【インタビュー】永野芽郁&田中圭、絶妙な距離感から生まれた“親子”の信頼関係

2021年10月26日(火)7時45分 シネマカフェ

田中圭&永野芽郁『そして、バトンは渡された』/photo:Maho Korogi

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永野芽郁田中圭の朗らかな笑い声が上がると、室内のムードが一段と明るくなった。スチール撮影中、永野さんが以前勧めたという韓国ドラマを「観たよ!」と勢いよく告げた田中さん。しかし、その感想は「普通かな(笑)?」と茶目っけたっぷりで、永野さんは思わず「ええ〜!本当にちゃんと観ました!?」と目を丸くしつつ食い下がる。田中さんに熱弁をふるう永野さん、笑顔でやさしく見つめる田中さん。いつまでも眺めていたくなるほっこりな姿は、初共演した映画『そして、バトンは渡された』にて演じた、血のつながりのない親子に重なるようだった。

『そして、バトンは渡された』は、これまで4回も苗字が変わった森宮優子(永野芽郁)と料理上手な義理の父親・森宮さん(田中圭)、自由奔放で目的のためには手段を選ばない梨花石原さとみ)と義理の娘・みぃたん(稲垣来泉)という、血のつながらない2つの家族の物語。優子は、わけあって森宮さんとふたり暮らしを送り、同じ高校に通う早瀬(岡田健史)に恋心を抱いている。一方、梨花は何度も夫を変え自由奔放に生きているが、泣き虫な娘のみぃたん(稲垣来泉)に目いっぱい愛情を注いでいる。ふたつの家族が一体どう交わるのか——。

並々ならぬ思いで本作に臨んだ永野さん&田中さんに、たっぷりと話を聞いた。


永野さんが思う田中さんと役との共通点「私に向けてくれる優しさ、同じやわらかさがある」


——『そして、バトンは渡された』は、第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの同名ベストセラー小説の映画化です。原作または脚本を読んで、どのようなインスピレーションを受けましたか?

永野:原作は元々読んでいました。涙するシーンも感動もあって、すべて「温かい」という感情の中で動くものだな、すごく優しい本だな、と思ったんです。脚本になってもそこは失われずに描かれていたので、原作の良さを自分の中で持ちつつ挑めたらいいな、と思いながらやっていました。


田中:僕は、原作は読んでいないです。原作と脚本との違いはあまりわかっていないんですけど、脚本を読んだときに作りとして「本当によくできているな」と思いました。

——演じた役とご自身との共通点や、例えば永野さんから見て「田中さんのこういうところが森宮さんっぽい」というところなどはありましたか?

永野:私と優子との共通点は、割と何事もポジティブに捉えているところや、笑顔でいることを心がけようと思っているところ、ですかね。田中さんと森宮さんで言うと、森宮さんが優子に対して向ける優しさと、田中さんが私に向けてくれる優しさが、同じやわらかさがある気がするんです。撮影が終わって、今こうしたプロモーション期間でお会いしたときのやわらかさが、森宮さんの優しさとなんだか近いなあ、って。

——田中さん、自覚はありますか?

田中:そうですね、やっぱり芽郁ちゃんがお嫁にいくまでは、しっかりと!


永野:(笑)。


田中:僕と森宮さんの一番最初の大きな共通項として、父親である、ということがありました。優子ちゃんとは年が近いとか、血がつながっていないとかはあったけど、大きな括りとして大丈夫だろう、という感じで入ったんです。…けど、自分の実体験は全然参考にならなくて(苦笑)。現場では自分の感覚を忘れて、イチから作り直しました。なので、共通点はあまりなかったかもしれないです。

僕は原作を読んでいないのもあって、芽郁ちゃんが生きているから優子ちゃんになっているという感じで見ていました。ポジティブなところ、キラキラしているところも芽郁ちゃんとの共通点というか、芽郁ちゃんからしか優子ちゃんは生まれないなと感じました。




永野さんを観察していた田中さん「結構わかりやすい!」


——現場で、「あ、本当に親子みたいだな」と感じたときもありましたか?

