『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の錦織敦史監督が「群像劇」を作り続ける理由とは/インタビュー(後編)

11月15日(水)19時25分 アニメイトタイムズ

『シン・ゴジラ』や『エヴァンゲリヲン新劇場版』でおなじみのスタジオカラーの参加も発表されて話題となっている、2018年1月より放送のTRIGGER & A-1 Pictures共同制作の新作TVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(ダリフラ)。

アニメイトタイムズでは、前後編に渡り錦織敦史監督のインタビューをお届けしています。その後編となる今回は、『君の名は。』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の田中将賀さんがデザインを手掛けるキャラクター、そのボイスを担当する声優陣についてなど、作品のより深い内容に迫ります。【ニュース】『アイマス』『グレンラガン』の錦織敦史監督が挑む最新作!『ダーリン・イン・ザ・フランキス』で描く新たな世界/インタビュー(前編) https://twitter.com/animatetimes/status/928287506067439616?ref_src=twsrc%5Etfw (2017年11月8日)


錦織敦史×田中将賀が生み出すケミストリー
——(インタビュー記事の)前編で少し触れましたが、このプロジェクトの大きなトピックとして、キャラクターデザインに田中将賀さんの名前があったことでした。お互いキャラクターデザイナーとしても活躍されていますが。

錦織敦史監督(以下、錦織):お互い似たような立場のキャラデザというか絵描きだから、メインで一緒にお仕事したことはなかったんです。それに田中さんも売れっ子なので起用するのにも勇気がいったというか。

やっぱり参加してもらうからには、他作品にはない何かを得て帰ってほしいし、世間にも田中さんの新しい一面を見せたい。そのくらいの気持ちがないとダメだと思うので。——でも、普段から仲は良かったとお聞きしています。お互いの仕事は意識されていたのですか?

錦織:そうですね。以前からお互いの仕事は意識していて、そういう話もしていたんですけど、別仕事での話なので、思うまま言っていれば良かったんです。

作品が違えば、それぞれの価値観でいられるので、お互いの仕事についても当たり障りのないといいますか、そんなに深い話はしていなかったですね。でも、絵に対する姿勢にはシンパシーを感じていたので、一緒にやってみたいなって思っていました。

ただ、始まったばっかりはすごくお互い気を使っていましたね(笑)。絵描き同士のイニシアティブの取り合いというか。苦手なところに連れて行かれないようにポジションをうまく取り合うようなところもありました。

僕もアニメーター出身だし、画作りありきでモノを作っているから、どうやってここの部分を譲ってもらうかっていうところでは、オリジナル作品ならではの大変さはありましたね。お互いが想像の域で話さないといけないから。

——そういうイニシアティブの取り合いを、デザイン会議の中でしていたと思うのですが、がっつり田中さんと組んでみていかがですか?

錦織:この作品は本当に絵描き所帯なんです。そんな環境の中でやることは今まで田中さんもなかったと思うし、みんなでデザインを出し合うといったデザイン会議などの慣れなさはあったと思います。僕が監督としてしっかり指示を出さないといけなかったんですけど、アウトプットがうまくできなくて、そこはみんなが探り探り僕から引き出してくれていたのかなと思います。

田中さんも、打ち合わせを重ねる中で、僕が思うデザインに対する方向性だったりをつかんできたのか、デザインアイデアや、このときはこういう表情でって、打ち合わせ時にその場でパッとラフを描いてくれるくらい、今は寄り添ってやってくれています。——原作がないから、頭にあるものを説明しないといけない。オリジナル作品の難しさですね。

錦織:ドラマが動き出すと、目指すところがわかってくるんですよ。このキャラはこう動いたほうがいいとか、具体的な案が出てくるので、そういうときの田中さんはめちゃくちゃ心強いですね。やっぱり内容に対して、理解する力がすごく強くて、隣にいて助かるし、一緒にモノを作っている感じがすごくあります。

絵がうまいのはもちろんなんですが、絵作りに対して任せられるというか、信用できるので、今屈服させられてますね。自分の絵描きとしての素養を疑問に思ってしまうくらい、職人の絵描きってこうなんだなというのをまざまざと見せられています。ここまでデキる人っているんだなと、ちょっとショックでした(笑)。

——田中さんが入ることでの効果は、すごく出ていそうですね。

錦織:今までの田中さんのデザインの幅や画作りとは少し違う感じにはなったかなと思うので、そこは楽しみにしてほしいです。

——主要キャラクターも公開になっていますが、苦労したキャラクターはいましたか?

錦織:意外とヒロはすんなり行った気がします。元々、僕の方が田中さんに描いてもらいたいラインをしっかり持っていて、田中さんもそれに合わせてくれた感じだったので。そうなるとゼロツーかなぁ。ゼロツーは固めていくのが難しくて……。ヒロインなので要素を多くしたかったんです。人間のキャラの中に宇宙人がいるじゃないけど、アイコンとしてのデザインと芝居ができるくらいの程よい美少女感が欲しかった。

キャラクターとしてただ強度を強くしていくことはできるけど、ヒロと横並びになったときのギリギリの人間感・美少女感というのは、どこに落とし込んでいくか、本編の実作業が始まるまでわからなかったです。

田中さん本人も本編を描かないとわからないと言っていたんですけど、そのくらいドラマや芝居をきっかけに絵作りしていく人なんだなって思いました。——ふと思ったのですが、『うる星やつら』のラムちゃんは意識しました?

