繊細で緻密…ポン・ジュノ監督の映像表現を堪能できる『パラサイト』
2019年10月15日(火)19時30分 シネマカフェ
“ボンテール”という造語まで誕生!唯一無二の圧倒的な映像表現
今年100年目の記念年を迎えた韓国映画界に、初めてのパルムドールをもたらしたポン・ジュノ監督。その最新作となる『パラサイト 半地下の家族』は現代社会が抱える問題を内包しつつ、ユーモア、サスペンス、アクション…映画全ての要素を融合させながらツイストの効いた展開で描き切った。
物語の構成だけでも超一級のエンターテインメント作品として申し分ないが、それに加えて“ボンテール(ポン・ジュノ+ディテール)”も余すことなく堪能できる! と評論家たちが声を揃える。
“ボンテール”とは、役者の台詞や動き、小道具、背景など画面に映し出されるあらゆる要素にメッセージを込める監督の繊細さと緻密さを称賛するため、メディアや評論家が生み出した造語。だからこそ、ポン・ジュノ監督の作品は何度見ても新たな発見があるのが、魅力のひとつだ。
日本漫画大好き!『オールド・ボーイ』原作をパク・チャヌクに薦めたのはポン・ジュノ監督
無類の日本漫画好きとしても知られるポン・ジュノ監督。もともと漫画家を志していたこともあり、いまも映画の撮影前には、緻密な絵コンテを描き、イメージを明確に表現することでも知られている。
そんなポン・ジュノ監督にまつわるエピソードとして代表的なのが、名匠パク・チャヌク監督に、原作:土屋ガロン、作画:嶺岸信明による漫画「ルーズ戦記 オールドボーイ」を読むよう薦めたという話。のちにカンヌ国際映画祭グランプリ受賞を果たした傑作『オールド・ボーイ』を、実はアシストしていたのだ。
そんなポン・ジュノ監督の過去作も、一筋縄ではいかない考え抜かれた設定のものばかり。目の離せない衝撃的なアクションやサスペンスがありながらも、現代社会に通じるテーマが必ず隠されている。
その一方、キャラの濃い登場人物たちの姿は人間くさく、思わずクスリと笑ってしまうユーモアも織り込まれており、“漫画”の趣も色濃く感じさせる。韓国映画にはあまり馴染みがないという人でも、一度観たらその作風にどっぷりはまってしまうこと間違いなし! 最新作日本公開を前に、これまでのポン・ジュノ監督作品も併せてチェックしてみてほしい。
ソン・ガンホとの初タッグ作『殺人の追憶』('03)
先日、30年の時を経て真犯人が判明したことでも話題となった、実際の未解決連続殺人事件に着想を得たサスペンス。犯人を突き止めようとするソン・ガンホ演じる刑事たちの前に、衝撃の結末がおとずれる。ポン・ジュノの名を世に知らしめた代表作。
歴代動員1位のメガヒット作『グエムル 漢江の怪物』(’06)
アメリカ軍が有害な薬品を韓国・漢江に流した実際の事件がモチーフとなっており、薬品の流出により生まれた謎の怪物に拉致されてしまった娘を救うべく、ふがいない父親(ソン・ガンホ)とその家族が奔走する。韓国では当時、歴代動員1位を記録するメガヒットとなった。
“息子役”ウォンビンにも注目『母なる証明』(’09)
女子高生殺人事件の容疑者となった息子のため真相に迫ろうとする、母(キム・ヘジャ)の狂気に近い盲愛を描いた。ウォンビンが息子を演じたことでも話題に。国内外で20を超える賞を受賞、世界中の映画ファンに衝撃を与えた。
ハリウッド俳優も多数出演!Netflixオリジナル映画『オクジャ/okja』('17)
謎の巨大な動物オクジャを、親友の少女ミジャが巨大な多国籍企業から守ろうとするアクションアドベンチャー。資本主義における食肉産業の闇を描いた。ネット配信作品としては初めてカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、パルムドールを争ったことでも話題を呼んだ。
『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。