すぎやまこういち氏が2020年度の「文化功労者」に選ばれる。『ドラクエ』シリーズだけでなく音楽の人気シーンを牽引、テレビ業界でヒット番組手掛けた過去も

10月27日(火)20時51分 電ファミニコゲーマー

 政府は2020年度の文化功労者として、『亜麻色の髪の乙女』『ドラゴンクエスト』シリーズなどで知られる作曲家のすぎやまこういち氏を選出したと発表した。文化功労者は、文化の向上発達について特に功績の顕著な人を表彰することを目的としており、文部科学大臣が決定する。NHK時事通信などが報じている。

(画像はキングレコードより)

 Twitterでは「すぎやまこういち先生」がトレンドに入るなど、多くのファンや関係者が、すぎやまこういち氏のこれまでの功績を称えた。すぎやまこういち氏は『ドラゴンクエスト』シリーズの作曲家として有名だが、テレビ業界の敏腕ディレクターとしての顔や、1960年代から70年代にかけての日本のポピュラーミュージックを支えた人功績でも知られている。

譜面とわずかなレコードを頼りに、独学で音楽を学ぶ

 すぎやまこういち氏は1931年4月11日、東京生まれ。幼少のころより音楽を愛する家庭で育ち、おもちゃよりもベートーベンのレコードを買ってもらうほうが嬉しかった子供だったという。戦後まもないときであり、レコードが少なく、またすべて買うのにも金銭的にも厳しいことから、わずかなレコードを聴きまくり、譜面をたよりに独学で音楽を学んだ。

 高校在学中より作曲を開始。東京大学卒業後に文化放送に入社した後、開局1年前のフジテレビに入社した。こうした放送局に就職したのは、高い授業料を払って音楽学校に入るよりも、働きながら現場で音楽を学べる機会があると考えたからだという(参考リンク:JASRAC会員作家インタビュー)。

(画像はJASRAC会員作家インタビュー すぎやまこういちより)

フジテレビでヒット番組を手掛ける

 こうして日本のテレビ局の創成期に携わることになったすぎやまこういち氏は、ディレクターとして「おとなの漫画」「ザ・ヒットパレード」「新春かくし芸大会」などの多くのヒット番組の演出を手掛ける。

 とくに音楽番組の草分けのひとつ「ザ・ヒットパレード」はすぎやま氏が企画したもの。生放送で楽曲やメロディに合わせてカット割をするために、スタッフにも楽譜を読めること求めた。また、この番組に携わった作曲・編曲家の宮川泰氏との交流を通して、音楽の勉強にもなったという。

番組制作の舞台裏は『ザ・ヒットパレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語〜』としてテレビドラマ化されており、原田泰造さんがすぎやま氏を演じている。
(画像はポニーキャニオン『ザ・ヒットパレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語〜』より)

 こうしたディレクター業の傍ら、番組テーマ曲、CM、歌手への楽曲提供などの作曲家としても活動を始めている。1965年の36歳のときにフジテレビを退社。フリーのディレクターとして活動しつつ、同年にはボニー・ジャックスの『ボンド小唄』の作曲家として、レコードデビューした。

日本のポピュラーミュージックシーンを牽引

 1968年には作曲活動に専念し、この時期は日本では「グループ・サウンズ」と呼ばれるビートルズなどの欧米のロックバンドに影響を受けたロックバンドが日本では興隆しており、すぎやま氏は沢田研二さんが所属していたザ・タイガースや、ザ・ピーナッツなどの楽曲を提供して、日本の60年代後半から1970年代のポピュラーミュージックシーンを支えた。

 『亜麻色の髪の乙女』、『花の首飾り』『恋のフーガ』『学生街の喫茶店』など多くのヒット曲を生み出し、とくにヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」は、2002年に島谷ひとみさんがカバーして再びヒットを記録した(参考リンク:産経ニュース)。

アニメ、特撮、そしてゲーム音楽『ドラゴンクエスト』

(画像はMy Nintenndo Store『ドラゴンクエスト』より)

 70年代から80年代初頭にはアニメの主題歌やBGMも手掛け、劇場版『科学忍者隊ガッチャマン』や、富野由悠季氏が監督した『伝説巨神イデオン』、劇場用アニメ『シリウスの伝説』などの仕事が知られている。また特撮の分野では『帰ってきたウルトラマン』『ゴジラ対ヘドラ』『ゴジラVSビオランテ』の楽曲を手掛けている。

 1980年代半ばからはゲーム音楽に進出。もともとピンボールやバックギャモンなどのゲームに造詣が深く、エニックスが発売していた『森田和郎の将棋』のアンケートハガキから、ゲーム音楽に本格的に進出。『ウイングマン2 キータクラーの復活』を皮切りに、『ドラゴンクエスト』シリーズ、『ジーザス』『46億年物語』『風来のシレン』などの作品の楽曲を手掛けた。

 特に第1作『ドラゴンクエスト』では、ファミコンのノイズ音を除いて、3音のなかにクラシック音楽を表現し、大々的にゲーム音楽のなかにクラシックを導入した。1週間というタイトなスケジュールのなかで作曲し、有名なメインテーマは5分で構想ができあがったという。(参考リンク:社長が訊く「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」

(画像はAmazon『交響組曲「ドラゴンクエストXI」過ぎ去りし時を求めて すぎやまこういち 東京都交響楽団』より)

 『ドラゴンクエスト』シリーズは社会現象になるほどの大ヒットとともに、以後、すぎやま氏のライフワークのひとつとなった。交響組曲「ドラゴンクエスト」シリーズは、東京都交響楽団、NHK交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団によって録音されたものが、それぞれCDとして発売された。

 ほかにもスターダンサーズ・バレエ団によってバレエ演目になるなど、すぎやま氏の音楽の世界観が広がりをみせた。すぎやま氏も青少年のオーケストラ入門になればという想いで、みずからが指揮をとるコンサートを各地で行っている。

 テレビ業界の華々しい経歴やポピュラーミュージックシーンを牽引した経歴を持ちつつも、『ドラゴンクエスト』の仕事を「天職」と言って自負していることをはばからない。ゲーム音楽に与えた影響は大きく、すぎやま氏の音楽を聴いてゲーム音楽家になった人も少なくない。

 今年で89歳という高齢だが、NHKでは「日本の音楽文化に対して功労があると認められたことはすごく名誉なことだし、努力した甲斐があった。これから先、ゲーム音楽も引き続きやっていくでしょうし、ゲーム音楽ではない分野でも今までやったようなことをやっていく。今までやってきたことの延長線上で頑張るということです」と語り、これらも活躍する意欲をみせた。文化功労者の顕彰式は11月4日に行われる予定だ。

ライター/福山幸司

ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman

電ファミニコゲーマー

「文化功労者」をもっと詳しく

「文化功労者」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