安室奈美恵「Hero」、嵐「Winter days」…ヒットメーカーの音楽プロデューサー・今井了介が“フードテック”分野に飛び込んだきっかけとは?

2024年10月16日(水)20時50分 TOKYO FM+

放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00〜15:50)。今回の放送は、音楽プロデューサーの今井了介(いまい・りょうすけ)さんをゲストに迎えて、お届けしました。

(左から)パーソナリティの小山薫堂、今井了介さん、宇賀なつみ


◆音楽プロデューサーとは別の顔が…
安室奈美恵さんの「Hero」や嵐の「Winter days」のほか、YUKIさんやMINMIさん、EXILEなど、これまで数多くのアーティストに楽曲を提供してきた今井さん。現在は、音楽の枠を飛び越えて、“フードテック(FoodTech)”の分野にも取り組んでいます。
フードテックとは、「Food」と「Technology」を掛け合わせた造語で、テクノロジーを駆使して食に関する問題の解決、さらには、技術を活用して食の可能性を広げていくビジネスモデルのことで、音楽を生業としていた今井さんがこの分野に乗り出したきっかけは、東日本大震災でした。
「真っ先に衣食住の支援が必要なときに、我々のようなエンタメに従事する者が目の前でどんなに熱演をしても、お腹はいっぱいにならないし、体は温まらない。まず(被災した)彼らにとって必要なことは生きていくこと、食べていくこと。特に私は食に非常に興味があったのと、パソコンや機械を使って打ち込みを作る趣味・趣向性もあったので、フードテックで何か社会課題の解決につながるような自分ならではのサービスやプラットフォームを作れるのではないか、と思ったのがきっかけでした」と振り返ります。
そんな思いから、今井さんが最初にローンチしたサービスが「ごちめし」です。これは、飲食店のメニューをお食事券でプレゼント・ギフトできるというもの。
数千万円を投じてこの仕組みを作り、2019年末にローンチしたものの、たった数ヵ月でコロナ禍に。そんなピンチを新たなアイデアで切り抜けたのが、外出自粛で窮地に陥っていた飲食店を支援するべく立ち上げたサービス「さきめし」でした。
これは、“先払い”で飲食店のチケット(食券)を購入して、コロナが収束したあとに食べに行くというもので、先に走り出していた「ごちめし」のサービスの仕組みを利用して運営しています。
このアイデアを思いついたのは、「(ごちめしで)食事をプレゼントするとどういう消費行動が起きるかというと、決済をしている時点で飲食店は売り上げが上がるわけです。お金が発生するタイミングと来客のタイミングがもともと時間にギャップのあるサービスだったので、これは上手く活用しようじゃないかということで、コロナ禍で自分が応援したい飲食店に『さきめし』で支払って、あとで食べに行く。(飲食店を)支援したいという気持ちと、うちのお店を応援してほしいという飲食店のマッチングが起きてバズりまして、(登録する店舗は)一瞬で1万店舗くらいになりました」と今井さん。
「ごちめし」に続いて生まれた「さきめし」のサービスをきっかけに、「僕たちのビジネスベースになる飲食店の加盟店舗を増やすという行為が結果的に自然と進むことが起きた感じです」とこれまでの流れを説明すると、宇賀は「すごいですね、アイデアが。逆手に取るという……」と感心の声をあげます。
小山も「(「ごちめし」で)プレゼントをいただいて、食べたあとにおいしかったら、これをまた誰かにゴチしたくなる……というふうになると、つながっていきますよね」とうなずきます。
今井さんは「デジタルプラットフォームなので、恩送りが見える化してつながっていって、循環して、さらに広がって……というところまですべてデジタルでトラッキングできると、恩送りの社会を可視化してさらに広げていくという価値観が生まれるといいな、というのが我々のサービスのゴールであり世界観です」と力を込めます。
◆次なるチャレンジは「音楽業界への還元」
そして、今井さんは「ごちめし」と「さきめし」の運営に留まらず、昨年新たな活動をスタートさせました。それは、地域の飲食店を“こども食堂化”し、こどもの居場所とまちの未来を育む新サービス「こどもごちめし」です。
今井さんは、「僕らには(「ごちめし」や「さきめし」を通じて)飲食店ネットワークがまずある。そもそもこども食堂って、皆さんご存知だと思うんですけど、心あるボランティアの方が基本的に善意でやっている。でも、あれを続けていくのは結構な難しさがある」と説明。
今井さんいわく、資金や人員の問題、食中毒のリスクなどもあって、こども食堂を毎日開催することは困難で、多くて週1か2週間に1回で、ほとんどのこども食堂が月1回開催でやっているところが多いと言います。
そのほかにも、「(こども食堂に)来た親御さん、こどもが本当に困窮家庭のこどもなのかどうかは、運営者には絶対に分からないというのが1つ。それからもう1つ、逆に(こども食堂を)使う側のこどもや親御さんは、自分の家が困窮と向き合っている家庭であることは(周囲に)知られたくないっていうのがあり、実は必要な人ほど(こども食堂に)行くことに対してバリアができてしまう」と、こども食堂が抱える課題点を挙げます。
そうした課題を解決するべく、「僕らは企業から支援金を募って、自治体さんからはふるさと納税や補助金を募って1つの基金にして、スマホに登録してもらった親御さんやこどもが飲食店にスマホを持ってピッとやると、1,000円以内のお食事が無償で食べられますよ、というのを『こどもごちめし』でやっています」と紹介。
「これのいいところは、PayPayとかで払っているのと見分けがつかないので、こどもや親御さんのプライバシーも配慮できているし、飲食店を選んで行けばいいだけなので、月1とかのこども食堂を待たずに行きたいときに行ける」とメリットを語ると、小山からは「ありそうでなかったですよね!」と感嘆の声が。
こうした活動の原動力について、今井さん「ありそうでなかったことを探すのが大好きなので。新規性が高いことをやるのは楽しいけど本当に大変で……国を口説きに行ったり、議員会館に呼ばれてはいろんな陳情をしたりとか、いろいろ大変なんですけど、その先には楽しさしかなくて。チャレンジする面白さは圧倒的にありますね」と熱弁します。
小山から「次に、やりたいことはあるんですか?」との質問に、今井さんの答えは、音楽業界への還元。
「『ごちめし』は、つまりはプラットフォームビジネスなんですね。一方で、僕は音楽家として30年くらいお仕事をしてきて、いま、既存のいろいろな音楽配信サイトって著作者への分配があまりに低いんです。ですから、こういったプラットフォームビジネスを学んだ私が、若手の音楽家たちが“もう1回音楽をやりたいんだ!”と奮起できるような、新しい分配システムとか。例えばスマホのアプリはバージョンの改良が出たり、書籍も初版で間違ったあとに直せたりするじゃないですか。音楽って直さないんですよ。これは世界中の作家が同じことを思ってくれると思うんですけど、『あそこ、もうちょっとああしたかったな』って絶対にあるんです。そういう自分の曲をアップデートしながら、過去のアーカイブも残せるみたいなことができるようなサービスを作りたいな、と。音楽家である自分の気持ちをプラットフォームに乗せたようなことが最後にできるといいなと思っています」と話していました。
<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00〜15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/post/

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