて平気なのはかなり珍しいようです。医者も『不思議なことがあるものだ』と言っています。幸い元気に仕事ができていますし、病気をしていいこともありました。最近、中国からの仕事が増えたんです。彼らが言うには、『臓器がなくても元気な安藤さんは縁起がいいので、設計をお願いしたくなる』と(笑)」


 これからまだまだ第一線に立つ。今展も回顧展ではなく「経過報告」の様相が強い。


「そりゃそうです。私はあと20年、建築家としてやっていくつもりですから」



あんどうただお/1941年、大阪府生まれ。独学で建築を学んだのち、1969年に安藤忠雄建築研究所設立。代表作に「光の教会」「ピューリッツァー美術館」など。日本建築学会賞、文化勲章、フランス芸術文化勲章(コマンドゥール)ほか国内外で受賞歴多数。1997年に東京大学教授、現在は名誉教授。




INFORMATION

「安藤忠雄展—挑戦—」

国立新美術館、12月18日(月)まで。毎週火曜日休館
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/



取材・構成:山内宏泰


(山内 宏泰)

文春オンライン

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