【ネタバレあり】「アガサ・オール・アロング」最終2話 アガサ&ビリーのバディよ、永遠に
2024年11月1日(金)17時30分 シネマカフェ
SNSにもすでに多くの声が上がっているように、何だかんだ言っても、このアガサとビリーのクィアな2人はMCUの中では異質かもしれなくても、愛すべきバディとして今後も語り継がれていくことになるはずだ。
これまでマーベルの配信ドラマシリーズといえば、後半になるとやや駆け足気味になり、終盤に諸々を詰め込んでしまう傾向があった。
「アガサ・オール・アロング」では第8話で、“魔女の道”はまさかのアガサ(キャスリーン・ハーン)死す、という思いがけない展開で終わりを迎え、最終話では1750年代に遡り、そもそも“魔女の道”とは何だったのか、アガサの息子ニコラス・スクラッチの短い人生と“魔女の道のバラッド”についてもじっくりと時間をとって描かれた。
前回で試練の扉を自ら閉じたリリアの死に打ちひしがれるビリー(ジョー・ロック)とジェン(サシーア・ザメイタ)、そして死<デス>であるリオ(オーブリー・プラザ)にビリーを引き渡す密約を交わしたアガサと、残った魔女団は3人。
予告編にも登場した近未来の収容所のような地下室をそれぞれ脱出し、最後の試練を終えたアガサにリオが死を与えようとするが、そこへ現れたのが赤いフードの付いたケープ姿で、すっかり“ヒーローらしくなった”ビリーだ。
アガサに自らのパワーを分け与えたビリーを死に受け渡す代わりに、アガサは死にキスをした。まさかアガサがそんな自己犠牲の選択をするなんて…。ビリーに息子ニコラスの面影を重ねていたのは嘘ではなかったわけだ。
そもそも、“魔女の道”なんて、初めからずっと(オール・アロング)実在などしていなかった。すべて、アガサに憧れを抱いたビリーが母ワンダと同じ現実改変能力を使って創り出したものだった。第2話のラストで“魔女の道”が本当に現れたとき、誰より驚愕していたのがアガサ自身だったのも頷ける。
“魔女の道のバラッド”も、魔女たちの力を奪いながら移動を続ける母との旅の道中で幼いニッキー(ニコラス)が口ずさんでいた童歌に、母子で少しずつ肉づけして出来上がっていったものだった。
アガサが禁断の書物と引き換えに息子を差し出したという噂や、リリアが散々嘆いてきた魔女の伝説がそうであるように、伝承とはこうして口コミで聞いた事柄にどんどん期待や皮肉などの尾ひれが付いていってしまうもの。
アガサはそれを自分に都合よく利用した。“魔女の道のバラッド”(時を越えるアガサ・バーション)とともに、何世紀にもわたって魔女団を集めては魔女たちの力を次々に吸収していくアガサの姿を目にするのは圧巻だった。
裏を返せば、アガサは今回ビリーによって初めて、魔女団と実際に手を携えて苦楽を共にする機会を得たということ。その冒険は、アガサがこれほど魅力的で(身勝手で)癒えぬ傷を抱えて(なお憎たらしく)孤独な魔女であることを改めて教えてくれた。
一方、ビリーもまた自身が創り出した世界でシャロンやアリス、リリアを殺してしまったことの贖罪を抱えて生きていくことになる。幽霊になったアガサはメンターとして、そんなビリーに付き添っていくらしい。2人はもう、はぐれ者じゃない。
このバディがトミーの魂を宿した少年を探す旅は、時々リオやジェンが2人の邪魔をしに現れるスピンオフまたは続編だけでも需要がありそうである。2026年に予定されているヴィジョンが主人公のシリーズには登場できるだろうか…?
改めて今作はダークファンタジーやゴシックホラー好きには堪らない世界観で、魔女団を演じた俳優たちはいずれも素晴らしく、それぞれが愛すべきキャラクターを構築してケミストリーも抜群だった。
そして“バラッド”には確かに、絆を生み出す不思議な力があった。今作を見届けた誰もが「♪どんどん進め 魔女の道…(Down, down, down The Road.Down the Witches' Road…)」と永遠に口ずさめるのだから。
「アガサ・オール・アロング」はディズニープラスにて独占配信中(全9話)。