『獣になれない私たち』挿入歌でも話題のビッケブランカ 独特な感性から生まれる絶妙なポップソング

11月15日(木)11時0分 オリコン

『獣になれない私たち』挿入歌でも話題のビッケブランカ(写真/大黒屋尚保)

写真を拡大

 シンガー・ソングライターのビッケブランカが、アルバム『wizard』を11月21日に発売する。現在放送中の新垣結衣松田龍平が出演する日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌「まっしろ」が話題となっている彼は、これまでもアニメや映画の主題歌を担当してきた。その話題の挿入歌をはじめ、独特の感性から生まれるポップソングの成り立ち、音楽ルーツについて話を聞いた。

◆ドラマの大事なシーンをもり立てる演出に曲を使ってもらえて嬉しかった

 日テレ系ドラマ『獣になれない私たち』挿入歌「まっしろ」を歌うビッケブランカは、これまでにも映画『詩季織々』の主題歌「WALK」やサンライズが手がける注目のTVアニメ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』EDテーマ「Buntline Special」を担当するなど、各方面から注目を集めている。
「挿入歌は、ドラマのプロデューサーから『バラードを書いてみない?』と、ご提案をいただいて作りました。第2話で新垣結衣さんのキスシーンで曲が流れたんですが、大事なシーンをもり立てる演出にこの曲を使っていただいて、嬉しかったです」

 こうしたタイアップ曲を作る時は、シングルのカップリングやアルバム収録曲などのノンタイアップ曲とは違った考え方で、あえて個性を消すようにすると言う。
「タイアップ曲は、あくまで作品が主体という考え方なので、そこに自分の意思はいらないと思っています。それにあえて自分の意志を消したとしても、言葉や音の細かい表現の部分には、僕個人の人間性や本質的な部分がにじみ出るものだと思っています。自分の考えや個性を入れると、楽曲とタイアップのバランスが悪くなるので、これくらいの混じり方で十分だと思っています」

 ドラマや映画のタイアップ曲では、登場人物の視点で心情を代弁するものが多いものだが、ビッケブランカの場合は、ドラマの主人公が、そのまま歌詞の主人公にもなっているわけではない。
「タイアップ曲を作るときには、あらかじめ台本や設定資料を読み込むのですが、そこから汲み取るのは全体の世界観です。それをもとに、曲の展開の仕方や、明るさと暗さのバランスなどを考えていきます。だから、シーンや台詞などの細かい部分は見ずに、全体像を俯瞰する感じです」

 では、どんなことを意識して作詞しているのか?
「昔は作詞が苦手で、いつもすごく考え抜く感じで書いていたのですが、最近はようやく何も意識しなくても筆が進むようになりました。デビューして2年の間にいろんなことが分かっていって、どんどん理詰めになっていくのかと思いきや、分かれば分かるほどノーコントロールで進めるようになった感じがあります」

 ちなみに『獣になれない私たち』のプロデューサーからは、ドラマ出演も打診されたそうで、「あまり興味はない」と言いつつ、ちょっとうれしそうな表情を見せた。
「俳優をやりたいみたいな気持ちはまったくないですが、面白そうだなとは思います。例えば、バーのシーンで、主題歌を担当しているあいみょんさんと一緒にカップル役で一瞬主演するとか……カメオ出演のような形なら面白いかもしれませんね。ドラマの現場の空気感は、体験したことがないので刺激が得られそうです」

◆『魔女の宅急便』でジジの役・佐久間レイも参加

 また、アニメ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』EDテーマ「Buntline Special」では、ルーズなガレージ・ロックを聴かせてアニメファンの心を掴んでいる。「まっしろ」とは対極にある楽曲で、この広範囲なストライクゾーンはどのようにして培われたのか。
「例えばパンクだけを掘り下げて聴いて、そのジャンルのことなら全部知っていることがかっこ良いとされる時代がありました。でも今は、知らなくても検索すれば、時代やジャンルを問わずいつでもどこでも簡単に楽曲を探して聴ける。僕の世代やその下の世代は、1つの音楽ジャンルに固執しない代わりに、何からでも影響を受けることができるんです」

 つまり彼にとってネット上のあらゆる音楽、すなわちビッグデータすべてが、バックボーンになっているということだろう。また、そこから生み出される音楽は、どれも実にキャッチーで聴く人を選ばない親しみやすさを持っている。
「両親が音楽好きだったのもあって、SMAPさん、マイケル・ジャクソン、ベイ・シティ・ローラーズ、財津和夫さん…各時代に流行した、あらゆるヒット曲を聴いて育ってきました。人に理解されて広まった曲しか知らないので、そんな僕のなかから出てくる音楽は、どんなに好き勝手に作ったものであっても、人に理解されない曲には絶対ならないと自信を持っています」

 最新アルバム『wizard』は、作詞作曲からピアノ演奏やプログラミングも自身で手がけた。また、佐野康夫(Dr)、沖山優司(B)、武田真治(Sax)など手練のミュージシャンも参加し、声優の佐久間レイも名を連ねている。
「佐久間さんは、映画『魔女の宅急便』でジジの役をされていました。ジジの目線で『男のくせに魔女を名乗っているやつがいる』という語りから始まったら面白いと思って、1曲目の「wizard」に参加していいただきました」

 アルバムのタイトル『wizard』には、「魔法使い」や「天才」「名人」といった意味がある。自分に対する皮肉とユーモアを込めたタイトルで、時代やジャンルを飛び越え、変幻自在に楽曲制作する彼の音楽を絶妙に言い表している言葉だ。
「いつもコンセプトを決めずに作って、最後にタイトルを決めます。今作も好きなように作ったら、曲調が目まぐるしく変わるし、1つのジャンルにくくれないものになっていて。それを「おもちゃ箱のよう」とか「多面性がある」といった使い古された表現ではなく、別の言葉に置き換えたのが『wizard』です」

 時代やジャンルを超えた音楽の森羅万象(ビッグデータ)を司り、ユーモアを交えながら自在に操るビッケブランカ。音楽という魔法で、聴く人の心を動かし影響を与える姿は、まさしく音楽の魔法使いだ。

(文/榑林史章 写真/大黒屋尚保)

オリコン

「獣になれない私たち」をもっと詳しく

「獣になれない私たち」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