早くも賞レースで有力視!? 気難しい父に振り回される『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』

2017年10月25日(水)20時49分 シネマカフェ

『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』Netflixにて独占配信中

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アダム・サンドラー、ベン・スティラーダスティン・ホフマンが、めんどくさい親子を演じるホームコメディ『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』。Netflixで全世界同時配信が始まったが、米映画レビューサイトRotten Tomatoesでは93%の高評価で、早くも賞レースで有力視されている。

気難しい父に振り回される一家をユーモアたっぷりに描くのは『ヤング・アダルト・ニューヨーク』、『フランシス・ハ』の才人ノア・バームバック。現代人の抱える悩みを軽妙に描き、次世代のウディ・アレンとの呼び声も高い。5月のカンヌ映画祭では、Netflix作品として初めてコンペ入りしたことで「配信作品は映画なのか?」という議論を呼んだ話題作だ。


舞台はニューヨーク。彫刻家の父ハロルド(ダスティン・ホフマン)が家を売ると言い出し、3兄妹が久しぶりに集合する。長男ダニー(アダム・サンドラー)と長女ジーン(エリザベス・マーヴェル)が冴えない毎日を送る中、異母兄弟の弟マット(ベン・スティラー)だけは会計士として成功しており、会ってもぎくしゃくするばかり。一方、ハロルドも芸術家として過小評価されていることに不満で、イライラしてばかり。家の売却と共に、家族はバラバラになってしまうかに見えたが…。

自分勝手な父親に振り回されつつ、実は似たもの同士の息子たち。特に、弟にコンプレックスを持つ専業主夫のダニーを演じるアダムの演技が絶妙で、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるのは決まったも同然だろう。ジーン役のエリザベス・マーヴェルも「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の国務長官と同じ人とは思えぬ、名演技を見せている。


一流になれなかった人間は、どう気持ちの折り合いをつけるのか。愛情をうまく示せない家族は、どうやり直すのか。脚本も手がけるバームバックは、このテーマについてこう語る。「成功の定義、というものに興味があった。彫刻家として成功するなんて、100万人に1人しかいない。長男のダニーは夢は諦めたけど、娘にとっては素晴らしい父親で、その意味では十分成功しているに気づいていない。僕だって主流の監督じゃないけれど、自分の好きなように映画を作ることが出来ている。そんなことを投影しているんだ」。

また、劇場ではなくNetflixでの配信を選んだことに対しては「元々、インディーズ映画として16ミリ・フィルムで低予算で撮っていたところ、Netflixが編集段階で資金を出してくれたんだ。だからあくまで映画として作っているし、機会があれば大きなスクリーンで観てほしいとは思う」と心情を明かした。

ダニーを演じるアダムは、バームバック作品は初めて。「前からノアの映画に出たくて、ようやく実現したんだ。そしたら170ページもの脚本が届いて驚いた。でも素晴らしい脚本だから、撮影前に全部頭に叩き込んだんだ。僕が演じるダニーの娘は大学で遠くへ行ってしまうが、うちの子もいつか巣立つと思うと、淋しくてしょうがないよ」。


一方、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』などバームバック作品の常連ベンは「僕はアダムと正反対で、セリフは直前に覚えるけどね(笑)。でも、この映画には共感する部分が多い。僕もアダムも子どもがいて、親を看取る経験をしてきたし、すごく共感できたんだ。それに父親がダスティンだなんて、超クールだよ」と語った。

名優ダスティンが、せこくて傲慢だが愛嬌のある父ハロルドを演じて、大いに笑わせてくれる。「ハロルドという人物について、ノアと話し合ううち、『おや、これはまるでうちの父親じゃないか』と気づいたんだ。最初は全然そう思わなかったけれど、似た部分がとても多かった」。ほかにもハロルドの現在の妻を演じるエマ・トンプソン、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』にも出演したアダム・ドライバーが、登場シーンは少ないものの印象的な芝居を見せる。なぜ、題名に<改訂版>(英語ではNew and Selected)がつくのかは観てのお楽しみ。家族の物語は、そう簡単には終らないのだ。

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