いまや珍しくない「特殊詐欺家族」 身内が巻き込まれる事情

11月21日(水)16時0分 NEWSポストセブン

家族や親族が力を合わせるのは良いことなのだが...

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 2018年カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した『万引き家族』(是枝裕和監督)での、犯罪によってつながる家族のあり方に衝撃を受けつつも、これはフィクションの世界の話で、現実ではないと考えていた人が多いはずだ。ところが近年は、特殊詐欺の分野で、家族ぐるみの犯行が露見して逮捕されるケースが目立つ。ライターの森鷹久氏が、近年になって目立つ「特殊詐欺家族」の様子をレポートする。


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「万引き家族」ならぬ「特殊詐欺家族」がいた──。


「父親の宮腰和夫と母親・春美、その娘の計三人が特殊詐欺に関わっていたとみられます。長野県内に住む和夫の父は、和夫のギャンブルで一家の家計がひっ迫していた、と話しています。和夫はATMなどを使って特殊詐欺グループの口座から金を引き出す"出し子"を、母と娘は父が引き出した現金をコインロッカーなどに出し入れしたりする"運び屋"をやっていたそうです」


 驚きを隠せない様子でこう話すのは、全国紙の警視庁担当記者。ちなみに、この家族には他にも子供がいたが、犯行には加わっていないと見られている。とはいえ驚くべき「家族ぐるみ」での特殊詐欺事件だ。こんな家族は特別なのだと思いたいところだが、実は他にも起きていた。


 上記の家族が逮捕される少し前、息子が2017年10月に特殊詐欺によってだまし取った400万円を受け取ったとして、宮崎県の女が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)の疑いで逮捕されていたのである。前出の記者が続ける。


「息子が逮捕され、カネの流れを調べる突き上げ捜査で発覚したようです。母親は“どんなカネか知らない”と言っていたようですが、確かに見極めは難しい。仮に気が付いていたとしても、自分を守るためだけでなく、かわいい息子のためにシラ切るでしょう」(全国紙記者)


 突き上げ捜査とは、組織邸に行われる犯罪について、逮捕した末端メンバーを追求することで全貌をつかむ捜査方法のこと。組織全体を摘発するための方法としてよくあるやり方だが、取り調べが苛烈になりやすいことでも知られている。その突き上げ捜査の一環として取り調べられたにもかかわらず、母親は「知らない」という証言を崩さなかったのだ。


 特殊詐欺に子供が手を染めていると気づきつつも、一言も漏らさない親の気持ちに、近隣住民も同情的になりやすい。たとえば2015年、東京都内在住の男・Xが特殊詐欺事件で逮捕された事件でも、九州地方にあるXの実家と家族ぐるみの付き合いがあったという男性・Aさんは、当時の状況を次のように振り返る。


「Xは不良だったけど、東京で成功したんだと母親が周囲に自慢しとったですね。一家は母親と祖母、そしてXの三人暮らし。父親が経営していた会社を倒産させてしまい、数千万円の借金を残して自殺したのが、Xが中学生の時やったです。Xはそんな家族を助けるために、詐欺をしていたんでしょう。月に三〜四回は帰省して、祖母の介護までしていたし、小さい自宅も母親のために建ててあげた。


 格好が派手だったから“変なことしよるんやろ”なんて噂してましたけど、私らにも“昔はやんちゃで迷惑かけてスンマセン”と土産もって来たり…憎めん奴だったとです。お母さんも途中からはさすがに気が付いていたらしいけど、祖母の体調も悪かったし、息子に頼るしかなかったとでしょう」(Aさん)


 事件後、警察の関係者がXの実家、そして周辺宅にも聞き込みに訪れたが、Xについて誰もしゃべることはなかったという。


「隠ぺいっていわれりゃそうかもしれませんが、あの一家のことを知っとれば、あまり何も言えんですよ。お母さんも気の毒でね…」(Aさん)


 このように、家族や周辺が薄々気が付いている例もあれば、知らないうちに家族や親族、そして恋人などが巻き込まれるパターンもある。大阪市内に住む女性・Bさん(50代)は、甥っ子に頼まれて預かっていた荷物を、言われるがまま近隣県の駅にあるロッカーに預けた。後にそれが特殊詐欺の「被害金」であることが発覚。捜査では彼女が「善意の第三者」であることが認められ、罪に問われることはなかったが、実は「甥っ子」を守るために、ウソではないが様々な「甥っ子に有利な証言」を行っていた。Bさんの夫が証言する。


「甥っ子が“仕事の資料”だと言って置いていった荷物を、妻がその後言われるがまま、駅のロッカーに入れました。最初は“変なことやらすな”と言っていましたが、お礼にメシ食わせたりしてくれてね。本人がきちんと独り立ちしているなら多少は…ということで何も言わなくなった。


 それからすぐ、警察から電話がかかってきて、甥っ子がオレオレ詐欺で逮捕されたと聞きました。妻は、そんなはずはないと信じたいがあまり混乱し、本当は覚えていたはずのロッカーの場所や日付などを忘れてしまい、証言ができませんでした。中身が現金かもしれない、と思ったこともありましたが、甥っ子を疑うようで聞けなかった。隠したのか、といわれればそうかもしれない…。でもパニックでどう話せばよいか、何が起こっていたのか思い出せず、本当にしゃべることができなかった」(Bさん夫)


 かつて特殊詐欺に関わった男性・Cさんは、詐欺師たちが家族や親族に仕事を分担させることについて「最近はよくあること」と説明する。


「特殊詐欺事件は、一人が逮捕されると芋づる式に関係者が逮捕されます。以前は犯罪のプロたちが緻密に絡み合っており、仲間を売ることもなかったために、突き上げ(捜査)されても、関係者のガラ(体)は無事でした。最近は、詐欺に関わるのが素人だったり若者だったりで、身近かつ、自身の事を信用してくれる親や兄弟など身内を使うことも多いのです。身近な人間だから、本人が犯罪に関わっていたと知っても守ってくれる可能性がある、なんて甘えた気持ちもある。


 さらに言えば、近頃は出し子や運び屋をSNSなどで募集する例が非常に増えている。詐欺家族の父親も、金に困ってそういったコミュニティを使って、犯罪集団とつながったのでしょう。息子が出し子、運び屋等になって急に金払いが良くなったが、母親としては気が付かないふりをしているだけでなく、詐欺息子が稼いだカネに、家族が群がるなんてこともあります」(Cさん)


 これも日本人の貧困化が進んだ結果、などと言ってしまえば簡単なのかもしれない。しかし、犯罪で得たカネで潤う一家があれば、カネを取られた結果すべてを失い、命を自ら断つ人だっている。家族ぐるみで犯罪に手を染めたのに、搾取されるばかりで貧困から抜け出せないケースも珍しくない。社会を構成する人間の一人として「終わっている 」ことにならないためにも、家族が生活するための手段としてまず犯罪に手を染めるというやり方は、広まってはならない。

NEWSポストセブン

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