地上波で一番危険な番組『#ハイパー』上出Pが明かす「マジで危ないロケの話」

10月14日(月)11時0分 文春オンライン

“地上波で一番危険なグルメ番組”『ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート』(以下『ハイパー』)が3か月で早くも続編が放送。10月14日(月)夜22時の放送を前に、前回の放送で危なすぎて言えなかった撮影秘話から今回の見所まで。テレビ東京の上出遼平さんにお聞きしました。



『ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート』を手掛ける上出遼平P


◆◆◆


ハードボイルドな『突撃!隣の晩ごはん』


——前回7月15日に放送された危険すぎる『ハイパー』がまさかの3か月でスピード復活ですね。驚きました。


上出 僕もえっ!? ってなりましたよ(笑)。放送まで3か月もないから無理だと思って、最初断ったんですけど社内で「とにかくやるんだ!」と言われまして……。やらせてもらえるのはありがたいことなんですけどね。


——ということは、準備期間は3か月もなかったんですね。


上出 そうなんです。しかも『ハイパー』のスタッフは少なくて10人前後で制作していて、みんなそれぞれ他のレギュラー番組も抱えているんです。でも放送日は迫ってくるので、レギュラー番組のスケジュールを押しのけてでも「すみません」って言って、海外ロケに飛び出していくしかない。だから今、社内では相当嫌われてます。


——前回お話を聞いたときは、テレ東社内でも「危なすぎるから」という理由で1年以上も続編制作の許可が下りなかったと。


上出 番組のラインナップを決める編成の方が『ハイパー』にすごく意味を感じてくれたんです。それが今回のスピード復活のきっかけでした。


——7月の『ハイパー』では、ケニアのゴミ山に住む青年に取材されていました。


上出 ゴミはお金になるので利権争いが起こって治安がめちゃくちゃ悪いんです。僕が行ったナイロビのゴミ山も周囲はスラムで取り囲まれている。そんな場所で、取材2日目にようやく見つけたのが奥の奥で穴掘ってトタン屋根かぶせて住んでる青年でした。



——最初から相当危ない感じが伝わりますが、あくまでグルメ番組ですよね。


上出 『ハイパー』を改めて簡潔に説明すると、ハードボイルドな『突撃!隣の晩ごはん』なんです。観光客が入っていけないような場所に行って、そこで暮らす人が何を食べるのかを見に行く。一緒に飯食うともっと色んな話が聞けるという番組です。だからゴミ山に暮らしていた青年にも「ご飯見せてもらえませんか?」とお願いして。


「ゴミ山で食べるお赤飯」と、青年が見せてくれた「宝物」


——青年とトラックに乗ってナイロビ市街へのゴミ回収にも同行されていました。


上出 他の人たちはゴミ山に来たゴミを仕分ける仕事をしているんですけど、彼は「この方法は俺しか知らない」と言って、街へ行く車に乗ってゴミ捨て場を回るんです。


 その時にすごく感じたのが周囲の人の視線で。ごみ収集車は、絶対に必要な存在ですよね。だけど、汚物をみるような目線で終始見られている。すごくタフな仕事だなと思いましたね。


——きつい視線を受けながら1日かけてゴミを集めて……。


上出 だけど8時間ぐらいプラスチックとか金属とかお金になるゴミをたくさん集めてやっと90円ぐらい。時給にしたら10円ちょっと。青年はそのお金で2食分のお米と豆を買って、ごみ山で自然発火している火と空き缶でお赤飯を作っていました。そんななけなしのお金で作ったお赤飯を僕にもひと口分けてくれて。


——「ゴミ山で食べるお赤飯」の味は?


上出 美味しかったです。日本のお赤飯とは違ってお米が少し固めで良い感じに僕好み。しかもその日は虹も出ていて、ゴミ山と言えど山ですから頂上から見た景色の中で食う飯が美味しいのは同じですよね。もちろんゴミの臭いはしましたけど。



 でも本当に青年にはそれだけなんですよね。働いても全部飯代になっちゃうわけです。その時に……あれ、彼の隠しロッカーみたいなことってオンエアしてないですよね?



——オンエアされていません。なんですか?


