「ネットは社会を分断しない」研究発表の経済学者と激論「それでも感情や信念は煽られる」

11月21日(木)20時11分 AbemaTIMES

 様々な意見が無数に飛び交うインターネットの世界。いま話題の「桜を見る会」ひとつとっても、国会での論戦以上にネットでは激しい言い合いが行われている。

 「使った金返せ!! 国民のものだろう!! 早く辞めろ!!」と総理に辞任を求めるのみならず、「反省で済む問題じゃねぇんだよ。法律違反なんだよ!!!!!!!」とまで言い切るコメント。一方で、問題を追及する野党側へも「そんな暇があるなら、国会での政策論争を仕掛けたらどうなのか」といった批判があふれている。

 SNSではこうした意見の殴り合いが日常茶飯事だ。ネット上での対立について街中で聞いてみると、「よく見る。政治家の話がやっぱり多い。あとは女性のフェミニスト関係とか」「Twitterでフォロワーの多い人が言ったら、そこに仲間がいっぱいついているので、その人が言ったことが正しいみたいに偏りがち」「主張するのはいいが、ほかの意見を否定してきちゃうと、結論が出ないままいってしまうというのが非常に多い」との声が聞かれる。

 ネットでは自分と同じような意見にだけ接するため、考え方が偏り対立しやすい傾向があると言われてきた。幅広い話題を扱う新聞などとは違い、ネットはこうした「選択的接触」をしやすいとみられているからだ。

 選択的接触ばかりになると意見は極端化し、ネットは社会を分断すると考えられてきた。しかし、そんな常識を覆す調査結果が発表された。

 慶応義塾大学経済学部の田中辰雄教授が、「憲法」や「原発」など保守とリベラルで意見が分かれやすい題材で、10万人という大規模なアンケート調査を行った。すると、分断の度合いは、ネットをより活用している若者よりもむしろ中高年の方が強いという結果になった。つまり、ネットの利用が対立を生みやすくなるということではないことがうかがえる。

 その上で、田中教授はネットが社会を分断しない理由として、「ネットではコストをかけず簡単に反対意見に接することができるため、選択的接触によるエコーチェンバー(反響室)現象が起きにくい」「ネットの議論が分断されているように見えるのは、極端な意見ばかりが目につくネットの特性のため」「大半の人は自分と反対の意見に接し、むしろ穏健化している。ネットを使う若い人ほどこの傾向は顕著であり、時間が経つにつれてこの傾向は次第に広がっていくのではないか」としている。

 これに対し、ネットを利用するほど分極化するとの見方を示しているのが、大阪大学の辻大介准教授。辻准教授の調査結果によると、ネットをよく利用すると排外主義的な意識が強くなる一方、アンチ排外主義的な意識も強くなる傾向にあるという。例えば、「移住外国人にも日本人と同じ権利を付与すべきか」といった排外意識が大きく関わってくる質問に対しては、ネットをよく利用している人ほど賛否が両極に分かれる傾向があるということだ。また、ネットが分極を促すのは、「右派か左派か」「保守かリベラルか」という思想やイデオロギーよりも「敵/味方感情」ではないかとしている。

 辻准教授の見立てにノンフィクションライターの石戸諭氏は「最大のポイントは、インターネットの分断はどこに起きるのか、具体的なイシューではなく感情に左右されるのではないかということ。海外の研究でも、その人が元々持っている信念や価値観がポイントだと言われていて、例えば陰謀論を信じる人には『政府は信用できない』『政府は何かを隠すもの』という信念がある。逆に『安倍さんでいいじゃないか』というのも価値観で、自分の信念や価値観、感情に合うものがネットによって強化され、分極につながっていく」との見方を示す。

 石戸氏の主張に対し、田中教授は「私の研究で、一定程度過激な意見を持っている人たちがTwitterを始めると、さらに過激化するという結果は出ている。ただ、予め強い信念を持っている人は2割で、全体としては穏健化する方が多い」と反論。感情が絡む問題で分断化が進む可能性には理解を示しつつ、「ネットの激しい言い合いに対して、不思議だと思っている膨大な中間層の人がいる。彼らは分極化しているわけではなく、両側を見てどちらにも与しない」と述べた。

 また、石戸氏は別の問題として「激化していく議論の中で、中間層の社会的・政治的への関心が離れていく。ネットは両極側にいる人たちの発散の場となってしまって、かつて理想とされていた、マスコミに吸収できない様々な声をすくい上げるような場にはなっていない」と指摘する。

 これに田中教授は賛同し、「若い人に聞くと『ネットで刺激的な議論なんて無理だ』と返ってくる。極端な意見がケンカしている場に入る気にはならないわけで、穏健化した中間層の人たちは存在するが、彼らが発言する場がネットにはない。それを作ることができるかどうかが一番のカギだと思う」と主張した。
AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
 

映像:田中教授と石戸氏が激論

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