佐藤二朗に聞いた、なぜクイズ番組の司会をやっているのか

11月9日(土)7時0分 NEWSポストセブン

スタジオ到着から7時間の収録を終えた佐藤二朗

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 取材の数日前、佐藤二朗(50才)は映画監督としてポーランドで開催された「第35回ワルシャワ映画祭」に出席していた。1-2コンペティション部門の正式出品作品として上映された『はるヲうるひと』は佐藤が原作・脚本・監督そして出演を務めたもの。舞台挨拶後はポーランド人の観客に囲まれ、称賛と質問の嵐だったという。


 そしてこの日、佐藤はサファリルックに身を包み、東京・お台場のスタジオで、100人の参加者の真ん中に立っていた。


 俳優である彼のもとに『超逆境クイズバトル!!99人の壁』MCの出演依頼が舞い込んだのは、2年前のこと。


「問答無用で断ろうと思いましたね、その時は。MCっていうのは選ばれし人だけができるもので、俳優のぼくにできるわけがない、と」(佐藤・以下同)


 しかし、企画書を読んで心が動いた。


「情熱がほとばしる、熱い企画書だったんですよ。あなたしかいないんだ!と完全にぼくを落としにかかってる。会うだけ会ってみようかという気になったのが運の尽き」


 やってきたのは、当時フジテレビ入社2年目だった千葉悠矢氏。


「彼が考えた企画が通ったんだっていうんですね。しかも、演出も彼がやるという。大晦日の午前中に関東ローカルで1回こっきりだというし、なにしろ千葉は熱いし、やってみようかと思ってしまった」


 100人の参加者から選ばれた1人のチャレンジャーが99人を相手に、自分の得意ジャンルでクイズに挑戦。5問連続で正解すれば賞金100万円を獲得できるというこの番組は、2017年12月31日午前10時からひっそりと放送され、しかし観た人の心に「また見たい」という思いを植え付けた。


「翌年の春、またやるっていうんですよ。しかもプライムタイムの全国放送だという。話が違うじゃないか!と思いつつも、一度かかわった作品には愛が芽生えますからね」


 そう、佐藤にとっては、映画も舞台もドラマも、そしてクイズ番組も等しく作品なのである。その後8月には2時間の特番が放送され、2018年10月からレギュラー放送決定。


「話が違うにもほどがある! と、2人の女性に相談しました。ひとりは妻で『こう言っちゃなんだけど、長く続く番組じゃないと思うから、与えられた期間一生懸命やれば?』と(笑い)」


 もうひとりは、かつて劇団「自転車キンクリート」で共に汗を流した友人で演出家の鈴木裕美氏。


「彼女からは、『自分が本当にやりたいこととはちょっとズレてても、やりたいことにリンクしている部分があって、なおかつそれをやることで本当にやりたいことに支障がないのなら、あなたの才能を欲する人に提供するのは、すごくご機嫌な人生だと思うよ』って言われて、なるほどなと」


◆ぼくはもう進化しません


 佐藤二朗の、才能。一度見たら忘れられない風貌と、どこまでが台本どおりでどこからがアドリブなのかわからない台詞まわし。そして、瞬発力抜群の演技力。


 佐藤はそのすべてを、バラエティーの場でも惜しみなく提供し、“壁”の真ん中に据えられたセンターステージを縦横無尽に駆けまわる。360度から注がれる参加者の視線をガッツリ受けとめ、予測不能の弾を放つ。台本なんてないのに必ずドラマが生まれる。


「よくスタッフとも話すんですよ、何のドラマも起きない回があってもいいよね、と。でも、何かしら起きる。なぜなら、参加者も、問題を作ってる作問チームもガチだから。そこから発生する熱量が、ドラマを生むんだと思いますね」


 100人の参加者のうち、誰がセンターステージに立つのかは、その時になってみないとわからない。使われないかもしれない問題を、作問チームは夜を徹して作り、参加者は自分が選んだジャンルのために必死になる。


「センターに立った人は3問目くらいから『もう100万円とかどうでもいい! このジャンルの次の問題が知りたい! このジャンルでもっとみんなと競いたい!』という気持ちになってくるんです」


 ──それほど愛せるものがあるのは、とても幸せなこと。


 そう、佐藤は言う。


 彼自身、小学4年生の学芸会で「俳優になる」と心に決め、“芝居”というジャンルに愛を注ぎ続けてきた。


 だからこそ、愛するジャンルのために必死で闘う参加者を、全身全霊で応援するのだ。


 初回放送からまもなく2年。レギュラー放送になってから1年が経った。次回の収録では、これまでにやったことがない企画が予定されているという。


「他の番組ではADやってる若いヤツが企画、演出して、MCなんてやったことがない俳優がMCやってる番組ですから、内容も安住しないでどんどん進化すればいいと思います。え? ぼく? ぼくはもう進化しませんよ。千葉からの唯一のダメ出しは『番組に慣れるな』ですから(笑い)」


 長時間に及ぶ収録と、その後の本誌インタビュー。疲れているはずなのに佐藤は嬉しそうに、「これから飲みに行くんですよ。ワルシャワで上映した監督作の出演者たちと」と足取りも軽く出ていった。愛する作品を共に作った、愛する仲間に会うために。


【プロフィール】

佐藤二朗/さとう・じろう。1969年5月7日生まれ。愛知県出身。1996年、演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ。全公演で作・出演を務める。2000年『ブラック・ジャックII』でドラマ出演し、以来数多くのドラマ、映画に出演。自身2作目となる脚本・監督映画『はるヲうるひと』が、2020年公開予定。


◆撮影/田中智久


※女性セブン2019年11月21日号

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