松本俊彦「人は誰でも何かに依存して生きている。ではどこからが『依存症』という病気なのか」

10月28日(木)12時7分 婦人公論.jp

依存症の専門医として著名で、メディアへの出演も多い松本俊彦先生が依存症についての本を刊行しました。「中学生から大人まで幅広い層が読めるようにまとめた」と語る、その真意とはーー。(構成=古川美穂)

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「ダメ。ゼッタイ。」は当事者を孤立させる


私の専門は薬物依存の研究ですが、仕事の半分以上は診察や治療です。なかでも10代の患者さんを診ると、いろいろなことを考えさせられます。

カフェインを含んだエナジードリンクを摂ることから始まり、市販薬を乱用したり違法薬物に手を出したりするうち、さまざまな健康被害やトラブルが出てくる。依存症にはほかにもゲームやスマホへの耽溺、さらに依存に類似した現象として摂食障害や自傷行為があります。

彼ら彼女らが病院に来る手前で病だと気づき、適切なサポートが得られたらと思い、『世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?』には具体的なエピソードを多数盛り込みました。

ところで、厚生労働省の薬物乱用防止キャンペーンでは、「ダメ。ゼッタイ。」というキャッチコピーが30年以上も使われていますが、薬物を使用した人を完全否定するようなこの言葉は、当事者を孤立させ、治療への道を阻む危険があるのです。

否定するのではなく寄り添う考え方を提案する本があればと、ずっと思っていました。本書は「14歳の世渡り術」という叢書の1冊ですので中学生でも読めるように書きましたが、大人の方にも広く依存症について理解していただきたいと思いながらまとめたものです。


松本俊彦『世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?』河出書房新社1562円

意志が弱いのではなく強すぎる方が多い


依存症の専門医としてメディアの取材を受けることも多い私ですが、実は依存症に関わるようになったのは、担当の科を決めるときにジャンケンで負けたから(笑)。その後、臨床を重ねるうちにこの病気の「人間くささ」に惹きつけられていきました。

人は誰でも何かに依存して生きている。では、どこからが病気なのか。

最初はストレスを解消し、生活の質を高めるために愛好していたことが、いつの間にかそれによって生活の質が低下しているにもかかわらず手放せないという逆転現象が起きたときが病の始まりです。薬物や特定の行動によるドーパミンの活性化で脳の報酬系回路に異常が起きる。この依存症の仕組みは、薬物やアルコール摂取でも、ギャンブルや買い物などの行為でも変わりません。

「依存症の人は意志が弱い」と誤解されがちですが、実際は逆に意志が強すぎる方が多い。普段はとてもいい人で、人に愚痴ったり泣きついたりせず化学物質や行為で自分の心を鎮めようとする。他人に頼らず薬やお酒を使って正気を保っている人たちなのです。

かくいう私も、喫煙者でして(笑)。私自身は、気分転換の方法として助けられています。人が生き延びるためには、“ちょっとした不健康”の愉しみは必要ではないでしょうか。




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