介護費用の平均値は? 生前贈与、成年後見制度のデメリットは? 認知症による資産凍結トラブルを防ぐための〈お金の知識〉

10月22日(金)18時0分 婦人公論.jp

自分が認知症になることを想定して準備を進めるのは、誰でも腰が重くなるものです。しかしタイミングを逃すと、資産を自分の介護に使えない、余計なお金がかかるなどのデメリットがあると、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは指摘します(構成=山田真理 イラスト=浜野史)

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介護を支えるお金の仕組みは?


私は、認知症の介護に必要な3つの資源を「情報」「お金」「時間」と考えています。お金が不足する可能性があるなら、時間をかけて、使える制度の情報を集める。時間が割けないなら、自宅などを売却してお金を捻出する。

こうした準備を怠ると、思うような介護を受けられなかったり、子どもに負担をかけたり、本来は払わずに済んだお金が余計にかかったりなど、大変な思いをしかねません。

まず「介護は、自分のお金(年金・資産)でまかなう」ことが前提、と心得ましょう。下図のように、《介護を支えるお金》の土台となるのが「公的制度」。公的制度では足りない分を「預貯金などの資産」、そして「民間保険」で補う、と考えてください。

自分が使える公的制度の情報を集めるには、自治体によって受けられる制度や介護サービス、費用が異なるため、「地域包括支援センター」に相談するとよいでしょう。

公的制度のなかでも、特に重要なのが「公的介護保険」。要介護度に応じた限度額までなら、費用の一部(1〜3割)を負担することで「訪問介護」や「デイサービス」などの介護サービスが受けられます。また、年収に応じて自己負担が一定額を超えれば、「高額介護サービス費」で負担軽減が可能です。

「預貯金などの資産」と「民間保険」をまず整理


ほかにも、市区町村が主体となって独自に《食事の宅配》や《見守り》など幅広いサービスを提供する「公的介護保険外サービス」。医療費が高額になっても、自己負担を一定額に抑えられる「高額療養費制度」。おむつ代などの介護費用は、医療費控除を受けることで還付される制度があります。申請時期を逃すと利用できない制度もあるため、あらかじめ調べておき、介護費用の節約につなげましょう。

「公的制度」で受けられる介護サービスを把握したら、次は自己負担分、介護保険が適用されないサービス、要介護度に応じた限度額を超えた分などをまかなう「預貯金などの資産」「民間保険」を確認・整理します。

お金があれば必ずよい介護が受けられるわけではありませんが、お金で多少のことは解決できるのも事実。選択肢を広げるためにも、「預貯金などの資産」と「民間保険」の事前準備と整理は欠かせません。

なにより注意したいのが、認知症で意思能力がないと判断されると、本人はもちろん家族であっても、預貯金を引き出す、保険を解約するといった法律行為ができなくなってしまうこと。先々のことを考えてお金を蓄えておいても、いざという時に使えなければなんの意味もありません。

ファイナンシャルプランナーとして多くの事例を見てきて思うのは、やはり「介護とお金の問題は早めの対策が重要」ということです。家族がいる方、介護を頼みたい相手がいる方は、必ずお金に関する情報を共有するようにしてください。

認知症による資産凍結トラブルを防ぎ、また貴重な資産を有効に使うためにも、以下の1〜3のステップの順に準備をすすめましょう。

介護のお金STEP(1)介護費用の平均値を知ろう


介護にトータルでいくらかかるかは、(1)施設介護か在宅介護か、(2)介護期間、(3)要介護度、(4)求める介護内容、(5)治療費や入院費、などで変わるもの。それ以外にも、遠方に住む家族が介護する場合には、交通費や宿泊費などの出費も考えられます。

平均値を参考に、「在宅で介護を受けたい」「あの施設に入りたい」といった希望と資産状況を照らし合わせて、どこまで実現できるかを考えましょう。

下記の数字は2018年度の日本の平均値。「500万円あれば大丈夫」などと決めつけず、あくまでも目安と考えてください。

※出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年度)

介護のお金STEP(2)資産の洗い出しと整理をしよう


毎月の収入・支出、そして資産・負債を洗い出して、書き記します。この全体像がつかめないと、自分の介護にいくらかけられるのかを想定することができません。まずは下のチェックリストを使って確認してみましょう。

次に、介護が必要になった時にお金がきちんと使えるよう、資産を整理します。

使っていない銀行口座やクレジットカードの解約、定期預金を普通口座に預け替える、などは本人が手続きしたほうが簡単に済むので、元気なうちに行うことをおすすめします。資産が心もとないようであれば、介護保険や認知症保険などの民間保険を検討してもよいかもしれません。

介護のお金STEP(3)資産の管理方法を決めよう


認知症で意思能力がないと判断されると、財産保護のために銀行が口座を凍結することがあります。そうなると自分のための生活費や介護・医療費を引き出せなくなり、子どもがその肩代わりをしなければならなかったり、希望する介護サービスが選べない事態に陥る可能性も。

元気なうちに次の4つの選択肢から準備をしておくことで、認知症になっても資産をきちんと自分のために使うことができます。それぞれにメリット・デメリットがあるので検討してみましょう

●「生前贈与」のメリット・デメリット●


「年間110万円以下」の贈与税非課税枠を使って財産を渡した相手に、それを介護費用として使ってもらう

【メリット】

・法律や契約のしばりを受けないので、自由な介護費用の使い方ができる
・財産を減らすことで相続税対策になる

【デメリット】

・贈与したお金がきちんと使われているか、チェックすることが困難
・相続が発生した時に、家族がもめる可能性も

●「家族信託」のメリット・デメリット●


不動産や預貯金(現金)などの管理や処分を、信頼できる家族に託す契約を結ぶ仕組み。裁判所への報告義務はなく、受託者となった家族は財産を柔軟に使うことができる

【メリット】

・財産の管理・処分を託す先が家族なので、契約内容に本人の意思を反映しやすい(成年後見制度より自由度が高い)
・信託契約を結べば、意思能力に関係なく財産管理・処分ができる

【デメリット】

・認知症になった後では信託契約は結べない

・財産を管理する人に対する公的チェック機能はない
・信頼できる家族や第三者がいない場合は利用できない

●「代理人キャッシュカード」のメリット・デメリット●


代理人に選任された家族や親族が、本人に代わってATMで入出金できるキャッシュカード。1つの通帳につき1〜2枚作ることができます

【メリット】

・口座の名義人が寝たきりや認知症になっても、代理人に選任された家族が必要なお金を引き出せる

【デメリット】

・認知症になった後では作れない
・1日にATM利用限度額までしか引き出せないため、大きな金額は数日に分けて引き出す手間がかかる

●「成年後見制度(任意後見)」のメリット・デメリット●


財産管理や契約の締結などを行ってもらう任意後見人を自分で選び、契約を交わす制度。認知症で意思能力がないと判断されたら、任意後見人が家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立て、仕事をスタートします

【メリット】

・任意後見人の選定や介護の内容など、本人の希望を反映させやすい
・任意後見人の仕事は任意後見監督人によってチェックされる

【デメリット】

・認知症になった後では制度の申請ができない
・本人の意思能力が低下するまで、任意後見人は財産管理を行えない
・任意後見監督人への報酬が発生する(任意後見人への報酬は話し合いで決める)

▶︎「成年後見制度(法定後見)」とは?

認知症などで意思能力が低下した後に、財産管理や契約の締結などを行う成年後見人を選任できる制度です。選任は家庭裁判所が行い、弁護士や司法書士が成年後見人・監督人に選任されるケースが多く、報酬が発生します

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