【観劇レビュー】「ロマンシング サ・ガ2」舞台化で七英雄再評価

10月15日(月)15時19分 おたくま経済新聞


 この度、スーパーファミコンソフト「ロマンシング サ・ガ2」(通称:ロマサガ2)が舞台化されました。題して「SaGa THE STAGE 〜七英雄の帰還〜」。

公演日程は下記の通りです。

埼玉公演: 2018年9月21日 戸田市文化会館

東京公演:2018年10月2〜8日 シアター1010

大阪公演:2018年10月17〜21日 サンケイホールブリーゼ

 筆者は10月6日に東京公演を鑑賞しましたので以下にレポート致します。

 筆者は2016年7月24日に舞台版「ドラゴンクエスト3」の記事、2017年4月17日に舞台版「ロマンシング サ・ガ3」の記事を掲載しましたが、本稿はそれらに続く記事となります。

 まずは、スーパーファミコンソフト「ロマンシング サ・ガ2」のあらすじを振り返っておきましょう。

 ゲームのアバンタイトルでは、七英雄の伝説というものが語られます。伝説によれば太古の昔、魔物を倒した7人の英雄、通称・七英雄がいました。七英雄は世界を救った後に姿を消しましたが、いつの日か再び世界を救う為に姿を現すと伝えられているそうです。そしてアバンタイトルでは

「そして、彼らは来た ・・・・だが」

 という字幕の後に「ロマンシング サ・ガ2」というタイトルが表示されるんですが、この時点で惹き込まれてしまいます。

 ここで、七英雄のメンバーをご紹介しましょう。七英雄は太古の英雄ではありますが、ゲーム中の時代、世界に再び現れます。

 七英雄の名前は、JR山手線の駅名を逆から読んでカッコ良くしたものだそうです。私は以前、七英雄の名前の由来となった駅の写真を全部撮影しようと思ったことがありました。本稿では、七英雄のメンバーを紹介すると共に、名前の由来となった駅の写真を掲載致します。

 ワグナス(演・中村誠治郎):七英雄のリーダー。ゲームでは、居城に侵入した主人公を安全に送り返してくれることもある兄貴肌。名前の由来は品川駅。



 ノエル(演・佐藤アツヒロ):ロックブーケの兄。七英雄の中で最も礼儀正しい。舞台版ロマサガ2では主人公になっています。名前の由来は上野駅。



 ロックブーケ(演・山田菜々):ノエルの妹。ゲームでは、ストーリーの根幹に関わる重要な調査をしています。異性を意のままに操る能力を持っていることから、ゲームをクリアする上での関門となりました。名前の由来は池袋駅。



 クジンシー(演・細貝圭):人類と七英雄の激闘の戦端を開いた人物。ゲームでは、クジンシーが悪事を働いたことから七英雄が英雄ではないことが判明しました。名前の由来は新宿駅。



 ボクオーン(演・川田祐):人形を操る。BSフジで放送された宣伝番組によれば、演じている川田氏はヨーヨーの世界チャンピオンに輝いた経歴があるそうで、ゲーム中の操り人形が舞台版ではヨーヨーになっています。名前の由来は新大久保駅。



 ダンターグ(演・岩永洋昭):強さを求めて独自に行動しています。名前の由来は五反田駅。



 スービエ(演・平山佳延):ワグナスの従兄弟。海に生息しているせいか、ゲームでは他の七英雄と比べて主人公と遭遇しないまま、ゲーム終盤まで来てしまうことがよくあります。名前の由来は恵比寿駅。



 おまけ:サグザー(演・野村知広)七英雄ではありませんが、ノエルの友人。舞台版ロマサガ2でも、七英雄と行動を共にする場面がありました。名前の由来は浅草駅。上野駅と浅草駅と言えば、昭和2年に開通した地下鉄(現在の東京メトロ銀座線)の始発駅と終点でした。名前の由来が山手線の駅名でないことからも、サグザーが七英雄のメンバーではないことが分かります。



 ゲームでは、プレイヤーキャラクターの視点からストーリーが進展しますので、太古の昔、七英雄がいかなる人物達であったのかは伝聞による情報しか得られません。ゲーム中で、太古の七英雄についてプレイヤーキャラクターに教えてくれる者は次の3名です。

・七英雄と同じ時代を生きたオアイーブ(舞台では演・谷口あかり)

・スービエ

・モンスターの水龍

 しかし条件を満たさないと上記3名全員の話を聞くことはできません。その上、上記3名の証言はそれぞれの知っている情報しかないため、全てを突き合わせるとつじつまの合わない部分が生じます。例えるならば、昭和25年の映画「羅生門」のような状況と言えるでしょうか。水龍の話もまた伝聞の可能性がありますし、オアイーブは(ゲームでは)七英雄と対立した側の人物だったので、主観が入って証言に矛盾が生じるのもやむを得ないのかもしれません。

