料理系YouTuber速水もこみちと水嶋ヒロ 似て非なる情熱

10月20日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 第何次ブームと呼べば良いのか、芸能人・有名人によるYouTuberデビューが相次いでいる。そのなかでも注目を集めたのが、二人のイケメン、速水もこみち水嶋ヒロが、料理をテーマとしたYouTubeチャンネルを開設したことだ。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、新米YouTuberふたりの共通点とそれぞれの個性、将来性について考えた。


 * * *

 先日、イケメン俳優が立て続けにYouTuberデビューした。速水もこみちと水嶋ヒロである。すごい偶然、両人共に料理に関する動画を配信中。将来が嘱望された俳優だったが、いまいち大成できなかった2人。彼らの情熱は今、シンクロしている。


 ひとえに料理動画といっても、それぞれのカラーが反映されたものとなる。速水の動画は2011年から2019年まで朝の情報番組『ZIP!』内で担当した料理コーナー「MOCO'Sキッチン」の延長線上にあるものだ。当コーナーで速水は港区にある高級スーパーでしか手に入らないような素材をプロ仕様の料理器具で調理し、一般人には作ることが難しい料理を数々生み出してきた。


 話は逸れるが、速水は芸能界イチと言っていいほどのスタイルを持つタレント。しかし、完璧すぎる頭身に悩まされた俳優でもある。速水の隣に一般的な頭身を持つ女優が立つと画面のバランスは途端におかしくなる。速水の8頭身はドラマで変な目立ち方をしていた。対して「MOCO'Sキッチン」は速水の独り舞台、大きなキッチンは大きな身体を生かす舞台装置となる。包丁でまな板をリズムミカルに叩く、長い手を生かし塩はなるべく高い位置からまぶす、極めつけはふんだんに注ぐオリーブオイル。


 速水は「モテたい」ために料理を覚えたらしい。完璧なルックスの男がカッコつけて料理をしている。様になりすぎると、どこかユーモラスに映る。速水に視聴者がツッコミを入れつつ鑑賞するのが「MOCO'Sキッチン」の流儀だ。


 長年の月日が積み上げた速水と視聴者の共犯関係はYouTubeでも続く。9月末に開設された『M's TABLE by Mocomichi Hayami』でも"もこみちっ!"が高いとしかいいようがない料理を生み出している。なかでも、個人的にグッときたのが1本目の動画。自らのチャンネル開設を祝して作ったオリジナルケーキ「M's ケーキ」は冴えていた。


 ドライフルーツを練りこんだスポンジにクリームを塗る、ここまでは想定の範囲内(珍しいドライフルーツだったけど)。しかし、デコレーションの段階から"もこみちっ!"は急上昇していく。「ここからがすごいよぉ〜」と速水が持ってきたのが食用花。「みんなドキドキな感じ?」とスタッフに聞きつつ、ケーキに花をピンセットで刺していく。料理だと思っていたら、いきなり花道になっている。想定できない出来事には誰もがドキドキしてしまう。クリームが見えなくほどに花でケーキを覆えば完成速水は「どこにもないようなケーキが完成しちゃいましたっ!」と無邪気に喜ぶ。初回から一般人の理解が及ばない料理が登場した。


 速水から約1週間後、水嶋ヒロの動画『Japanese Home Style Cooking Hiro Mizushima』も配信された。これまた負けず劣らずの濃い動画だった。冒頭から他の料理動画と異なった魅力押し出す水嶋。「3分44秒」コレ、なんの時間かお分かりだろうか。水嶋が料理を始めるまでにかかった所用時間である。#1の全動画時間は8分38秒、そのうち前半3分44秒は水嶋が自身の料理観を語る時間にあてられる。下記の3点が重要項目である。


【1】料理初心者の水嶋がこの動画を作る理由。

【2】日本の家庭料理の可能性。

【3】初回に作ることになった「からあげ」について。


 水嶋にとって「からあげ」とは一番身近な家庭料理のひとつであり、どこの家庭にもオリジナルレシピがある料理、日本人にとってのソウルフードだと言う。そして、最後に漏れたのが「娘にパパの唐揚げおいしいね!と言ってもらいたい」といった本音。水嶋は娘に「モテたい」ために料理と対峙する。


 自身の語りの長さに気づいたのだろうか、半笑いで「もうやろうか!」と料理をスタートさせた水嶋。料理以上に語りが印象に残った。


 帰国子女、高校サッカー選手権出場、俳優、ベストセラー作家の水嶋、速水とは異なったベクトルで完璧な男である。しかし、動画を観ていると意外にも不器用な素顔がのぞく。下ごしらえからつまずく。鶏モモ肉から余分な脂身を上手く取り除くことができない。包丁が油で滑り「あぁ〜」とため息。悪戦苦闘しながら調理を続けていく。そして、完成した水嶋作の「からあげ」。黒鉄の皿に載せられたせいか、家庭料理でありながら含蓄のある佇まいを醸し出す。動画は「Sushi Tempura Geisha〜♪」「Manga Otaku Bento Bento〜♪」「Karaoke Sake Konbu〜♪」といった日本らしい単語が連発する歌が流れ、終わっていく。


 この2人の動画を全て鑑賞した後、そこははかとない奇妙さが残った。速水、水嶋の動画は、料理動画というジャンルでありながら、料理の作り方に主題に置かれていない。『M's TABLE by Mocomichi Hayami』『Japanese Home Style Cooking Hiro Mizushima』共に料理ではなく2人が前面に出ている。速水、水嶋の抑えられない個性は料理を薄口に……。ある意味、料理動画に寄せたドラマと捉えた方が腑に落ちる動画。速水、水嶋が演じるのは主役の料理人、ゆえに自ら作った料理を試食することはない。


 奇しくも同時期に料理系YouTuberとなった2人は互いに意識しているはず。84年生まれのイケメン俳優、今後どちらの動画がバズっていくのだろうか。ちなみに現在はほぼ互角(水嶋が検討していることに驚いた)。


●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

NEWSポストセブン

「YouTube」をもっと詳しく

「YouTube」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