元山口組大物組長の「自伝映画」撮影、公開に向け高まる緊張

11月12日(月)16時0分 NEWSポストセブン

監督は井筒和幸氏(共同通信社)

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 実在のヤクザを描く実録映画はかつて多く作られたが、暴力団排除の風潮のなか近年は鳴りを潜めていた。それが突如として「超大物」を題材とした映画化計画が浮上。現実の抗争にまで影響を及ぼしかねない危険を孕んでいるという──。


 3つの山口組を名乗る団体が乱立する異常事態から1年半あまり、抗争収束に向かう気配は見えない。そんななか、3団体の関係者が一様に注目するのが、ある元大物組長の動向だ。


「山口組の元最高幹部、後藤忠政元組長(76)をモデルとした映画の撮影が進んでいる。後藤元組長は2008年に引退してからほとんど表舞台に出ることはなく、とくに山口組が分裂して以降は沈黙を貫いてきた。映画がどんな内容になるのか、さまざまな噂が広がっています」(山口組関係者)


 後藤氏率いる後藤組は、山一抗争(*)で敵対する一和会組長宅にダンプカーで突撃するなど武闘派組織として注目を集め、渡辺芳則・五代目体制では山口組の東京進出を主導、2002年には若頭補佐となり執行部入りを果たした。当時の後藤氏は、芸能界との交友などでも知られた存在だった。


【*1984年、竹中正久組長が4代目を襲名したことに反対した反竹中派が「一和会」を結成。竹中組長は一和会に殺害され、山口組は報復に動いた。1989年の一和会解散までに双方で25人の死者を出した】


 だが2008年、細川たかし小林旭ら芸能人が後藤氏主催のゴルフコンペに参加していたことが『週刊新潮』の報道で発覚、NHKが参加者の番組出演を見合わせる社会問題に発展した。報道直後の定例会を病欠した後藤氏は、六代目山口組から除籍処分を受けた。フリーライターの鈴木智彦氏が解説する。



「後藤元組長は、六代目体制でモノを言う人物でした。役職をかさに命令されても、納得できなければ反論し、行動する。その気概が周囲からも認められていたため除籍処分に抗議した13人の直系組長の連名談判状が出され、山口組を揺るがす騒動となりました。


 除籍に抗議して処分を受けた組長のなかには分裂後に神戸山口組に移った者もいる。後藤元組長は神戸の井上邦雄組長とも親しいことから、分裂後、引退していたにもかかわらず神戸側に合流すると噂されました。実際には後藤元組長は一切動かず、表にも出てこなかった。だからこそ、映画制作の話は暴力団関係者に“なぜ、このタイミングに”という驚きを与えているのです」


◆ロケ地の許可に難航


 どんな内容なのか。映画に協力する関係者が語る。


「撮影は8月から始まり、11月にはクランクアップ、年明け公開予定だそうです。監督は『パッチギ!』などを撮った井筒和幸氏。そして主演は、当世一番人気の音楽グループのメンバー。


 制作費は4億円で、後藤元組長も全面協力しているようです。後藤元組長には20万部のベストセラーになった自伝『憚りながら』があるが、それが原作ではない。六代目側に配慮し、除籍騒動には触れず、彼が成り上がるまでを描く内容になっている。登場人物には実在のモデルがいますが、『仁義なき戦い』のように仮名にしている。撮影は東映のスタジオを借りているほか、群馬、岐阜でもロケが行なわれています」


 ただし、映画公開までには障壁も多いという。



「分裂抗争中の山口組にかかわり得ることですから、警察当局は過敏に反応し、ロケ地の許可はなかなか下りなかったようです。映画が完成しても、上映する映画館の見通しもついていない」(同前)


 スタジオを提供している東映に、配給も手がけるのかと聞いてみると、「弊社の配給ではない」(広報部)と説明した。井筒監督の所属事務所に聞くと、「現時点では何もお答えできません」と答えるのみだった。


 映画公開に敏感なのは、後藤氏が所属していた六代目山口組だといわれる。


「すでに六代目側のなかでは、『除籍になった人間が勝手に極道映画を作って許されるのか』『除籍問題に触れないとしても現執行部への批判めいた描写があるかもしれない』といった批判や懸念がある。実際に旧後藤組の関係者が後藤氏に『公開は勘弁してもらえませんか』と相談したが、聞き入れてもらえなかったそうです。もちろん後藤氏本人はトラブルの火種になることは望んでいないと言っています」(後藤氏の知人)


 後藤氏はなぜ映画にこだわるのか。ジャーナリストの溝口敦氏はこう分析する。


「田岡一雄・三代目組長の役を高倉健が演じた『山口組三代目』など、昔から映画の題材になることが大物組長のステータスでした。まして後藤元組長は映画との縁が深い。後藤元組長はもともと『北陸の帝王』と呼ばれた川内弘組長の子分でしたが、川内は自身をモデルとした映画『北陸代理戦争』の公開直後に殺されています。


 また、ヤクザの民事介入暴力を描いた映画『ミンボーの女』の内容に怒った後藤組組員が伊丹十三監督を襲撃したこともあったし、引退直後には私費を投じて『BOX 袴田事件 命とは』という袴田事件に関する映画を作ってもいる。思い入れのある映画づくりを、除籍に追い込まれた自分の最後のやり残しだと考えているのではないか。後藤本人は、抗争に影響を与えるつもりはないはずです」



 だが、抗争真っ只中の状況を考えれば、映画公開の波紋がどうなるのかは誰もわからない。


「映画が来年公開なら、秋に出所予定の六代目山口組の高山清司若頭との因縁が思い浮かぶ。高山若頭は司組長の収監中に後藤除籍の処分を主導した。制作側が意図しなくても、暴力団界隈で2人の因縁が取り沙汰されるのは仕方ない」(同前)


 公開が近づくにつれ緊張は高まる。


※週刊ポスト2018年11月23日号

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