異例の“修正指示”から5年! 超イワク付きドキュメンタリー『解放区』公開

10月18日(金)17時31分 まいじつ


映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『解放区』


配給/SPACE SHOWER FILM テアトル新宿ほかにて公開

監督/太田信吾

出演/太田信吾、本山大、山口遥、琥珀うた、佐藤亮ほか


この映画〝いわく付き〟である。5年前の東京国際映画祭の上映で観たのだが、その後公開されることなく、やっとの正式公開を祝したい。今回、再鑑賞したが、かつてのインパクトは色褪せないどころかさらに増幅し、5年待ったかいもある、と作り手たちを励ましたいほど。実像と虚構の垣根を超えようとして、人の一線を越えてしまう主人公に反発とシンパシーを山ほど感じたからだ。


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小さな映像会社に勤めるスヤマ(太田信吾)は、一本立ちしてドキュメンタリー作家になる日を夢見て、厳しい現場にも耐えてきたが、ある現場で先輩の理不尽な取材姿勢に、怒りを爆発させてしまう。居場所をなくした彼は、かつて出会った少年のその後を知るために、大阪・西成に飛び、独自の取材を続けるが、自分の弱さ、甘さゆえに後戻りできない道へと踏み込んでしまう…。


 


カオスへと一直線に…


当初、助成金を出した大阪市が、意向に沿わない内容ゆえに、一部修正を求めたが、太田監督がこれを拒否し、助成金も返還、自ら納得のいく形を目指したのがこのバージョン。〝R−18〟にも指定されたのは逆に名誉と言えるだろう。確かにセックスあり、覚醒剤あり、ズブズブと堕落してゆく主人公に賛否両論はあろうし、物議必至の内容である。安普請の部屋で行きずりの女とのセックス・シーンはすえたニオいが漂い、本当にヤッてんじゃないか、と思うほど妙にリアル。覚醒剤シーンもマジ打ってんじゃねー? と錯覚するほどの迫真力。その中で描かれるのは、かつて現場での理不尽さに散々疑問を抱いたはずの彼もまた誠実さを失ってゆく姿だ。


東京で取材した引こもりの青年を大阪まで呼び出し、のらりくらりと言い訳しながら仕事に協力させ、おまけに都合のいい話を出して金をせびろうとするあたり最悪で、「結局、お前の先輩とやってることは同じだろ」とツッコミを入れたくなるほど。青クサいとも言える映像作家未満の青年の彷徨と逸脱が虚実皮膜でスリリングに描かれる。ホントにコイツどうなっちゃうんだ? とつい親身になってしまうのは、映像と演出の力だろう。監督・主演の太田信吾、助演の本山大もまたハンパない存在感を見せつける。


再開発の美名の下で、都会の〝片隅〟がどんどん排除、淘汰されてゆく現実の中、この映画はカオスへと一直線に突き進む…。公開規模は違っても、現在公開中の洋画で、超話題作にして傑作の『ジョーカー』と、ついシンクロしてしまうほどの刺激がここにもある。


 


まいじつ

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