入試制度、五輪競技地 変更に至る経緯があまりに軽々しい

11月8日(金)16時0分 NEWSポストセブン

記者団の取材に応じる小池百合子東京都知事(写真/時事通信フォト)

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 体験取材を得意とする“オバ記者”ことライター野原広子(62才)が、世の中気になることに、思いのままに提言する。


 * * *

 つい先日、私は東京郊外のとある倉庫で、大手予備校のアルバイトをした。仕事は、テストの答案用紙の袋詰め。私は物理の答案用紙を担当した。


 袋詰めだから、答案用紙をじっくり見ることはないし、見慣れない単位や数字ばかりの用紙は、私にとって暗号でしかない。


 でも、それらが醸し出す雰囲気は確実にある。用紙を揃えて袋に入れる間、ホンのちょっと、チラリと目にするだけなのに、そこには、高校生たちのさまざまな感情が凝縮されている。


 ある用紙からは「漲る気迫」が(字や数字が堂々としている!)、ある用紙からは「今さらながらの後悔」が(文字が薄くて小さくて、いかにも自信がなさそう…)、ある用紙からは「諦め」が(高校名・氏名しか書かれていない!!)—という具合に1枚1枚に表情がある。繰り返しになるけど、アルバイトの私に、用紙の中身を見る権限はない。作業の合間にチラリと目に触れるだけだ。なのに、18才の彼らの感情がほとばしっている。そう、予備校のテストとはいえ、彼らにとっては一大事なのだ。


 ちょうど、そのタイミングで、大学入学共通テストの英語民間検定試験活用が延期されたニュースに接した。なんとも腹立たしかった。自分は受験生でも何でもないし、受験を控えた親戚がいるわけでもない。でも腹立った。


 その感情のもとには、民間試験活用を実施しようとした側の無責任で覚悟のない姿勢がある。


 このやり方には無理があり、平等性に欠けることは、教育現場を中心に各所から、当初からずっと指摘されてきた。にもかかわらず、萩生田光一文部科学大臣は「やる」と言い切っていた。


 なのに、自らの軽率な発言に批判が集まり、それが安倍政権そのものに飛び火しそうになるや、いともあっさりと寝返った。萩生田某の翻意の底に、受験生への憂慮なぞ感じられない。親や学校、塾等の現場を混乱させたことに対する申し訳なさも感じられない。安倍某(やその周辺)への気遣いしかないように思う。それがなんとも腹立たしい。


 高校生には高校生の生活がある。試験に向けて必死で準備してきた人も、不利を意識して希望校のランクを下げる決断をした人もあろう。彼らにとっては人生の岐路となる重要なタイミングだったかもしれない。なのに、政府や役人の勝手な都合で、当事者不在のうちにやり方が一方的に変えられてしまう。あまりにひどすぎやしないか!?


 倉庫のやや暗い電灯の下、高校生たちのさまざまな感情が詰まったたくさんの答案用紙に接したことを思い出すにつけ、振り回されるばかりの彼らをかわいそうに思う。


 東京五輪のマラソン会場の変更だってそう。


「マラソン会場は札幌。これは決定事項です」と、国際オリンピック委員会(IOC)が一方的に通知してきて、東京都はそれに従え、という。蚊帳の外に置かれた形となった小池百合子都知事は、そりゃあ怒るわよ。


 でも、その立場ゆえ、結局、「札幌」をのまされた。IOCの通知からわずか16日、しかも五輪開催まで残すところ10か月のこのタイミングでの変更は苦渋の選択だったろう。「合意なき決定」という言葉にどれだけ無念な思いが詰まっていたことか。


 IOCは「暑さゆえ途中棄権の選手が出ないよう配慮してのこと」だと言うが、東京のコンディションについて知らなかったわけはなかろう。ハードなコンディションであることを意識した上で、選手たちは練習を重ねてきた。会場関係者やボランティア、観客も含め、多くの人がそれぞれの準備を進めてきた。なのに、それがいとも簡単にひっくり返された。


 入試制度にしても、五輪の競技開催地にしても、変更に至る経緯があまりに軽々しすぎないか。


 一部の上の連中が勝手にあれこれを変更し始めて、下の人たちはそれに馴らされて鈍感になっていく…世の中がそうなったらイヤだな。


※女性セブン2019年11月21日号

NEWSポストセブン

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