錦織:そこは触れていいのか、という感じなのですが(笑)、足がかりにはさせてもらいました。そのくらいのアイコンが欲しかったんです。僕の原体験として(高橋留美子さんの)『らんま1/2』が好きでオタクの道に進んでいったので原点回帰じゃないですが、そこが出発点だったからこその自分で納得できる安心材料というか(笑)。

先に角が生えているというアイディアもあったので、ダーリンという単語も僕の心の置き所として使おうというのがありました。

——前編でA-1 PicturesとTRIGGERのスタジオの話も出ましたが、画の手応えはいかがですか?

錦織:僕のことをわかってくれている人もいれば、僕にないお芝居感や今っぽい作画をしてくれる人もいるので新鮮ですね。初めて組む人や、若い子の仕事が見れるのは楽しみでもあります。あとは、定期的に田中さんの総作監修正修がまとめられるので、それをいつも心待ちにしています。こんな芝居つけるんだなー、とか単純に、うまいな〜って思ってテンションが上がるという(笑)。

でも本当にいろんな人がいるし、うまい若い子もいて、そこは絵描きから少し離れてるところもあり、『アイマス』をやっていたときより冷静に見ることができていると思います。

こんな大変な作品、一回やって逃げちゃわないかな?と思うんだけど、『天元突破グレンラガン』のときに思ったのは、しっかりと熱量があるものを作っていると、人は来てくれる。その指標があるので、単に優しいものを作るのではなく、大変でもいい作品を作る。しんどいのにこんなものしかできないの?って言われたらダメなので、そういう意味で現場はいつも戦いだなと思います。

ただ、僕も田中さんも劇場作品を経て、テレビ作品に対するクオリティの置き所がわからなくなってきていますね(笑)。だから今は船が沈まない程度に、荷を積んでいければと思います。

——放送も近づいてきていますからね。

錦織:プレッシャー、ハンパないですよ(笑)。それは『アイマス』のときも当然ありましたけど、お客さんの期待に対してはもちろんのこと、スタッフの期待にも応えたいので。ただ、上がってきているものに対しての驚きやうれしさがあるので、行けるかなと。今になってやっとそう思い始めたところです。それまではもう不安がぐるぐるしている感じだったので、ちょっと楽しみになってきました。


期待が膨らむ超豪華スタッフが作り上げる『ダリフラ』の世界——アフレコも始まっていると思うのですが、そこでの手応えもあるのではないですか?

錦織:10人のコドモたちが出てくるんですけど、そこでのチーム感みたいなものが現実でもできていくといいなと思っていたんです。ちょうど今、みんなの作品への理解やコミュニケーションができてきているなと伝わってきています。

掛け合いや、アフレコ以外でのオフのときの距離感を見ても、ちょっとずつできてきている。それが本編に似ていていいなと思ってます。キャストの年齢層やキャリアをあまりばらけないようにしたのは、その雰囲気が欲しかったというのもあるんです。中のドラマと、原体験でのキャストの雰囲気みたいなのが、少しだけでもリンクしていくと、その臨場感が画面からも出てくるんじゃないかなって。

——そういう意味だと、イチゴ役の市ノ瀬加那さんやミツル役の市川蒼さんは、まだ新人と呼べますね。

錦織:そうですね。キャリアとしてもフレッシュな感じですね。ここは僕の思う、お話の中で成長していってほしいなというキャストの置き方をしています。

——イチゴは、とても演技しがいのあるキャラクターに見えますが。

錦織:イチゴは僕の趣味が詰まったようなキャラクターなので(笑)、わかりやすくイチゴの絵から受ける印象の声に近くて、かつ人気があって芝居もうまい人は他にもたくさんいたんです。でも市ノ瀬さんの声を聞いたときに、ちょっと見てみたいと思ったんですよね。どう役が転がっていくのかというところの楽しみとして決めていったというか。

市川さんもフェミニンな感じで、ヒロと対比させてみたかったので、声と芝居の棲み分け含めてキャスティングしました。彼のお芝居の感覚もとても面白いですね。——実はプロデューサー鼎談をした段階では、フランクスは公開されていなかったので、メカニックデザインのコヤマシゲトさんの話をぼかしていたんです。監督からコヤマさんについて教えていただけますか?

