「ヒプノシスマイク」オオサカ・ナゴヤの登場は「ド派手に」 作家が語るサウンド制作秘話

11月12日(火)16時24分 オリコン

「ヒプノシスマイク」シリーズ初となるフルアルバム『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 1st FULL ALBUM「Enter the Hypnosis Microphone」』

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 音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』。今年9月に同プロジェクトの代表曲「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」の新バージョン「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-+」が配信され、話題沸騰だ。楽曲を制作した2人組ユニット「invisible manners」は、HIP HOPを多くの人に聴かせるためにさまざまな工夫を施したと語る。

■声に敏感な声優ファンとHIP HOPとの相性は抜群

─—『ヒプノシスマイク』代表曲の新バージョン、オオサカとナゴヤの2つのディビジョンの6名のキャラクターが新たに加わった「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-+」の制作背景を教えていただけますか?

【平山大介(以下、平山)】新たに加わった6人のパートについては、あえてサウンドをド派手にしました。そもそもプロジェクト始動に合わせて発表した「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」、12人で歌っているバージョンですね。こちらはヒプマイそのものの初登場ソングだったこともあり、「キャラクターラッププロジェクト」としての世界観や、12人それぞれのパーソナリティを紹介することに重点を置いて制作しました。

【福山整(以下、福山)】プロジェクトも2年経ち、12人もすっかり人気キャラになった。そうした蓄積がない分、新キャラの6人は不利な面もあります。だからこそ、最初から12人と並ぶくらいバッチリ印象付けたいという意図はありました。さっき平山くんは“ド派手”と言ったけど、むしろ「記号性の強いサウンドでキャラクターのパーソナリティを色分けすることにこだわった」と言ったほうがいいんじゃない? 

【平山】そうだね。制作の取りかかりについては、プロデューサーや制作の方から各キャラクターの説明をいただくわけですが、とくにナゴヤ・ディビジョンの3人についてはわりと明確な音楽的背景があったんです。なので、そこはそれこそ記号的に、たとえば「天国獄(あまぐに・ひとや)」というキャラのパートにはスラップのウッドベースを入れるなど。意外と「波羅夷空却(はらい・くうこう)」のパンク要素は難儀しましたが。

【福山】実はパンクのBPMって、HIP HOPのトラックにそのまま乗せるには早すぎるんですよ。だからそこは解釈を広げて、ロンドンパンクのレゲエの要素を入れて。で、「四十物十四(あいもの・じゅうし)」はヴィジュアル系バンドのボーカリストなので、もはやラップをせずに歌ってもらいました(笑)

【平山】オオサカ・ディビジョンの3人については、音楽ジャンルというより、キャラクターからサウンドを作っていきました。リーダーの「白膠木簓(ぬるで・ささら)」はピン芸人なので、新喜劇を元ネタにした音を。「躑躅森盧笙(つつじもり・ろしょう)」は教師なので、学園っぽさをイメージして音楽室のピアノみたいな音を入れました。

【福山】ヒプマイ最年長の「天谷奴零(あまやど・れい)」は詐欺師ということもあり、サウンドでも怪しい雰囲気を出してみました。実は当初のオーダーでは、新ディビジョンの登場順はオオサカ→ナゴヤという予定だったんです。ただこの天谷奴零のパートにかなりのラスボス感が出てしまったので、彼で締めたほうが楽曲の流れ的に美しいんじゃないかとご相談して、ナゴヤ→オオサカの順番に変えてもらったんです。

【平山】そしたら結果的に、ナゴヤの四十物十四の登場順が14番目になって。本当にこれは偶然で、僕らもファンの方のツイートで気づいたことだったんですけど。

【福山】計算していたことにしようと(笑)。いや、でも僕らもかなりキャラクターのことを理解しているつもりですが、ファンの方の考察の深さには唸らされることが多いです。

─—そもそもヒプマイのプロジェクトには、どんな経緯で関わることになったのですか?

【平山】僕らは職業作家なのでコンペに参加することも多いのですが、ヒプマイについてはオファーでした。それ以前から、ももいろクローバーZさんをはじめ、アイドルのラップをフィーチャーした楽曲を作らせていただくことが多かったので、おそらくラップをキャッチーに書ける職業作家ということでお声がけいただいたのかなと思っています。

【福山】あとは、ラップをがっつり書ける職業作家が少ないから、ということもあると思う。

【平山】最近は出てきているけどね。音楽業界全体的にラップ要素の需要が増えていますし。

【福山】僕らがinvisible mannersとして活動を始めた6年くらい前もそれなりに需要はありましたけど、やっぱりHIP HOPアーティストとして活躍されている方がオファーされて、楽曲提供するケースが多かったと思います。

─—ヒプマイでも、ディビジョンごとの楽曲はHIP HOPの重鎮的アーティストが提供している楽曲が多いです。お2人の制作する楽曲との違いはどこにあると思いますか?

