田代まさし5度目の逮捕で考察 『バカ殿』封印は正しいのか

11月10日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 田代まさし容疑者が覚せい剤で5度目(薬物では4度目)の逮捕と報じられた。かつてテレビっ子だったイラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、こよなく愛するテレビ番組のひとつが『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ)で、1986年から2001年まで側用人として出演していた田代まさしと志村の掛け合いは絶品だったという。近年は、どんな罪状や内容でも芸能人が逮捕されるなどの不祥事を起こすと、条件反射のように出演していた作品が片端から鑑賞できなくなる。その対応は適切だといえるのか、ヨシムラ氏が考えた。


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「あ〜あ、せっかくここまでがんばってきたのに……」6日に逮捕された田代まさしのニュースを観た時に漏れた感想である。5度目の逮捕、残念でならない。今回の容疑について本人は否定しているが、薬物に近いところにまだいたのかと、悪い連想ばかりが浮かぶ。


 近年、田代の調子が上向きつつあったので尚更歯がゆい。2度目の出所以降、田代は「今、目の前に覚せい剤を出されたらやっちゃう。前は『やめた!』と言ってたけど、あれは嘘です。覚せい剤はやめられないから怖いんです」と話していた。


 今年の田代は覚せい剤に対して、いい意味で諦めの境地に入っていた。7月にはEテレ『バリバラ〜障害者情報バラエティー〜』にも出演し、笑いを混ぜつつ覚せい剤について語る講義も行った。人気歌手、タレント、ニュースキャスターに成り上がったのに没落してしまった「芸能界イチのしくじり先生」といったキャラクターも確立され、露出も増えてきたのに……。


 田代の微々たる復活は、個人的に『志村けんのバカ殿様』再放送の兆しと受け取っていた。覚せい剤で逮捕され、2001年に番組降板が完全に決まったあと、『バカ殿様』の放送に田代は再放送も含めて一度も姿を見せていない。何度も逮捕されている人間ではある。しかし、自らの落日を例とし、覚せい剤の恐ろしさを啓蒙する田代に少しの救いがあってもいいと思っていた。その一つとして、過去の傑作が再評価されてもいいのではないか、と。


 確かに逮捕はされたが、彼の罪状は、過去の仕事が全て無かったことにされるほどのものなのだろうか。このような意見を嫌う人がいるのは理解できる。禁止薬物の使用と所持は確かに犯罪だが、直接的に誰かを傷つけたわけではない。家族や、仕事で関わりがあった人たちには迷惑をかけただろうが、築き上げたものを全否定されるほどの犯罪なのだろうか? 田代の金が闇社会に入ったことによってトラブルが生まれた可能性は否めないが、それは間接的な問題である。


 それこそ『バカ殿様』は「誰かを傷つける」といったことの真逆にある作品である。豪華なセットで、志村が扮するバカ殿に田代を含めた側用人集団があたふたさせられる内容。バカバカしくて愉快なコント、準主役の田代は『バカ殿』においては側用人という役柄として画面に存在していた。自らのパーソナリティーを露出したわけではない。喜劇人として全うし、覚せい剤といったダーティーなブツと関連している様子はもちろん観られない。


 それにも関わらず、『バカ殿』は現実として再放送されていない。理由としては、制作局の自主規制であろう。過去に罪を犯した人間がテレビに出演してはならない、といった法律はない。しかし、「映してはいけない」といった不文律があるようだ。


 田代は様々な媒体で覚せい剤に何度も手を伸ばしてしまう理由を聞かれてきた。その度に彼は「刑務所から出てきても誰も助けてくれない。孤独になると、さみしいからまたやってしまう……」と答えた。過去、自分が行ってきた仕事が抹消される。自主規制とはある種、究極の無視だといえる。過去の作品をいっさい消去してしまう今の自主規制のあり方はさみしさを助長させる。結果的に再犯への後押しになっていたのではないか。


 田代は「毎日、ギャグを考えるのがしんどくて……」覚せい剤に頼った経緯を持つ。ある意味、ギャグに殉死した芸人。覚せい剤に手を伸ばすほど芸能に奉仕した生真面目すぎる男である。局側にも多く貢献してきたはずだ。もちろん、イメージやスポンサーといった問題があることも理解できる。しかし、『バカ殿』はバカなだけの優れたコント作品だ。過去の傑作を再放送することくらい、どうにかならないものか、とも思ってしまう。


 自主規制によってテレビに出演できない田代、現在の活動はネットテレビに比重が置かれている。ゆえに、ネットテレビに関するコラムを記している僕ははからずも田代ウォッチャーになってしまった。


 田代は2019年6月、『田代まさし ブラック マーシー半生と反省を語る』と名付けたYouTubeチャンネルを開設した。動画の概要欄には「依存と戦っている現在の田代まさしの姿を見て頂き、皆様の応援を頂きたくこのチャンネルを開設致しました」と経緯が記載されている。


 動画内で田代は元覚せい剤中毒者であることを自虐ネタとしていた。しかし、こういった「しくじり」キャラは絶対に再犯しないという暗黙のことわりゆえに許容できた気もする。田代は覚せい剤の怖さを卓越した話術で啓蒙し続けたが、結局のところ覚せい剤の魅力に抗えなかった。5度目の逮捕によって、生き様で覚せい剤の怖さを伝えたのは皮肉でしかない。 過去の逮捕で田代はすでに2度、服役している。もし今回の逮捕から有罪が確定したら、3度目の服役に繋がるだろう。3度目の出所後、田代は再び覚せい剤について語るのだろうか。いや、語るしかないのだ。さみしさを何よりも嫌う田代にとって、社会との接点を見出すポイントはここしかない。再び、身をすり減らす自虐ネタに興じることとなる。


 田代の奇妙な人生と機知に富んだトークがコンテンツになることはわかる。しかし、田代は身を擦り減らすと覚せい剤に頼る癖がある。この悪循環がずっと繰り返されてきた。ゆえに田代の周りにいる人は私生活の露出によって救いを見出すことを止めるべきだ。心身ともに不健康な人間がパーソナリティーを売り出すことは危険である。派手な芸能活動に望郷の念を抱くことは理解できるが、そこは自主規制した方がいい。極力、実人生を切り売りすることが主にならないで済む手法を考えるべきだろう。


 田代は表に出ないとさみしくなり。しかし、表に出たら「人を喜ばせたい」といった強い責任感に悩むめんどくさい人である。ただ、どうにか覚せい剤以外の手段で立ち直ってほしいと思う。一流の才能を持っているだけに……。


 乱れるきっかけとなった「笑い」が今度は救いのキッカケになればいいのに。難しいことは重々承知しているが、僕は再びコントであたふたする田代が観たい。

NEWSポストセブン

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