「これからあと何本映画を撮れるんだろう」俳優生活40年超、63歳の役所広司が挑戦し続ける理由

11月15日(金)8時40分 オリコン

映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』主演の役所広司(写真:田中達晃/Pash) (C)oricon ME inc.

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 公務員から俳優を志した役所広司仲代達矢が主宰する無名塾に所属し舞台に出演してから、俳優としてのキャリアは40年以上に及ぶ。日本アカデミー賞での最優秀賞をはじめ、国内外で獲得した映画賞は枚挙にいとまがない。名実ともに日本を代表する映画俳優に上り詰めている役所だが、デビュー当時から変わらぬ大きな夢があるという。

■最新作では大怪我も…、苦しい撮影も「どんなときでも楽しむ」

 役所の最新作は、『レッドクリフ』シリーズや」『M:I-2』などを手掛けた世界的なプロデューサーであるテレンス・チャンが製作総指揮を務める『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』(11月15日公開)だ。本作で役所は“ヒマラヤの鬼”と呼ばれる山岳救助隊チームの隊長を演じ、標高が高い極寒のなか、ワイヤーで1日中吊るされるなど、過酷な撮影を経験した。「台本を読んで、かなり過酷な撮影だなとは思っていました」と苦笑いを浮かべる役所。実は撮影中、大怪我をしたことも明かしていたが、そんな撮影を振り返る姿はどこか楽しそうだ。

 そこには役所が俳優という仕事に向かう上での流儀が垣間見える。「僕は好きで俳優業を始めたので…」と語り出すと、「もちろん撮影は楽しいものばかりではなく、苦しいときもありますが、どんなときでも楽しもうということだけは言い聞かせています。苦しいという気持ちで芝居に向き合うと、それがフィルムに焼き付いてしまうのかなと思うんです。楽しいと思う気持ちを持てば、たとえ苦しい芝居でも、良い結果が生まれるのかな、と」と柔和な口調で述べる。

■「こんなおっさんが頑張っているんだから」、日本映画への思い

 本作でも、役所は過酷な撮影を覚悟しながらも、アジア各国、カナダやニュージーランド、ネパールといった多国籍なクルーに胸を躍らせたという。「アジアの映画祭に行くたび『この人たちと力を合わせて映画を作りたい』という思いが沸いていました。いろいろな国の人たちと協力し合えば、自国で作っているよりも物語の世界も広がる。歴史的に美しいことばかりではないでしょうが、映画人だけでもお互いが理解しあうことによって、いい関係が作れると思う。映画にはそういう力があると思うんです」。

 こうした思いは、日本映画の未来にもつながるという信念があるという。日本映画界にとって、役所広司という俳優はカリスマ的な存在であり、多くの俳優たちがその背中を見て未来に思いを馳せている。そんな役所が、本作でも海外に飛び出て、自身初となるワイヤーアクションを経験するなどチャレンジ精神を失わない。

 「自分から後輩を育てるみたいなおこがましいことは考えていませんよ。撮影に入れば自分のことで精いっぱいになってしまうので…。でも、こんなおっさんが頑張っているんだから、俺も頑張らなければと思ってくれれば最高だと思いますし、僕も先輩方のそういう姿を見て頑張ろうと思ってやってきたことはありましたからね」。

■「フィルムに焼き付いたものが、自分が死んだあとも残る」

 「年をとってくると、これからあと何本映画を撮れるんだろう」と漠然と考えることがあるという。そう考えると、1本1本が自分にとって刺激的な作品であることが非常に大切になってくる。本作も「いまのお客さんはもちろんですが、何十年後かにこの映画を観てくれる人がいるといいなという思いはあります」と胸の内を語る。

 こうした考えは、役所が俳優を志したときから常に思っていたこと。

 「大げさに言ってしまうと、映画ってフィルムに焼き付いたものが、自分が死んだあとも残るわけなので、それは真剣ですよね。僕も先輩たちが作った映画を観て育った。いまでも黒澤明さんや小津安二郎さんの作品は観ることがあります。でも語り継がれ何度も観る映画はほんの一握りだと思う。50年、100年後に残る映画…そのなかに自分が1本でも参加できたら良い人生だなと思うんです。そういう思いは俳優を志したときからありましたね」。

■63歳にして初めての経験、「飽き性な人間」だからこそ保てる新鮮さ

 だからこそ、撮影現場に入るとアドレナリンが沸きあがってくる。本作でも、ワイヤーによる激しいアクションなどで、体中はあざだらけ、大きな怪我もしてしまったようだ。「命をかけるというと大げさですが、撮影に入り『本番!』という声がかかると『えい、やっちゃえ』という気持ちが沸き上がってきちゃう瞬間があるんです」と苦笑い。

 現在63歳。数えきれないほど現場を踏んできたが、本作では初めてのことも数多く経験した。「とにかく規模が大きい。サッカー場のようなオープンセットのなかで、巨大なグリーンバックでの撮影も初めて。ロケでもカナダやネパールなど、日本国内では経験できないような風景も見ることができました。そうしたなかにポツンと一人だけ置かれたとき、登山家でもないのに、救助隊の隊長の気分を味わわせてもらえました。いままで感じたことがないような経験でした」。

 「僕は飽き性な人間」と語った役所。だからこそ、作品ごとに新しくなるチームで仕事をする映画の現場では常に新鮮さと緊張感が保てるという。「苦しいことでも楽しまないと」と語った笑顔がとても印象的だった。

(文:磯部正和)

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