若い暴力団組員、組長の尊敬できる点は「LINEのスタンプ」

10月30日(水)16時0分 NEWSポストセブン

血が流れることもたびたび…

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 吉本芸人の闇営業問題、山口組分裂による抗争事件などにより、再び「反社会的勢力」の存在に注目が集まっている。新著『教養としてのヤクザ』(溝口敦氏との共著)で暴力団のさまざまな実態を明らかにしたフリーライターの鈴木智彦氏が、25年の取材経験から、彼らの変化について指摘する。


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 平成7年夏、ヤクザ専門誌の編集部に入社し、その後フリーになってからは、ひたすら暴力団への直接取材を行なった。現実という大きな山を登るため、裏道を選んだはずなのに、この道が社会のあらゆる場所につながっていて驚かされた。各種の犯罪や同和という社会問題はもちろん、ヤクザは政界、財界、芸能界とも直結していた。飲食、興行、土木建築、人材派遣はおろか、食肉や漁業といった一次産業にさえヤクザというドアからつながった。


 取材を始めてから25年……ヤクザはすいぶん変わった。インターネット全盛の今、組織によっては、連絡や通達がLINEで送られてくるし、抗争現場の凄惨な動画や、組事務所内の貴重な映像さえ、ネットに流出するようになった。ある若い衆に「親分のどこに惚れていますか?」と質問したところ「(LINEの)スタンプの使い方がうまいというか、泣けるというか、じーんときます」という答えが返ってきたこともある。また、暴力団排除条例はヤクザを根本から変えてしまった。


 銀行口座を持てず、生命保険に入れず、自動車の任意保険にも加入できないのだから、もはやまっとうな社会生活は送れない。就職もできず、起業もできず、あちこちで暴力団という属性が邪魔になる。金を貸した相手からの返済が滞り催促しただけでも、警察に駆け込まれれば暴力団の側が罰せられる。



 ばかりか暴力団であることを申告せずゴルフ場でプレーしたり、ホテルに泊まったり、クレジットカードを申請すれば詐欺罪で有罪になる。最近、暴力団幹部が検挙された事案はほとんどがこの類型で、データ上、警察の実績をアピールするためのまやかしに過ぎない。もはや、抗争事件が迷宮入りとなる例はめずらしくない。実行犯は今もなに食わぬ顔で寄り合いや義理事に参加し、市民社会のただ中で暮らしている。


 あまりに大きな変化で基本設定を書き直さねばならないため、小説や映画では暴排条例を「なかったこと」にして、昔と変わらぬ姿のまま、ヒールとしての暴力団像を量産している。もともとデフォルメが過ぎていたとはいえ、今のヤクザ像はほぼ完全なフィクションになった。BLという男同士の恋愛ドラマにおいて、ヤクザがメジャーな一ジャンルになったのは象徴的である。


※溝口敦/鈴木智彦・著『教養としてのヤクザ』(小学館)より一部抜粋

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