「勝ちたいか!」「ついてこられるか?」 ラグビー映画『スクール・ウォーズ』に見る名指導者の条件

10月14日(月)11時0分 文春オンライン

 カマテ! カマテ! カオラ! カオラ! 


 ラグビーワールドカップ、やっぱりアガりにアガりますね。疾走して激突する巨漢たち、そんな激闘するさまからジンジンと伝わってくる選手同士や彼らと指導者の絆。いちいち熱くて、ついついハカってしまいます。でも、そんなワールドカップも中盤に入ると観ているこちらのテンションのボルトが少し緩みがちになる瞬間が……。それはマズイというわけで、ラグビー魂を注入してくれる映画をご紹介したいと思います!



10月6日、ハカを踊るニュージーランド代表 ©AFP/AFLO


日本と南アフリカ それぞれに名指導者あり


 フィールドに上げるのは、名作ドラマ『スクール☆ウォーズ 泣き虫先生の7年戦争』(84)を照英主演で映画化した『スクール・ウォーズ/HERO』(04、以下『スクール・ウォーズ』)と、クリント・イーストウッドが監督を務めた『インビクタス/負けざる者たち』(09、以下『インビクタス』)。



 映画版『スクール・ウォーズ』は荒廃した工業高校のラグビー部を立て直す熱血教師・山上修治(モデルは日本代表フランカーの経歴を誇る、元京都市立伏見工業高等学校ラグビー部監督・山口良治氏)、『インビクタス』は弱小チームであった90年代の南ア代表チームをもはや監督状態でワールドカップ優勝へと導いたネルソン・マンデラ大統領と主将フランソワ・ピナールがそれぞれ主人公。彼らの名指導者ぶり、それがもたらす奇跡が観る者の胸にバシッとトライしてくるのです。


 山上が赴任した工業高校は、生徒が廊下をバイクで突っ走り、教師が縛られて3階の窓からブラ下げられたり、背中に火をつけられたりと無法地帯状態で、その主犯となっているのがすべてラグビー部員。一方の南アフリカは人種隔離政策アパルトヘイトが撤廃されて黒人大統領マンデラが就任したものの、虐げられてきた黒人が白人に牙を剥きかけ、白人たちが警戒している状態。



絶対外せない名言「One for All, All for One」


 山上がなにかと部員にかける言葉が「One for All, All for One=ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」。マンデラがスローガンとして掲げるのは「One Team, One Country=ひとつのチーム、ひとつの祖国」。まずはチームをビシッとまとめあげて彼らの姿を指標として見せることで、荒れた生徒たちと職務を放棄している教師、距離を開けたままの黒人と白人を互いに歩み寄らせ、バラバラになっている学校を、そして国をもひとつにしていくという、広い視野をもって指導にあたるのです。



名指導者はおのずと人の心もガシッと掴んでしまう


 このように放つ言葉は大きいからといって、細やかな配慮も忘れないのが名指導者というもの。山上は「自分を見下しているヤツに心を開くヤツがどこにいるんや!」と元日本代表のプライドを捨て去って朝一番で校門に立ち、ラグビー部員を含めた生徒たちの顔をガン見しながら腹の底から声を出して「おはよう!」と挨拶、貧しくて弁当もままならない部員がいればスッと弁当を渡して去っていく。マンデラも選手ひとりひとりの名前を呼びながら握手を交わして叱咤激励。



 こんなことをされた者たちは「ラグビーだけをやっとけと言わないなんて……」「チーム15人の名前をわざわざ覚えているなんて……」と選手である前にひとりの人間として接してくれる監督と大統領にグッときてしまうのです。そう、名指導者はおのずと人の心もガシッと掴んでしまうものなのです。



「勝ちたいか!」「頑張れるか?」「ついてこられるか?」


 そうかと思えば、試合に負けたときは厳しい顔も覗かせます。高校総合体育大会で112対0というウソみたいな大敗を喫した際には「おまえら悔しくないんかっ!」と部員全員をグーで渾身パンチ。敗北という痛みと悔しさを心にも体にも叩き込むためのパンチだと知って率先して頬を差し出す部員たちの姿、「勝ちたいか!」「頑張れるか?」「(俺に)ついてこられるか?」と吠えながら15人も連続で殴ってさすがにゼーゼーしている山上に思わずジ〜ン。



 しかし部員たちが体罰ではないと思っていても傍から見れば体罰というわけで、1カ月の謹慎を喰らう山上。しかたなく自宅の団地でおとなしくしていると、外からなにやら雄叫びが聞こえてくるではありませんか。「こんな夜にはて?」と窓をガラッと開けると、そこには「カマテ! カマテ! カオラ! カオラ! 学校に出てこんかい!」とラガー服を着てハカを舞う部員たちの姿が。


 事情を知らない近隣住民にはうるさいだけだし、絵面はとてつもなく異常だし、はっきりいって大迷惑なだけ。そのへんの心配をしない山上が気になりますが、あのパンチが部員たちの“なにか”をスイッチしたと感じて号泣するのです。



ボロ負けしてもビールで乾杯……屈辱の味を覚えさせる


 そのあたりは南ア主将ピナールもなかなか巧みで、イングランドにボロ負けした際にはあえてビールをチーム全員に配って乾杯。まったくもって上手くない屈辱の味を覚えさせることで奮起させます。



「One for All, All for One」「One Team, One Country」という明確で力強い言葉、どんな者にも気を配る細やかさと優しさ、そして悔しさを励みにスイッチングさせる機転と鉄拳が、部員を、選手を、学校を、国を、一丸にします。112対0の屈辱を味わわされた高校との再戦、そして超強豪ニュージーランド・オールブラックスとの1995年ワールドカップ決勝戦に挑むそれぞれのチーム。劇中、もたらされる奇跡にはどうにかなってしまいそうに!



 ド感動というゴールキックをドンズバで決めてくれるこの2本を観て、ワールドカップ終了まで滾(たぎ)りまくってください!!




(平田 裕介)

文春オンライン

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