上出 ゴミ山に少し水が流れている川みたいな場所があるんですけど、その脇に小さな横穴があって。中にはビニール袋に入れた服とか彼の「宝物」が隠してあるんです。


 ある時に「見せてやろうか」と言って、この隠しロッカーからお気に入りの一張羅を見せてくれたんです。もちろん全部ゴミ山で拾ったものなんですけど、彼にとってその1枚がものすごく大切なものなんですよね。それを僕に見せてくれたことにとても感動しました。



「ずっとつけられていた」常に危険と隣合わせの取材


——前回のインタビューの際に、「オンエアするか迷っているほどの、ゾッとする結末が待っている」とお聞きしました。彼が取材の直後に強盗事件に巻き込まれたことだったんですね。


上出 強盗に刺されちゃったんですよね。一命は取りとめたので良かったですけど。


——上出さんが取材していた相手がすぐに襲われている。これほど危険な場所だったということですよね。取材中は危険なことはなかったんですか?


上出 うーん。また社内で呆れられてしまうので言いづらいんですが……(笑)。僕がゴミ山で暮らす人を探しているときに、めちゃくちゃ遠くから3人ぐらいにずっとつけられたりしましたね。みんな相当目が良いんですよ。


——えっ、怖すぎます。


上出 日が暮れる前にゴミ山を出るということは鉄則で守っていたんですけど、もし残っていたりしたら……ヤバかったと思います。



——コーディネーターと2人行動ですよね?


上出 ディボゴっていうおじいちゃんと2人です。何回か2人で囲まれて「ここ通るなら1万円払え」みたいなことを色んなグループに言われたりして。あんまり言いすぎるとまた怒られるからなあ……。


「みんなこれが欲しいんでしょ」は他の人が作ってくれる


——この番組を制作するにあたって、社内では「呆れられている」という話もありました。


上出 そもそも“マス”の番組ではないんですよね。一部の方々に強めに刺さる。社内ですら“マス”じゃないんです。そんな中で、意味を感じてくれた人が「絶対やるべきだ!」という声を上げてくれて制作が決定するという……。本当に予測不可能な番組です。


——前作7月の反響はいかがでしたか?


上出 ありがたいことにTwitter界隈では放送後もしばらく感想を投稿してくださる方が多くて。僕の“エゴサーチ”ではタレントの千秋さんが「永久保存版だ」なんてツイートしてくれていました。あとはYouTubeのほうでも第1弾の「リベリア編」スピンオフ動画を公開したんですが、合わせて170万回再生を超えたり……。




——すごいですね。前回は初のゴールデン進出でしたが、視聴率はどうでしたか?


上出 覚えてないですね(笑)。うん、ここまでは許せるというラインをギリギリ越えなかったくらいかな……。


——いま、地上波のテレビ番組にとっては、「視聴率」というものが重視されますよね。万人に愛される番組作りというか。


上出 もちろん視聴率は大事ですが、やっぱりテレビ東京には「強く深く刺さるコンテンツを作っていかなければならない」という意識があって。そんな意識で『ハイパー』の続編が決定した部分もあると思います。この番組はYouTuberみたいに自分でカメラ持って現地行って取材して編集してってすごく現代的な作り方だと思うんです。「作り手が見えるコンテンツ」をテレビ局がちゃんと作ることも必要。「みんなこれが欲しいんでしょ」という及第点を目指す番組は他の人が作ってくれますから。



今回の舞台は「ギリシャの難民漂着飯」


——そして前回よりも弾丸制作となった『ハイパー』ですが、上出さんはどちらへ?


上出 今回はギリシャです。ただ日程が限られていて、他の番組の収録だけして翌日に出発して、また別の特番の収録日に帰ってくるような、まさに弾丸スケジュールになりました。


——忙しい(笑)。ギリシャでは何を取材されたんですか?


上出 中東の難民が、EUに入国しようと押し寄せているというニュースを見たんです。小さな15人乗りぐらいのゴムボートに45人ぐらいが乗って、トルコからギリシャのレスボス島という小さな島にどんどん入ってくる。大体8万人ぐらいが住んでいた島だったんですけど、2015年くらいからもう7万人以上の難民が島に居座っていて、難民キャンプも大変な事態になっていると。


——実際行かれてどうでしたか?


上出 事前のリサーチでもなかなかに酷い状況だと聞いていましたが、「故郷の方がマシ」と話す人がいたり。そんな状況だけど毎日ボートはやってくるんですよね。警察の目を避けて深夜に到着するボートを海岸で待ち伏せて到着した人に、「何食うの?」って聞いて回って。



ギリシャでの取材で“一番ヒヤッとしたこと”は?


