貴ノ岩の訴訟取り下げに心理士も陥る「後知恵バイアス」

11月3日(土)7時0分 NEWSポストセブン

母国モンゴルでバッシング受けた貴ノ岩

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 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、元日馬富士への訴訟を取り下げ話題になっている貴ノ岩を分析。


 * * *

 一体、誰のためになったのか、何のためにやったのか?貴ノ岩関が元横綱日馬富士を相手に起していた民事訴訟を取り下げたというニュースを聞いて、そう思った。


 発端となったのは、昨年10月、秋巡業中に開かれたモンゴル出身力士らの宴会で、元横綱日馬富士が幕内・貴ノ岩に暴行を加えたあの事件。事件後、日馬富士は引退し、貴乃花部屋は消滅、貴乃花親方は退職した。そして、ケガを負った貴ノ岩は10月、元日馬富士に対して、治療費や慰謝料など約2400万円の損害賠償を求め訴訟を起していたのだ。


 個人的には、なぜわざわざ訴訟するんだろう?なぜ今頃?という印象だった。賠償問題の解決がまだ済んでいなかったことにも驚いたが、提示された賠償金額2400万円にも驚いた。代理人弁護士によると、ケガだけでなく、それによる精神的苦痛に対する慰謝料や、休場を余議なくされたことによる逸失利益を請求するということだったが、訴訟に踏み切るのがよいのか、これが妥当な金額なのかどうか判断が付きかねた。


 それより何より、提訴などして大丈夫なのか?貴ノ岩への風当たりが強くなるだけではないのだろうか?似たような感覚を持った人も多いのではないだろうか。


 結局、提訴からわずか3週間ほどで、貴ノ岩は訴えを取り下げた。発表したコメントには「母国のモンゴルでは私に対する想像を超える強烈なバッシングが始まり、私の家族も非常に辛い目に遭うことになりました」とあり、家族から裁判を止めるよう要請があったことを明かした。




 やっぱりなぁ…。こうなるんじゃないかと思ったよ。


 この一報をネットニュースで見た時の感想だ。実はこれ、誰にでもある「後知恵バイアス」という無意識の心の癖。後知恵バイアスとは、結果を知った後に、「ほら、やっぱりこうなった」と原因についてあれこれと後付けし、それがあたかも最初から予想できたと考えててしまう傾向をいう。


 元日馬富士は加害者だが、モンゴルでは英雄の1人。事件の責任を取って昨年11月に自ら横綱を退いた。それでもモンゴルでは、当初から、被害者の貴ノ岩より元日馬富士を擁護するような論調が目立っていたといわれる。加えて、9月30日には断髪式が行われたばかりだ。このタイミングで提訴とは、一旦は落ち着いていた元日馬富士への同情論を再燃させるきっかけを作ったといわざるを得ない。とすれば、家族へのバッシングが強まるであろうことは想像に難くない。代理人もある程度のバッシングは予想していたとコメントしていたが、まさかこれほどとは思わなかったのだろう。


 などと、ワイドショーの解説者よろしく、あれこれ分析してみるが、ここには、やはり後知恵バイアスが働いている。


 元貴乃花親方が相撲協会にも頑な態度を取り、自らの信念を貫いていた時も同じだ。結果、それまでの相撲協会での地位を失った時、見ていた側は、「どうしてこうなることが分かわからなかったのか」という後知恵バイアスが働いたと思う。


 実際、あそこまで頑な態度を見せてしまえば、後知恵バイアスでなくとも、そうなるのは当然だと分かるはずで…


 オッといけない。こう書いているうちに、また後知恵バイアスが働いていたようだ。


 元日馬富士は訴訟取り下げを受け、貴ノ岩に直接謝罪し、慰謝料も準備しているという報道もある。元師匠や代理人らが介入するより、当事者同士が話し合えば、こんなことにはならかなったのでは…


 いけない、後知恵バイアスの罠にはまってしまった。

NEWSポストセブン

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