古谷経衡氏「蔡英文氏に比べ小池百合子氏の矮小性は際立つ」

11月8日(水)7時0分 NEWSポストセブン

小池氏の希望の党は不発(写真:AFP=時事)

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 防衛大臣だった稲田朋美氏の不可解答弁、豊田真由子氏の「このハゲー!」発言が自民党一強体制を揺るがした。が、攻勢に出るはずの民進党は山尾志桜里氏の不倫報道で自滅。解散・総選挙へ。そこに颯爽と現れた小池百合子氏は新党結成。しかし、選挙戦が始まるや風はピタリと止む。結局大敗した。


 いのち短し、恋せよ乙女──とは、刹那の恋に生きる女性をモチーフにした戦前の歌謡曲だが、こと女性政治家の立場は、今も昔も「いのち短し」。その背景として、評論家の古谷経衡氏は「男性優位の因果ではなく、独立不羈を志向しない女側にこそ応分の問題があるように思える」と分析した。そして、一時は期待された女性議員たちの「オウンゴール」を指摘する。


 * * *

「日本初の女性総理」と嘱望された政治家が咲いては散り、現れては消えていった。稲田朋美、小池百合子、蓮舫、高市早苗、片山さつき、古くは田中眞紀子、土井たか子等々である。


 野田聖子は後述、土井はともかくとして、そのほとんどの「消滅」理由は男性優位社会のシステム的欠陥ではなく、自らのオウンゴールである。高市は総務大臣時代、民放を恐喝するかの如き「電波停止」発言で政治家としての資質が疑問視された。


 片山さつきは在特会(在日特権を許さない市民の会)のデモに参加する能天気な極右でとうてい国際標準ではない。田中眞紀子は角栄の娘というだけで重宝されるも外務大臣時代に問題行動を繰り返して閣外に追放され、最終的には自民党から脱党した。土井は信念の人だったが社会党イデオロギーを跳躍できず、大衆浸潤には遠かった。


 そして小池。都政1年で何の実績もないまま「希望の党」の代表として国政進出を図った。が、小泉時代の「無党派層を味方にすれば風が吹く」という古い選挙地図に固執して墓穴を掘った。小池は「テレビの接触時間が増えれば等比級数的に無党派層からの支持が増えていく」という小泉時代の再来を狙ったが、10年前と比べて有権者の「目と耳と舌」は肥え、BPOを気にしてマスメディアは平等な放送を心掛けるようになった。


 テレビ露出=無党派からの支持という図式は消えた。マスメディアに引っ張られる中産階級を「B層」と呼称する向きもあるが、最早そのようなラベリングは通用しない。「敵」を作ることにより劇場に燃料を投下するという小泉方式の踏襲も有権者の失望を増大させた。豊洲問題で病身の石原慎太郎元都知事を証人喚問したことで、保守層は一斉に小池から離反した。


 結果、小池はあれだけ大騒ぎした豊洲問題に何の結論も出さなかった。小池塾、というやたらと意識高い系が好きそうな私塾を開設したが、そこに集ったのはどう考えても政治家に向かない素人の烏合であった。


 小池は自立している女性を演出しているが、実際の政治手法は小泉を踏襲した古いスタイルの古典派で、都議会議員選挙で「都F」(都民ファーストの会)が大勝したのは小池の政治力ではなく創価学会の助力によるものである。それを自らの政治センスであると勘違いした小池のオウンゴールは、まさしく「改革」とは程遠い旧態依然とした卑屈な「女性性」のトレースである。


 選挙戦の終盤、都内で小池の駆け付けた応援演説を聞きに行った。台風が接近していて聴衆は雨傘を片手に持つ。「希望の党の主張に賛成するという皆さんは、傘を上下に振って下さい!」という小池の金切り声に反応したのは高齢の男性だけで、聴衆は拍手すらない無反応を貫いた。


 横文字を連発して中身のないマス露出だけを計算した小池の虚無を、「目と耳と舌」が肥えた有権者は冷徹に見抜いている。


 私が唯一、これと思うのは野田聖子だ。26歳で岐阜県議会議員当選(1987年)を経て1993年初当選(衆)。図らずも1992年参議院比例で日本新党から政界入りした小池と国政デビューは重なるが、その「厚み」は全く違う。野田は流産を経て長年不妊治療に取り組んでいた。困苦を経て2011年、長男を出産したのが実に野田50歳のとき。


 筆舌に尽くしがたい野田の妊娠・出産録『生まれた命にありがとう』(新潮社)には、読むも涙の壮絶な苦闘が綴られている。野田の政治家としての根幹は「生命」「人権」「多様性」。2005年郵政選挙では小泉に造反し、「抵抗勢力」に認定されたが挫けなかった。私は性を超えて、政治家・野田聖子を尊敬する。


 最後に台湾初の女性総統、蔡英文の自伝を引用する。「台湾は改革を必要としています。改革ができないのであれば、リーダーの怠慢です。もしリーダーが権力だけに固執してしまったなら、改革は中途半端なものになってしまうでしょう。このような時代に、この国家をさらに良くするためには、力を結集し、既存勢力と戦うことになっても覚悟を決め、絶対にあきらめてはいけないのです」(『蔡英文 新時代の台湾へ』白水社)。


 一見小池と似たような改革の決意が披歴されている。が、脈動する台湾学生運動と蔡を見るにつけ、小池の矮小性は際立つ。


●ふるや・つねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『左翼も右翼もウソばかり』『草食系のための対米自立論』『「意識高い系」の研究』など。


※SAPIO 2017年11・12月号

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