 以下、本稿ではネタバレにならないように敢えて曖昧に申し上げますが、3名の話によれば、太古の昔、七英雄は酷い目に遭わされた為、現在、復讐を企んでいるとのこと。オアイーブは七英雄と対立した側の人物でしたが、責任を感じた為、仲間と行動を共にせず、隠棲しているそうです。ただ、ゲーム中ではオアイーブが本当に責任を感じているのか怪しい部分もあったので、プレイヤーキャラクターがオアイーブに意見をぶつけています。

 このようにして七英雄の秘密が明らかになったことで、ゲーム中で起きている事件は、太古に起きた事件の余波であることが判明しました。言い換えれば、ゲーム中のストーリーの陰に隠れた部分には、七英雄を主人公にしたストーリーが存在していたということです。

 ここからはいよいよ舞台版ロマサガ2の話に移ります。舞台版ロマサガ2のポスターには「かつて彼らは「英雄」だった。」というキャッチコピーが記され、七英雄の姿が掲載されています。つまり七英雄を前面に押し出しています。

 前述の通り、ゲームのロマサガ2はプレイヤーキャラクター視点のストーリーと太古の七英雄のストーリーという2つの軸があった訳ですが、舞台版ロマサガ2はこの点を巧みに取り入れ演劇化しました。太古の七英雄パートと、ゲームで描かれたパートの二部構成にしたのです。

 第1部は、太古の七英雄の物語となりました。ゲーム中では太古の事件について証言に矛盾があり、プレイヤーキャラクターが太古の事件を目撃した訳ではないことから、真相は不明でしたが、この舞台版ロマサガ2によって観客は太古の事件の真相を目撃するのです。また、オアイーブはヒロインのポジションになり、自身が事件に責任を感じた理由も明らかにされました。

 ゲームと同様に七英雄が酷い目に遭ったところで第1部は終了し、休憩時間を挟んで第2部の開幕となります。第2部の冒頭では、ゲームのアバンタイトルと同じ文章のナレーション(前述の「そして、彼らは来た ・・・・だが」という文章)が語られ、ゲームで描かれたストーリーが繰り広げられます。

 第2部のストーリー上の特徴を、ネタバレにならない程度に2点申し上げます。

 1つ目は、ゲームでは七英雄の中で一番影の薄かったスービエの出番が多い点です。しかも、ゲームではチラッとしか出てこなかったキャラクター・海の主の娘(演・梅田彩佳)とラブロマンスを繰り広げているのです。このラブロマンスは、ゲームで上記キャラクターの母親(海の主)が語ったエピソードとは全く異なるエピソードでありましたので、新たな一面を見られて楽しめました。

 2つ目はオアイーブのポジションです。前述の通りゲームでは、自分では責任を感じていると言っていたオアイーブは、本当に責任を感じているのか怪しい点があった為、プレイヤーキャラクターから意見を言われていた訳ですが、舞台版ロマサガ2はこの点にも深く切り込みました。ゲーム中のオアイーブはプレイヤーにあまり良い印象を与えなかったのですが、舞台版では、太古の事件に対して本当に胸を痛めており、現代に於いても七英雄(特にノエル)を思い続けていることが伝わってきて、オアイーブの印象がガラリと変わりました。

 ここで話は変わりまして、舞台版ロマサガ2の特徴について、ストーリー以外の要素を2点申し上げます。

 1つ目は戦闘シーンです。ゲーム版ロマサガ2の戦闘では、主人公側のパーティーは陣形を組んで戦います。どういう陣形を組むかによってキャラクターの能力が左右されるのですが、舞台版ロマサガ2でも登場人物が陣形を組んで戦っているのです。ゲームをプレイした観客としては、ゲーム中の戦闘が目の前で再現されて嬉しいものです。

 2つ目は音楽です。劇中音楽はゲーム版ロマサガ2の劇伴の他、他のサガシリーズの劇伴も使われました。前者の例と後者の例を1つずつご紹介します。前者の例としては、ゲーム中、酒場で人魚が踊る場面の劇伴が、舞台では喧嘩を表す劇伴として使われていました。後者の例としては、登場人物が決意を固める際、要所要所で効果的に使われた曲が、ロマサガ1で主人公が神から与えられた試練を表す曲でした。両方ともゲーム中とは全く異なる使い方ですが、これがピッタリはまっていました。

 さて、以上を纏めて結論を申し上げます。舞台版ロマサガ2は、ゲーム中では伝聞でしかなかった太古の事件の真相を描くことで、七英雄の悲劇を明らかにしました。併せて、ゲーム中では明らかではなかったオアイーブの思いを描くことにより、オアイーブの愛と苦悩を描いた物語ともなりました。舞台版ロマサガ2の意義は、ポスターに「かつて彼らは「英雄」だった。」と書かれている通り、七英雄は本当に英雄であり、オアイーブとの愛、海の主の娘との愛、サグザーとの友情の中で生きた人間味溢れるキャラクターであったと再評価した点にあると言えるでしょう。

 本公演で個人的に一番印象深い名場面は、オープニングとラストで七英雄が勢揃いしてポーズをビシッと決める場面でした。これがとてもカッコ良かったです。この場面は、七英雄は悪人ではなく英雄であるとする、本公演の要諦を象徴していると言えるでしょう。

(コートク)

おたくま経済新聞

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