【福山】もちろんキャラに寄せてはいますが、トラックやラップはおそらくご自身のスタイルの延長上で作っているんじゃないかなと思います。やはりそこはご自身もアーティストですからね。また、HIP HOPのなかでも濃いことをやっている楽曲もけっこう多いんです。ただHIP HOPを聴き慣れていない人にいきなり濃いものを提示したら、うまく届かないことがあるんじゃないか? という意図もあって、そこへの導入を作る役割として、職業作家である僕らにコンテンツ全体を俯瞰するような楽曲制作が任されたんじゃないかと思っています。

【平山】だから僕らが担当している楽曲には、HIP HOPのルールとかテクニックを幅広く盛り込んでいるんです。アーティストたちが作る濃い楽曲に、うまくバトンパスできるように、ということを意識しました。

【福山】だけど最近、意外とそんな心配いらなかったんじゃないか? と思うんですよね。というのも、ヒプマイの主なユーザーである声優ファンの方って、声に対してすごく敏感で、細かな表現もセンシティブに聴き取ってくれるリテラシーが高いんだなと。そこがHIP HOPというジャンルと、実はすごく相性が良かったんじゃないかと思います。たとえばHIP HOPの技術として声を上ずらせるみたいな表現を入れると、「これがカッコいいんだよね」とか即座に反応してくれます。わりと高度なテクニックを入れてもちゃんと発見してくれるから、僕らとしても嬉しいし、作りがいがありますよ。

■HIP HOPの定番と最新を濃縮しフロウやサウンドでキャラを色分け

─—では、声優さんとHIP HOPの相性についてのお考えはいかがでしょうか。【平山】その点は、当初からヒプマイのプロデューサーも僕らも、「声優とラップミュージックの相性は絶対にいいはず」と確信していました。声優さんは声でキャラクターに命を吹き込むプロですが、メロディー主体の楽曲ですと音域的にキャラが薄れてしまう瞬間もままあると思うんです。一方で、ラップはしゃべり言葉に近いので、キャラクターをそのまま楽曲に反映できるのは大きなアドバンテージです。聴く側の没入感も増すと思いますし。

【福山】たしかにプロジェクトが始まった当初は、ラップ初心者の方もいたと思います。だけど、すでに発声とか滑舌、リズム感といったラップ表現に欠かせない技術の少なくない部分はクリアしている方たちですから。そうしたいろんな要素が噛み合って、成功したプロジェクトだったんじゃないかと思いますね。

─—ちなみにinvisible mannersは作詞・作曲・編曲すべてを担当していますが、お2人の間で役割分担はあるのですか?

【平山】いや、役割は流動的で曲によってまちまちですね。その都度、アイデアを出し合って作っていくかたちです。

─—最近は、ユニットで活動する職業作家も増えてきたようです。2人の結成はどのように?

【平山】もともと僕は自分でもオリジナルでCDを出していて、純国産ブラックミュージックみたいな音楽性をめざしていたんですけど、自分だけで作っているといつまでもリミッターが外れないというか。自分とは違う要素を入れたくて、福山くんを誘ったんです。

【福山】逆に僕はこの仕事を始めるまで邦楽を聴かず、延々と黒人音楽の研究をしていました。ソウルミュージックとHIP HOPを融合させたような楽曲も制作していましたが、どこまでいっても納得できないから、なかなか発表もできなくて。そんなときに平山くんが声をかけてくれたんです。暇だったら手伝ってよという感じで(笑)。

【平山】まあ、昔からの腐れ縁なのでね(笑)。でもさっきも言ったように、役割を分けてない分、アウトプットが無限にあって、意外な着地をすることもよくあるんです。クライアントからも、そんな予定調和ではないところが評価されることが多いので、そこが職業作家ユニットの強みなのかなと思っています。あとは2人とも音楽的ルーツがしっかりありつつ、最先端な音も好きだというところが、一緒にやっていてうまく回っているところですね。

【福山】そういう意味では、けっこう前の流行から最先端まで、HIP HOPのいろんな要素を盛り込めるヒプマイの全員曲は作っていて面白いです。僕らがいただく発注リクエストは、2000年代前半くらいの曲調に集中しています。最新というよりはリバイバル担当という側面もありますが、12〜18キャラ分のフロウやサウンドの色分けが必要なので、キャラによって最新の要素を混ぜたりして遊べる余地や自由さがあるんです。僕らの強みを活かした挑戦ができるので、ありがたいですね。
文/児玉澄子

Profile/invisible manners(インビジブルマナーズ)は、作編曲家、作詞家である平山大介(左)と福山整(右)による音楽作家ユニット。2010年に平山が主宰し、アーティストへの楽曲提供のほか、ゲーム音楽やBGM制作も手がける。『ヒプノシスマイク』では、声優全員が参加するアンセム的な楽曲を制作。このほか、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、Kinki Kidsらの楽曲も手がけた。

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