錦織:コヤマさんの担当したデザインや、絵周りに対しては、僕の描いた絵はまったく採用されず(笑)。以降、僕はほとんどそこに対して絵を描いていないんです。コヤマさんは、そのくらい自分の役割に対してシビアな方なんです。僕に対して、どういうものを加えていけば作品になっていくのかというのを、僕と相談しながらやってくれるんです。

なのでデザインの方向性はジャッジしているけど、細かい要求はあまりしていません。そのくらい、デザインを受けてくれるだけではなく、作品に必要なもの、さらにロボの役割や見え方に対しても設計してくれています。——ただデザインだけをしているわけではないというか。

錦織:コヤマさんは、その企画が抱えている問題点、どこを見せないといけないのかというところまで踏み込んだ上でデザインしてくれるんです。じゃないとデザインできないっていうくらい考えてくれる。それはそれでこっちも大変ではあるんですけど、そのやり取り含めて勉強になるし、楽しかったです。

コックピット周りとか、パイロットスーツ周り、デザイン全体の下敷きを作ってくれているんですけど、アニメの現場って、ともするとデザインに対する意識が薄くなりがちというか。絵柄とデザインがキチンと分けて考えられてない部分もあって。

でもコヤマさんは自分の絵柄とは別の部分で、味合いを与えた上で、見栄えのするデザインを考えてくれるので毎回感心させられています。なかなかそこまで踏み込んだ上で要求に応えてくれる人っていないので。今石さんもそういうところがあって、チームになるとそこは試されている感がすごいんですけどね(笑)。丸裸にされている感じがします。——質問されたことに対して、きちんと答えを用意してないといけないんでしょうね。

錦織:そうですね。ボヤッとしているところはだいたい気になるんですよ、その二人は(笑)。やっぱりそこを指摘されたかぁって。でも、それが決まってないと描けないっていうより、そこからじゃあどうしようかって話になっていくんです。遠回りに見えても建設的で、そこで決めたルールが後々効いてきたり、核になっていくので、デザインって本当に大事だなと思わせてくれる人です。

——フランクスのデザインも、どんなアクションをしてくれるんだろうって楽しみになりますからね。アルジェンティアとかは、面白いデザインですし。

錦織:コヤマさんなりのバランスの取り方でしょうね。この企画に対するカウンターの打ち方というか。こちらとしても、それをどう料理するのか腕の見せどころです。

——ジェニスタはちょっとかわいいですよね?

錦織:スタッフ内でも人気が高いんですよ(笑)。ちょっと丸っこくて特殊ですよね。はやく造形が5体揃うところが見たいなって思ってます。半分キャラクターっぽいところがこのアニメの特徴なので。——それと今作は絵コンテも豪華と聞きました。

錦織:そもそもスタッフの中に何人監督がいるんだろうという感じですね。理由があって配置しているところもあるので、僕なりに作品の幅内でこの人にこれを振ってみたいというのをお願いしています。そこはバランスを取ってプロデュースしてみたいというのがあったので。でも、自分なりに新鮮な発見はありました。

作画においても、この人メカがこんなに描けるんだとか。『アイマス』でやってくれてたときはそこまでではなかったのに、こんなにうまくなってるの!とか。そういう今までやってきた流れがあるのがうれしいですね。だから少しでもスタッフが、この作品をやってみたいと思うような、お祭り感が出せたらいいなと思います。

——資料を見る限りだと、コンテでは『アイマス』で一緒にやっていた副監督の赤井俊文さんや高雄統子さんの名前もありましたし、TRIGGER作品でよく見るすごい方もいて……かなり楽しみになりました。ただ、そういう実績のある名前が目立つなかで、新たな才能も発見できたりするのならば、楽しみのひとつになりますね。

錦織:そうですね。もう臆することなくやってくれているので、新旧入り混じった作品になると思います。

——ちなみに群像劇をやり続けるのは、何か理由があるのですか?

錦織:群像劇が好きで、それに引っかかりがあるから『アイマス』に続いて群像劇をやろうと思っているんだと思うんです。引っかかる何かは、次に群像劇を作らなくなったら解消されたんだなと思ってほしいです(笑)。

どんな世界観で描こうとも、僕らが今生きているところで共感するのって、人との距離感や立ち位置の変化、そこに対する気持ちの変化だと思うんです。それを複合的に描くことが好きで、その中に自分が求めているテーマが含まれていると思うんですね。

それが何なのか。最終的にこういうことが好きなんだな、こうなりたいんだなって答えはある気がするので、そういう気分を作品にできたらと。——でも群像劇であり成長物語であった『アイマス』は、人って変わりもするし、変わらない部分もある、そういうリアルなところが描かれていてすごく好きでした。

錦織:気分として、あそこに行き着いたのは自分に対して正直だったと思えたし、それを受け入れてもらって次の仕事がつながっているので仕事にしていいことなんだろうなって。

だからそこの部分は楽しみにしてほしいですし、それが僕がモノを作っている原動力であり、やりたいことだと思うので、意識しつつも意識しないで楽しめたらいいなと思っています。

——楽しみにしています! 最後にファンへメッセージをお願いします。

錦織:この質問は毎回困るんですよね(笑)。えーと……スタッフ・キャスト含めて、この作品の行き着くところはある!と思って作っています。やりたいことをしっかりやることが大事だと思うので、そこだけは大切に、全力で作っていますので楽しみにしていただけると。ぜひオンエアまでしばらくお待ちいただけるとうれしいです。[取材・文/塚越淳一]

●TVアニメ「ダーリン・イン・ザ・フランキス」×「アニメイトタイムズ」コラボページ
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