永野:田中さんとの現場の距離感こそが、「あ、親子だな」とずっと思っていました。近すぎず、遠すぎず、ずっと話しているわけでもなく、同じ空間にいてもしゃべらない時間もあって。それは最初から田中さんが森宮さんという父親として、向き合ってくれていたからだと思います。

——田中さんは、意識していらしたんですね。

田中:最初のほうは、沈黙になるとどうしても「しゃべりかけたほうがいいのかな、コミュニケーションを取ったほうがいいのかな?」と思うんです。けど、まずお芝居でコミュニケーションが取れるなとわかりましたし、芽郁ちゃんを観察していると、結構わかりやすくて(笑)。嬉しそうなときは嬉しいのが出る、眠いときは眠いのが出る、本当に素直な反応をするんですよ(笑)。ふたりでソファに一緒に座ってスタンバイしているとき、何の会話もなくても、ぽーっとした顔をしていると、「あ、本当にぽーっとしてるんだろうな」と思うから放っておけるし、話したければ話せばいいや、という感じでした。

今思うと、そのすごく素直な感じは、親子というか、森宮さんとして見ている優子ちゃんの、問答無用の「自分が守らなきゃ、育てなきゃ」みたいなところに数%ぐらいはリンクしていたのかな、と思います。

——改めて、完成作をご覧になっての感動や一押しポイントなども教えてください。

永野:完成作を観ると、私が観ていないシーンもいっぱいあったので、「あ、このシーン、こうなっていたんだ!」と発見するところがすごく多かったです。登場人物がそれぞれを想い合いながら過ごしているから、人を想う気持ちがこんなに美しいものなんだな、と改めて感じました。それに、ダークさを感じさせない作品ができたことへの達成感と喜びみたいなものもありました。

——演じているときは、優子の心情に寄り添いすぎてしまい、苦しかったときもあったのでしょうか?

永野:ありました。「本当はこうしたかったのに…」と優子が思っているところは私もそう思っていたので。でも、それは完全に優子の気持ちだけだから、みんなのことを考えたら、もしかしたら自分本位な考え方かもしれないけど…という葛藤もあったりしました。




ふたりにとって家族とは?「一番言葉を信じなきゃいけない」「離れていても近くにいる」


——田中さんは、完成作をご覧になって特に感動ポイントはどこでしたか?

田中:僕はもう、優子ちゃんと森宮さんが初めてケンカをするところですね。ふたりはずっとお父さんと娘でやってきているけれど、血がつながっていなくて、けどふたりの絆はあって、それまではケンカをしたことがなかった。というよりも「ケンカもできないんだね!」なんて優子ちゃんに言われていたけど、初めてケンカができたときに、「あ、ケンカできた!」となりました。ネタバレになるので詳細は言えませんけど、その内容がまた…ね。嬉しいんだか、悲しいんだか、よくわからないぐちゃぐちゃな感情で。優子ちゃんを見ていて、そこで僕は感情が一気に動きました。

——あのシーンは田中さんが演じたからか、森宮さんの父性や懐の深さが非常に出ていたように感じます。

田中:出ちゃうんですよね〜。…出ちゃったんでしょうね(笑)!

——(笑)。田中さんから見て、あれだけ愛情を注いで優子を育てている森宮は、どんな風に映りましたか?

田中:いや、とても楽しいと思うんです。あんなにかわいい娘と絶妙な距離感でいられて、ずっと彼女を応援できて。きっと、あのふたりはこれから先もずっとあの距離感だろうし、「あー、すごい幸せだな」と思います。森宮自身も、「優子ちゃんが生きる意味をくれた」と言っているじゃないですか。本当にそうなったんだろうなとうなずけるくらい、すごく楽しそうというか、幸せそうだなと思いました。

——家族の形が描かれた作品です。おふたりにとって、家族はどういう存在でしょうか?

永野:うーん(悩)。


田中:一言で言うの、難しいよね。家族って、いろいろな側面があると思うんです。離れていても、一番近くにいるのが家族というか。うちは比較的何でもしゃべる家族なんですけど、今まだチビたちが小さいので「大きくなったら何にもしゃべってくれなくなるのかもな」とも思いますし。家族って、本当に人によっても、歳によっても違うものだと思いますが、近くにいるということは間違いないと思います。


永野:そうですね。味方とか、そういうことですかね…?


田中:味方だよね。


永野:ですよね。もしも私がめちゃくちゃ悪い人間になったらわからないですけど、失敗しても味方でいてくれますし、頑張っている姿を見せても一緒に喜んでくれる存在が家族です。とにかく家族が一番ストレートな意見を言ってくれるので。一番言葉を信じなきゃいけない人たちだな、と思っています。

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