——難民キャンプの食事があんまり想像できないんですが。


上出 まあそれはオンエアを見て頂ければ(笑)。でも難民の方々に話を聞いていて、その出国を後押しするブローカーが気になってきたんです。そのブローカーの話も聞かないと今回の『ハイパー』は完成しないなと。それで急遽ボートが出る側のトルコに行くことにして。


——難民のルートを逆流したんですね。でも思いつきでトルコに行って、ブローカーに会えるものなんですか?


上出 日本で探そうと思うとほぼ不可能に近い話なんですけど、現地で伝手を辿ってボートが出る沿岸を警備していた人に接触できたんです。その人が案内してくれて、ブローカーに話を聞けました。難民向けの違法な商売ですけど、実は成功報酬制度だったり保証制度もあってビジネスとしてシステマティックなんですよ。すごく面白かった。



——え、沿岸の警備って……ブローカーを取り締まる側の人ってことですよね?


上出 そうですね。でも結構こういうパターンは多いんですよ。だから犯罪者とコンタクトをとろうと思うと、警察とか軍人にまず通すのが一番だったりする。でもギリシャでは数回、警察に連行されたりもして。他の国でも経験はあるんですが、ちょっとヒヤッとしました(笑)。



4000円の宿で、300円のたらいを使って……


——深刻な話が続きますけど、ギリシャと言えば地中海ですから美味しいご飯もたくさんありますよね。上出さんは何か食べましたか?


上出 オンエアにはもちろん乗せてませんけどちゃんと美味しいもの食べてますよ(笑)。とは言え全然贅沢はしてません。宿代だって4000円だし。ヨーロッパなのに。



——会社から4000円?


上出 今回制作費下げられちゃって。低予算番組だと思われてるんですかね?(笑) まあでも制作費が上がってもロケ場所が増えるだけなんで基本は同じようなロケ生活になりますよ。僕は毎回ロケ先に着いたらまず雑貨屋で300円くらいのたらいを買うんですよ。それで毎日洗濯して。見てくださいよ、手ガサガサになりますから。辛いです。


香港を舞台に「飯見せてよ」で“デモの裏側”が見える


——今回の放送ではあともう1つ。香港ですね。


上出 僕が行きたかったんですけど、もう1人のディレクターが代わりに行ってくれました。これもギリシャにかぶるんですが、ニュースに出ていることは本当に真実なのか? っていうのを知りたかったんですよね。催涙弾とか投石は見飽きたし、彼らが本当はどう思っているのかが気になる。それこそ「飯見せてよ」が活きる現場だなと。


——では今回はデモ部隊の人に接触?


上出 なんとか過激派の1人と接触できたんですよね。フルマスクで。彼らがこの先どうなっていくのかを聞くことができました。あと、やっぱり今は「香港=デモ」ですけどデモ以外の生活もあるわけで。週末に路上でたむろしているフィリピン人のメイドさんたちにも話を聞きました。彼女たちのご飯からも「デモの裏側」を見ていただけると思います。



——最後になんですが、前回のインタビューで「Twitterでは『#ヤバい飯』でツイートしてください」という話だったはずなんですが……。公式アカウントでは違うハッシュタグでしたよね?(笑)


上出 すみません! なんか後でやっぱり「#ハイパー」にしようってなって(笑)。今回こそは「#ハイパー」でこの記事を見た人はつぶやいてください。今度こそ変えないと思います!



◆前作7月15日放送時のインタビューも掲載中

#1 「危険すぎる」テレ東社内も激怒 “タブー番組”「世界のヤバい飯」なぜ復活できた?

https://bunshun.jp/articles/-/12825


#2 テレ東が放つ劇薬『ハイパーハードボイルドグルメリポート』はこうして誕生した

https://bunshun.jp/articles/-/12826


写真=平松市聖/文藝春秋



かみで・りょうへい/1989年生まれ。早稲田大学法学部卒。2011年テレビ東京入社。バラエティ番組を制作する制作局に配属。『ありえへん∞世界』のADを務める。その後ADとして『世界ナゼそこに?日本人』の立ち上げに関わり、当番組でディレクターデビュー。海外ロケばかりを繰り返す6年間を経て、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を立ち上げ。現在は『学校では教えてくれない!所さんのそこんトコロ』のディレクターなど兼任。




(「文春オンライン」編集部)

文春オンライン

「危険」をもっと詳しく

「危険」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